アプローズ、アプローズ!2022年08月25日 16:02



『アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台』
原題:Un triomphe
製作:2020年 フランス
監督:エマニュエル・クールコル
脚本:エマニュエル・クールコル、
   ティエリー・ド・カルボニエ
音楽:フレッド・アブリル
出演:カド・メラッド、マリナ・ハンズ、
   ソフィアン・カメス


 実話をベースにしているという。スウェーデンの俳優ヤン・ジョンソンの実体験で、20年ほど前にも『Les prisonniers de Beckett』というドキュメンタリー映画がつくられている。今回は舞台をフランスに移し、エマニュエル・クールコルが脚本を書き、監督をした。

 売れない中年の役者エチエンヌ(カド・メラッド)は、刑務所での矯正プログラムの講師に招かれる。塀の中の、一癖も二癖もあるハグレ者たちに演技を教えるのだ。
 エチエンヌは、サミュエル・ベケットの不条理劇『ゴドーを待ちながら』を演目に選び指導を開始する。演劇に対する彼の情熱は、囚人たちや刑務所の所長(マリナ・ハンズ)の心を動かし、半年後、困難を乗り越えて塀の外での公演にこぎつける。
 囚人たちの芝居は、観客やメディアの評判を得て再演を重ね、ついにはフランス随一の大劇場、パリ・オデオン座から公演のオファーが届く…
 戯曲『ゴドーを待ちながら』の世界が次第に映画の現実と重なっていく。すべての人が「待っている」、果たして「ゴドー」は現れるのか。

 このところ『ゴドーを待ちながら』が屡々話題にのぼる。『柄本家のゴドー』という記録映画があった。『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇でも使われた。
 「今日は来ないが明日は来る」というのはゴドーからの伝言だった。人は何かを待ち続ける。謎、空虚、永遠、反復、意味は分からない。意味を拒否し、自問自答させることがベケットの狙いだったのだろう。

 エンドロールの背景には、ベケットの写真や当時のゴドーの舞台写真が映し出される。流れる歌はニーナ・シモンの「I Wish Knew How It Would Feel to Be Free」。これがまた映画にぴったし、格好いい。

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