2024/3/9 広上淳一×神奈川フィル 「わが祖国」2024年03月09日 18:59



神奈川フィルハーモニー管弦楽団
 みなとみらいシリーズ定期演奏会 第393回

日時:2024年3月9日(土) 14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール
指揮:広上 淳一
演目:スメタナ/連作交響詩「わが祖国」


 今年はブルックナーとスメタナの生誕200年のアニバーサリー。ついでに調べてみると、シェーンベルクとホルストが生誕150年、プッチーニとフォーレが没後100年にあたるという。
 そのスメタナの交響詩「わが祖国」全曲。チェコの伝説、歴史、自然を描写した連作交響詩である。

 指揮は広上淳一、いつの間にか髭、鬚、髯を蓄え、まるで哲人のよう。譜面台の上には小型のスコアではなく、各曲ごとに綴じられた大型の総譜。曲が終わるたびにその譜面を取り換えていた。
 広上の音楽は腰が据わり骨太で劇的。語り口が上手く、面白く物語を聴かせてもらった。

「1.ヴィシェフラド(高い城)」、チェコの王たちの居城、ヴルタヴァ(モルダウ)河畔に立つ城砦、ハープが高い城の動機を奏でる。ヴィシェフラドの栄光と没落、戦闘のあとの廃墟。「2.ヴルタヴァ(モルダウ)」、南ボヘミアから流れ出る川。ヴルタヴァの水源、農民の祭りと踊り、月光と水の精の輪舞、聖ヨハネの急流を経て、プラハの街に達する。高い城の主題も聴こえる。「3.シャールカ」、チェコに伝わる少女シャールカの物語。恋人に裏切られたシャールカはすべての男たちへ復讐を決意する。女の手にかかって男は倒れ、坂東さんをトップとする8本のホルンが鳴り狂乱的なクライマックスを築く。「4.ボヘミアの森と草原から」、ボヘミアの自然から呼び起こされる田園的な音画。森や草原から歌が聴こえてくる。ポルカの動機は収穫の祭。ここでの広上のリズムは圧倒的。「5.ターボル」、フス戦争の戦士を讃える。ターボルは南ボヘミアの町で、フス教徒の拠点となった。勝利への戦い、不屈の魂が歌われるが、フス教徒は敗れ、曲は重苦しく閉じられる。「6.ブラニーク」、普通は前曲から続けて演奏されるが、別綴じの譜面の関係もあってか、広上は十分に休みをはさんだ。ブラニークは中部ボヘミアの山で、国が困難に直面したときに現れる救いの騎士たちが眠っているとの伝説がある。行進曲風の高らかな勝利の歌の終りに、高い城の動機が登場し力強く全曲をしめくくる。

 今日の神奈川フィルは素晴らしい鳴りっぷり。2年前に県民ホールで聴いたショスタコーヴィチ「交響曲第8番」以来かも知れない。弦14型、コンマスは石田泰尚。
 みなとみらいホールが改修され、ホームグラウンドに戻ってきてからの神奈川フィルの音はもうひとつ物足りなくて消化不良気味だった。広上の手腕だろう、ようやく本領発揮である。広上は今一番安定している。心置きなく音楽に浸ることが出来る。

コメント

トラックバック