2022/11/12 川瀬賢太郎×東響 ベルリオーズの「幻想交響曲」2022年11月12日 21:28



東京交響楽団 名曲全集 第181回

日時:2022年11月12日(土) 14:00 開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:川瀬 賢太郎
共演:ピアノ/三浦 謙司
演目:ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」op.9
   ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
   ベルリオーズ/幻想交響曲 op.14


 川瀬賢太郎との最初の出会いは、母校を振った「幻想交響曲」だった。毎年通っている年末の音大フェスティバルでのこと。いたく感心して、神奈川フィルの定期会員にもなった。
 その後、神奈川フィルばかりでなくシティフィル、OEK、新日フィルなどを相手にした彼の指揮を何度か聴いた。期待を裏切られることは稀だった。
 「幻想交響曲」については、遠くはフルネの日フィル、都響との名演から、近くはエッティンガー、スダーンのともに東響との公演など、忘れられないコンサートが幾つかある。
 その川瀬と東響の「幻想交響曲」だという。

 前回の東響の演奏会、ノットの川崎定期のときは、客席が3~4割程度と寂しかった。今日はせいぜい半分も埋まればいい方だと思っていたが、1階席や2階席の正面、P席はほぼ満席、P席隣の左右ブロックだけ空きが目立っていて全体では7、8割ほどの入り。まずまずの集客。プログラムの牽引力と、同日の他の演奏会との力関係だろう。

 前半の1曲目「ローマの謝肉祭」は、シュテンツ×新日フィルで、2曲目のラヴェルの「ピアノ協奏曲」は、リーズ・ドゥ・ラ・サールのソロ、ブランギエ×東響の伴奏で、今年聴いている。
 「ローマの謝肉祭」は、冒頭の元気のいい導入から、テンポを落として優しく「ベンヴェヌート・チェッリーニ」の主題が引用される。ここで最上さんの憂いを帯びた美しいコールアングレ(イングリッシュホルン)が登場。そのあとの熱狂の舞曲から終幕までは、打楽器をうまく活かした熱い演奏。
 ラヴェルの両手の「ピアノ協奏曲」は、ソロも伴奏もジャズ風のスウィング感があふれ小気味よい。トランペットの澤田さんがこの味付けに大いに加担した。最上さんのコールアングレもピアノと絡み合って楽しい。
 小粋といえばラ・サール+ブランギエに軍配を挙げるべきだろうが、三浦+川瀬はメリハリの効いた気持ちよい演奏だった。
 三浦さんのアンコールはドビュッシーの「月の光」。

 後半の「幻想交響曲」、この爆演は好き嫌いが分かれるかも知れない。エッティンガーほど変態的ではないが十分にグロテスク。スダーンほど精緻ではないが描写的、場面場面が映画を見ているように目に浮かぶ。
 母校を振ったときよりもデフォルメがきつく、音楽の振り幅が大きい。当然プロなのだから演奏技術も表現能力も高度なわけで、川瀬の要求水準はより高く、意図がより実現されたといえるのだろう。川瀬の指揮ぶりも過去にないほどの暴れぶり。
 第2楽章の絶妙の間合いのワルツから、第3楽章以降のまさに奇怪な音楽に引きずり込まれた。実演はこのくらい燃えたほうがいい。本当に面白く聴かせてくれた。

 弦は14型、Vn.1とVn.2が隣り合わせで、低弦楽器が上手に並ぶ一般的なストコフスキー・シフト。コンマスは小林壱成。ハープはエッティンガーのときと同様、指揮台の左右に2台。ハープニストは第2楽章のあと役目が終わって舞台袖に下がった。第3楽章の舞台裏のオーボエはなんと古部賢一、対するコールアングレはもちろん最上さん。
 プログラムの3曲はいずれもコールアングレが準主役級、さしずめ今日は最上峰行dayともいうべきか。

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