N響の来期プログラム2024年01月14日 10:43



 おととい、NHK交響楽団の来シーズン(2024/9~2025/6)定期公演の曲目が発表された。NHKホールにおけるA、Cプログラムとサントリーホールで開催されるBプログラムである。

https://www.nhkso.or.jp/news/24-25_programs.pdf

 首席指揮者のルイージはリスト、ブルックナー、マーラーなどの大曲を披露する。名誉指揮者のパーヴォ・ヤルヴィと常連のソヒエフは、「イタリアのハロルド」や「レニングラード」などを振る。
 長老のブロムシュテットとフェドセーエフの指揮も予定されている。二人とも健康面の不安があるから昨年のような降板の恐れがないとはいえない。デュトアやアシュケナージのほうが元気そうだけど、N響としてはもう招聘するつもりはないのかも。
 定期初登場の指揮者も数多い。なかでもエストラーダやポペルカは一度聴いてみたいが、演奏会通いを減らそうとしているなかで、どうなることやら。

2023/6/17 ノセダ×N響 ショスタコーヴィチ「交響曲第8番」2023年06月17日 17:04



NHK交響楽団 第1987回定期公演 Cプログラム

日時:2023年6月17日(土) 14:00開演
場所:NHKホール
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
演目:ショスタコーヴィチ/交響曲第8番 ハ短調 作品65

 
 「交響曲第8番」は戦争三部作のなかで最も暗鬱ながら、戦争の恐怖、悲惨とともに犠牲者への哀悼を捧げ、描写的でありつつ純音楽としても結晶化した稀有の作品である。

 ノセダはイタリア出身、ナショナル交響楽団とチューリッヒ歌劇場の音楽監督。経歴をみると、マリインスキー劇場の首席客演指揮者を務め、ゲルギエフからも学んでいるからショスタコーヴィチは得意の演目なのだろう。

 N響とも長年の関係を築いている。コンマスはゲストの川崎洋介、熱いリードで気合も十分。各名手のソロも聴きごたえがあったが、感銘はいまひとつ。心を動かされることなく終わった。

 指揮者が所為なのかオケがよろしくないのか、それとも聴き手の問題なのか。
 評判の指揮者と一流のオケで作曲家の最高傑作を聴く。三拍子揃ってはいても、こういうこともある。

 今年のN響の演奏会、多分、このプログラムが最初で最後になりそう。

N響の来期プログラム2023年01月14日 16:34



 NHK交響楽団のシーズン開始は9月からで、来年8月まで(ただし3,7,8月は休み)のプログラムが発表された。
 NHKホールのAとCプロ、サントリーホールのBプロ、それぞれ9演目である。

 https://www.nhkso.or.jp/news/23-24_programs.pdf

 首席指揮者として2シーズン目を迎えるルイージは9月、12月、5月に登場。9月には「ニーベルングの指環」を、12月には第2000回定期公演として「一千人の交響曲」を、5月には「ローマ三部作」などを振る。
 95歳の桂冠名誉指揮者ブロムシュテットは10月に来日し、ブルックナーの「交響曲第5番」、アンスネスとの「皇帝」、シベリウスの「交響曲第2番」など、3プログラム6公演を指揮する。
 11月にはロシアの長老フェドセーエフが久しぶりに客演する。フェドセーエフもすでに90歳だ。演目は「眠りの森の美女」の組曲をはじめ小品を幾つか。同じロシア出身のソヒエフは、来年の1月に「エロイカ」や、得意のフランス物、ロシア物を聴かせる。
 ほかに、海外指揮者としては、エッシェンバッハ、ヤノフスキ、サラステなどを招聘。邦人指揮者では、井上道義の2月公演「バビ・ヤール」が一番の注目だろう。井上がお気に入りのエフゲニー・スタヴィンスキーが共演し、スウェーデンのオルフェイ・ドレンガル男声合唱団が参加する。

 毎年、N響の指揮者陣、プログラムは魅力的だが、何をおいても聴きに行こう、という気分になかなかなれない。来シーズンも1度か2度くらいになりそうだ。

2022/11/13 井上道義×N響 伊福部とショスタコーヴィチ2022年11月13日 21:54



NHK交響楽団 第1968回 定期公演Aプログラム

日時:2022年11月13日(日) 14:00 開演
会場:NHKホール
指揮:井上 道義
演目:伊福部 昭/シンフォニア・タプカーラ
   ショスタコーヴィチ/交響曲第10番 ホ短調 作品93


