N響の来期プログラム ― 2026年10月12日 09:33



 NHK交響楽団のシーズン幕開けは9月からだが、すでに来期(2027-28)のラインナップが発表されていた。

https://www.nhkso.or.jp/news/27-28_programs.pdf

 首席指揮者ファビオ・ルイージの最終シーズンにあたり、「ミサ・ソレムニス」「ドイツ・レクイエム」「大地の歌」といった大作を披露する。
 正指揮者の下野竜也はブルックナーの「交響曲第8番」を振り、名誉音楽監督のシャルル・デュトワは6月にA~Cプログラム全てに登場する。
 他にもホーネック、サラステ、ポペルカ、ソヒエフなど錚々たる指揮者が並ぶ。4月にはネーメ・ヤルヴィの名前がある。もう90歳、来日できるかどうかは直前になるまで分からないだろう。

 来期のN響も積極的に聴くつもりはないけど、サラステ、ポペルカ、ソヒエフあたりのチケットを取ることになるかも知れない。

2026/10/11 ヴィオッティ×東響 ショスタコーヴィチ「交響曲第10番」 ― 2026年10月11日 21:48



東京交響楽団 東京定期演奏会 第746回

日時:2026年10月11日(日) 14:00開演
会場:サントリーホール
指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
演目:J.S.バッハ/シャコンヌ(齋藤秀雄編)
   ショスタコーヴィチ/交響曲第10番 ホ短調


 齋藤秀雄が編曲したバッハの「シャコンヌ」で開始。「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番」の終曲を、合奏力や表現力を学ぶ教材として学生たちのために編曲したものだという。ヴァイオリン一挺による多声的音楽を弦楽器だけでなく管楽器にも割り振って再構築した。齋藤は一時東響の常任指揮者に就いたこともあるようだが、何より弟子の秋山和慶が東響の初代音楽監督を長く務めたから東響との縁は深い。
 ヴィオッティはゆったりと大きな音楽をつくって行く。変奏が重なっていくごとに光は増し、その神々しいほどの美しさに鳥肌が立ち涙腺が緩む。齋藤は“天上の音楽”を教材にしたわけだ。
 「シャコンヌ」のあと、切れ目なくそのままショスタコーヴィチの「交響曲第10番」となった。冒頭のコントラバスはまるで地獄からの地鳴りのよう。景山昌太郎の率いる弦5部の音圧は筆舌に尽くしがたく、耳慣れない音色も初めての経験。第2楽章の疾走感はショスタコーヴィチのアレグロの限界に挑んだに等しい。楽譜からこのスピード、音量、音色を引き出したのは信じがたい。気が付けば前のめりになって聴き入っていた。第3楽章は頻繁に出現する作家の音型や恋人の音型よりも狂気の舞曲のほうが印象的だった。フィナーレは沈鬱なゆっくりとした曲想のあとヌヴーのクラリネットで一転、福士マリ子のファゴットが大活躍をしてどんちゃん騒ぎとなるが、どこか上品で優雅なのは不思議な感触だった。最後は怒涛の勢いでもって終結した。
 ヴィオッティのショスタコーヴィチを聴いていると、作家の思惑とか時代背景とかがほとんど頭に思い浮かばない。陰陰滅滅で苦虫を嚙み潰したようなショスタコーヴィチも、音名象徴の自己主張も感じない。アレグロだってスターリンの恐怖はない。ソヴィエト社会主義共和国連邦の不気味さも曖昧模糊としたまま。だけど、これはヴィオッティが構築した純粋な音楽なのだ。ダイナミクスは桁外れに大きく、表現の幅はとてつもなく広い。聴いたことのない音色を作り出し、緩急によって緊張感が途切れることもない。音楽が持つ質量の凄まじさに説き伏せられたといってもよい。終わってみれば特別な時間を体験したという感覚で満たされていた。
 盛大な拍手の中、ヴィオッティは最初に福士マリ子を、そしてヌヴーを称え、次々と管楽器、打楽器、弦楽器奏者を賞賛した。オケが舞台裏に引けた後は熱狂的な聴衆によるヴィオッティの一般参賀となった。

