出猩々 ― 2021年04月11日 08:16
小さなモミジが1本庭にある。
品種は「出猩々(デショウジョウ)」という。変テコな名前だけど、日本ではイロハモミジ系のカエデ類の代表品種らしい。
猩々とは、酒を好み人語を解する猿に似た赤毛の獣で、映画『もののけ姫』にも出てきた。映画のなかの猩々は、赤い毛でなかったような気がするが、いろいろな説があるのだろう。いずれにせよ架空の想像上の生き物である。
秋にモミジが紅葉し赤くなるのは当たり前だが、この品種は春に真っ赤な新芽を吹いて、“まるで猩々が出たようだ”として命名された。
今、その猩々が顔をだしている。確かに新芽は真っ赤で艶がある。紅葉のときとはまた違う雰囲気がある。色あせて落葉する前の力を失っていく赤と、緑に色変わりする前の勢いを含んだ赤なのだが、その色の微妙を言葉でうまく表現することが難しい。
出猩々の葉は、春は芽吹きの赤、夏は緑、秋は紅葉、冬は落葉、と一年に渡り変化して楽しめる。
ところで、モミジとカエデの違いは?
分類的には同じ「ムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属」。というか、植物学上、モミジという範疇は存在しないそうだ。モミジとカエデを区別するのは日本人だけと言われている(モミジの英名はJapanese maple)。
判断基準は葉の切れ込みの深さ。葉に深い切れ込みがあり赤子が手の平を広げたような形状をモミジ、それ以外の切れ込みが浅いものをカエデと称することが多いようだ。
もともとカエデの中で特に真っ赤に色づく仲間をモミジと呼んだことからして、区別するといってもその境界線は曖昧にみえる。
なお、モミジとは草木の色が変わることを意味する「もみづ」が由来であり、カエデとは「蛙手(かえるで)」が転訛したと言われている。