2021/4/17 川瀬賢太郎×神奈川フィル ブルックナー 交響曲4番2021年04月17日 19:54



神奈川フィル 定期演奏会 367回

日時:2021年4月17日(土)14:00
場所:神奈川県民ホール
指揮:川瀬 賢太郎
演目:プッツ/交響曲第2番「無垢の島」
   ブルックナー/交響曲第4番変ホ長調

 新年度最初の神奈川フィル定期演奏会。常任指揮者川瀬の最終シーズンのはじまりでもある。演目は日本初演のプッツ「交響曲2番」と、川瀬がはじめて挑戦するブルックナー。会場はみなとみらいホールが改修のため、山下公園前の県民ホール。初体験のホール。初尽くしの演奏会である。

 まず、県民ホール。定員2,500名の多目的ホール、渋谷のNHKホールに似ている。コンサート専用の、みなとみらいホールに比べると、視覚的には舞台の見通しはいいものの、音響的にはちょっと残響が乏しい。

 一曲目は、ケヴィン・プッツの「交響曲2番」(無垢の島)。プッツは現代のアメリカ人作曲家。「2番」は“9.11”に触発された交響曲、20分程度の演奏時間。
 単一楽章だが中身は3部形式。各部の間には、カデンツァのようにバイオリンソロが挟まる。ソロは組長・石田さん、﨑谷さんも登壇して今日はツートップ。
 最初はヒーリングミュージックのように音の波紋が広がる。ホルンに誘導され音楽が高まる。この辺は映画音楽のよう。バイオリンソロのあと、打楽器が絡み合う暴力的で不気味な音楽が力を増す。サイレン風の音型が繰り返し聴こえ、突然途切れる。また、ヴァイオリンソロ。緊張感がほぐれないままホルンのコラールが出現、ここはプログラム上、後半のブルックナー繋がりを狙ったのかも。最後は鳥の声と明け方のような浄化された音楽に収束し静かに終わる。
 はじめて聴いたが、現代曲とは思えないほど馴染みやすい。

 二曲目がブルックナーの「4番」。川瀬のスコアは各ページとも付箋だらけ。最初の取り組みとあって、よく研究したのだろう。
 神奈川フィルは熱演、なかでも坂東さんを中心としたホルン隊が秀逸。トップの坂東さんは最初から最後まで破綻せず、見事な出来栄え。終演後、坂東さんの、納得のソロカーテンコールがあった。そういえば神奈川フィルのホルン首席は2人とも女性、頼もしいかぎり。
 さて、その川瀬は、じっくりと、ゆったりしたテンポで大家然。ただ、勉強の力余って細部にこだわり過ぎたか。
 ブルックナーの音楽は、転調するごとに違う景色をみせ、その様々な景色を眺めているうちに、ときとして彼岸の入口に立つような気がすることがあるが、そこまでは至らず。聴き手が細かい風景に気を取られて、大きな風景を見落とした可能性もある。
 それに、特にフォルティッシモのとき、近・中・遠と階層的に音色が聴こえるといいのだけど、その奥行きがもうひとつ。これはホールせいもあるかも知れない。
 川瀬のブルックナー、初陣としては大健闘、立派でした。