2026/10/10 大植英次×神奈川フィル 「パガ狂」と「惑星」 ― 2026年10月10日 21:06



神奈川フィルハーモニー管弦楽団
 みなとみらいシリーズ定期演奏会 第417回

日時:2026年10月10日(土) 14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール
指揮:大植 英次
共演:ピアノ/アレクサンダー・ガジェヴ
   女声合唱/神奈川ハーモニック・クワイア
演目:ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
   ホルスト/組曲「惑星」


 大植英次はこのところ毎年のように神奈川フィルに客演し、なかなか満足度の高い演奏を聴かせてくれる。今日は共に20世紀前半の作家であるラフマニノフとホルストの代表作である。
 ソロは人気のアレクサンダー・ガジェヴ、やはり女性客が多く完売公演となった。先日のケヴィン・チェンと同様、ショパンコンクールで第2位を獲得している。チェンは昨年の第19回、ガジェヴはその前2021年の第18回で反田恭平と2位を分かち合った。

 最初は「パガニーニの主題による狂詩曲」。ラフマニノフがパガニーニの「カプリース 第24番」の主題をもとに24の変奏曲を書いた。最近ではユリアンナ・アヴデーエワのダイナミックでエネルギッシュなピアノが印象に残っている。そういえばアヴデーエワは10数年前のショパンコンクールの覇者だった。
 ガジェヴの音色は明るく柔らかい。細やかなニュアンスを感じさせリズム感も素晴らしい。ピアニッシモからフォルテッシモまで良く考えられた演奏だけど、ちょっと表現が淡白で油彩画というよりは水彩画のような趣がある。大植の伴奏がこってりとしていて、オケの勢いに押されたようなところもあった。

 この楽曲の表題は「狂詩曲」となっているけどWebマガジン「ONTOMO」の増田良介によると、この作品には作曲者本人が考案した筋書きがあるらしい。
 いわく、<物語の主人公はパガニーニ自身で、ほかに「パガニーニが、芸術における完璧さとある女性への愛のために魂を売った」悪魔が登場する。《カプリース》の主題はパガニーニ自身、そしてもうひとつの重要な主題、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」に基づく「ドシドラシソララ」という主題は悪魔を表す。悪魔は第7変奏ではじめて登場し、第8~10変奏で力を増していく。第11変奏で雰囲気ががらりと変わり、ここからが「愛の領域」となる。第12変奏ではじめて登場する女性は、第13変奏でパガニーニと対話し、この女性とのエピソードが第18変奏まで続く。第19変奏はヴァイオリンをもったパガニーニだ。ピアノがヴァイオリンのピッツィカートを模倣する。これは「悪魔的ピッツィカートによるパガニーニの勝利」らしい。続く第21~22変奏について、ラフマニノフは、「悪魔を表すほかの登場人物たちが、その女性やパガニーニの芸術をめぐって争うのをカリカチュアとして描いてもいいと思います」と書いた。そして、第23変奏の最初の12小節において、パガニーニはついに挫折し、悪魔が勝利する。悪魔は凱歌を上げる>、と紹介されている。

 なるほど、これは自由奔放な「狂詩曲」としてでなく、ピアノをフィーチャーした「交響詩」として聴いていいのかも知れない。ガジェヴのピアノからもう少し物語を読み取るべきだったと反省した。
 ソロアンコールは2曲、グリーグの抒情小品集の「アリエッタ」とショパンの「マズルカ」とホワイトボードに書いてあった。それにしてもガジェヴは繊細で内部に沈み込むような情緒的な曲のほうが得意ではなかろうかと思う。