 改修後のNHKホールへ出かけた。渋谷駅からだらだら坂を約20分、上りの坂道がこたえる年齢となった。足が遠のくのは無理ない。
 伊福部とショスタコーヴィチの組み合わせは相性がいいと思うが、なかなか有りそうで無いプログラム。そのうえ、両作家への思い入れが強い井上が振るとなれば、興味を掻き立てられる。
 ショスタコの「交響曲第10番」は恐怖のラザレフ体験以来、躊躇する気持ちがある。でも、洒脱な井上がどう料理するか、怖いもの見たさである。

 久しぶりのNHKホールにおけるN響である。ホールは、どこが新しくなったのか、とんと分からない。客はよく入っていた。土日同一プログラムの2日目だというのに3000席の8、9割は埋まっていた。定期会員らしき老人たちは相変わらず健在だけど、思いがけず若い男女を多く見かけた。井上人気なのかプログラムのせいなのか、頼もしいかぎりだ。
 
 「シンフォニア・タプカーラ」。
 こんなに危なげのない「タブカーラ」は初めて。この曲、演奏するには危険な箇所がそこら中にあって、アマオケなどではハラハラドキドキする場面が頻発する。プロでも必死の形相になるときがある。しかし、N響は余裕綽々で調子抜け。当たり前とはいえ一級のオケゆえである。その分、スリルを味合うには物足りない。
 井上はいつものように踊っていたが、踊りでオケをリードするというよりは、湧き出る音楽にあわせてダンスをしているよう。おまけに演奏の終了と同時に、オケ全員を起立させた。ひと汗かいたものの余力十分といったポーズにみえた。
 ところで、年度末の来年3月には、井上が音楽大学フェスティバル・オーケストラを振って、同じ「シンフォニア・タプカーラ」を公演する。スリルはそこで味合うことにしよう。

 休憩の間に、井上は正装に着替えて、ショスタコーヴィチの「交響曲第10番」。
 第1楽章、暗く陰々滅々とした楽章。暗澹たる雰囲気が長く続く。聴くにも忍耐が必要で、じわりじわりと恐怖が押し寄せるところ。井上の解釈は諦念とはいわないが、どこか客観的に見つめているようなところがあって救われる。
 第2楽章は、典型的なショスタコのアレグロ。叫ぶピッコロ、機関銃のようなスネア、トランペット、テインパニが入り乱れ、このスケルツォは駆け抜けてあっという間に終わる。井上の指揮の真骨頂。
 第3楽章に入ると、意味深な音名象徴、皮肉と諧謔が混じった狂った舞曲となる。井上の指揮台のダンスと音楽とがぴったし合っていた。
 第4楽章の導入のアンダンテは、第1楽章に呼応する。ラザレフのときには最大限の恐怖に襲われたが、今日はここで一息ついた。アレグロに変わってからは音名象徴が混乱を極め、ここから結尾に向けてのハチャメチャぶりは井上の独壇場だった。
 井上のショスタコーヴィチは、メッセージ性や暗号解読よりは、楽想や音響をそのまま楽しめ、と言っているよう。「ショスタコーヴィチは自分だ」と豪語する井上にとって、ショスタコは自家薬籠中の音楽でもある。作者への敬意をこめて「交響曲第10番」を裸のままで示してくれたのであろう。

N響の来期プログラム2022年03月27日 12:00



 NHK交響楽団の来シーズンの詳細が発表されていた。シーズン開始は9月。NHKホールの改修も終わり、A・Cプログラムは古巣に戻る。
 Aプロは定期公演らしいプログラム、Bプロは名曲中心、Cプロは途中休憩なし60~80分の短時間公演といった色分け。

 https://www.nhkso.or.jp/data/2022_23_programs.pdf

 来期からファビオ・ルイージが首席指揮者に就任し、パーヴォ・ヤルヴィは名誉指揮者となる。そのルイージは、ほぼ秋、冬、春の各季節に登場、パーヴォは春に来日する。
 ルイージの9月就任公演はAプロがヴェルディの「レクイエム」、Bプロがブラームスの「交響曲第2番」、CプロがR・シュトラウス特集である。
 ほかの海外指揮者勢としては、ブロムシュテット、スラットキン、ソヒエフ、フルシャ、ノセダと豪華。邦人指揮者はAプロのみで井上道義、尾高忠明、下野竜也の3人。

 ソヒエフは、ウクライナ問題で次のような悲痛なメッセージを発している。
 「愛するロシアの音楽家たちと愛するフランスの音楽家たちのどちらかを選ぶという不可能な選択を迫られたことから、私はモスクワのボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督の職を即刻辞任することにしました。この決断は、私がボリショイ劇場や トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽家たちと知り合うことができてとても幸運であったということをお伝えするためのものです。」
 全文は以下の通り。

 https://www.kajimotomusic.com/news/2022-03-07/

 3年ぶりとなる2023年1月、ソヒエフが予定通り来日できることを祈りたい。