 後半は「惑星」。大植は古希を過ぎているが、この歳でありながらねちっこく骨太な濃い演奏を繰り広げる。もともとオケを鳴らすのが上手い人だから「惑星」となれば音の大絵巻となる。
 「火星」「金星」「水星」と進み、組曲中もっとも有名で壮大な「木星」を経て、後半の「土星」「天王星」「海王星」がことのほか面白かった。特にスケルツォ風の「天王星」はどぎついほどで、大規模な管弦楽とオルガンが目一杯活躍した。弦楽器やホルン、イングリッシュホルンなどの管楽器が諧謔風の旋律を歌う。コンマスは東フィルの三浦章宏、チェロ、コントラバスの首席も宮地晴彦、菅沼希望が客演、ホルンはサイトウ・キネンの阿部麿、イングリッシュホルンはN響の和久井仁という名手が参加するなど、ゲストを含めて思う存分暴れまわった。コンマスの隣の濱田彰子などは大植のオケの煽り方を見て何度も笑みをこぼしていたけど。「海王星」の終盤のヴォカリーズはプロの女性合唱で、舞台裏にて舞台出入口を開けて歌ったため、神秘性はいささか薄れたものの歌声がはっきりと聴きとれた。
 この「惑星」は大植なりにデフォルメし厚化粧を施したもので、デュトワや藤岡とは全く異なるアプローチながら興味深く聴いた。
 来年は東響定期でウルバンスキが「惑星」を振る。スタイリッシュなウルバンスキは、また大きく違う「惑星」を聴かせてくれるはず、楽しみである。

東響の来期プログラム ― 2026年10月07日 13:56



 音楽監督ロレンツォ・ヴィオッティが2年目の、東京交響楽団2027/28年シーズン・ラインナップが発表になった。東京定期公演の4月~8月は会場をサントリーホールからミューザ川崎シンフォニーホールに移して開催される。

https://tokyosymphony.jp/wp-content/themes/tso/assets/img/pamphlet/2027pamphlet.pdf

 非常に力の入ったプログラムだ。ヴィオッティはワーグナー、ヴェルディ、ブルックナー、マーラーの大曲と、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンの作品、そして、R.シュトラウス、ストラヴィンスキー、メシアンなどをずらっと並べて振る。
 客演ではウルバンスキが戻ってくるのが嬉しい。ヴァンスカやカサドも何度目かの登場である。
 また、2027/28年シーズンより佐藤俊介が東響のクリエイティブ・パートナーに就任し、その記念コンサートも行われる。

 来期は例年以上に東響を集中的に聴くことになりそうだ。ヴィオッティの演目はすべて聴いてみたいし、ウルバンスキやヴァンスカも外すわけにはいかない。
 川崎定期会員は継続するが、さらに東京定期会員に復活するか、ミューザにおける名曲全集の年間セット券の購入を検討したい。来期の東響は楽しみだ。

都響の来期プログラム ― 2026年10月06日 09:10


 
 都響の来期(2027/4~2028/3)プログラムが発表された。

https://www.tmso.or.jp/j/wp/wp-content/uploads/2026/10/2027-2028seasonprogram_j.pdf

 定期演奏会のAシリーズは文化会館が長期休館のため、今年度と同様、Cシリーズとともに芸術劇場にて開催される。サントリーのBシリーズもホール改修のせいで9月からの6回公演となり、上期はすみだトリフォニーホールでの代替公演が企画されている。

 桂冠指揮者であるエリアフ・インバルはマーラーの「第5番」と「第6番」を振り、第3次マーラー・シリーズを継続する。
 来期が最終シーズンとなる大野和士、特別客演指揮者となったアラン・ギルバート、終身名誉指揮者の小泉和裕、そして、アーティスト・イン・レジデンスを務め首席指揮者に就任予定のペッカ・クーシスト、首席客演指揮者となったダニエーレ・ルスティオーニはとうぜん幾つかの公演を指揮する。
 加えてヤクブ・フルシャ、マーティン・ブラビンズ、レナード・スラットキンといったお馴染みの指揮者たちや、ハンス・グラーフ、シモーネ・ヤング、熊倉優なども登場する。

 来期の都響はインバルのマーラーや、ヤングのブルックナーなどを厳選して聴くことになりそう。