2024/10/5 ウルバンスキ×東響 ラヴェルと「展覧会の絵」2024年10月05日 21:04



東京交響楽団 名曲全集 第200回

日時:2024年10月5日(土) 14:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
共演:ピアノ/小林愛実
演目:コネッソン/輝く者-ピアノと管弦楽のための
   ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
   ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」


 名曲全集の第200回の節目、人気の指揮者・ソリストの共演と魅力的なプログラムのせいで早々と完売公演となった。
 最初のコネッソン「輝く者」から小林愛実が登場。真赤なパンツとジャケットが華奢な身体によく似合う。オケから密やかに風の音が聴こえ、樹々がざわめき、鳥が歌う。小林愛実のピアノは一音一音が粒立っているのに鋭利でなく温かく柔らかい。プログラムノートによると「輝く者」はラヴェルの「ピアノ協奏曲」の続編として2008年に書かれたものだという。現代音楽ながら調性があって神秘的、熱狂もある。初めて聴く10分ほどの曲だったがなかなかに楽しめた。

 小林愛実はショパンコンクール後、結婚や出産が重なり2年近くステージから遠のいていたはずだが、全くそのブランクを感じさせない。ラヴェル最晩年の傑作「ピアノ協奏曲 ト長調」を鮮やかに弾いた。
 古典的な急・緩・急の3楽章形式だけど内容は極めて斬新。第1楽章はムチの音で吃驚し、民謡を思わせる楽しげなメロディとジャズ風のけだるい雰囲気が混在する。中間楽章は小林愛美の長いピアノソロが泣かせる。叙情的で静謐でモーツァルトの緩徐楽章を彷彿とさせた。ソロを引き継いだ木管楽器群は美しく、浦脇健太の吹くイングリッシュ・ホルンとピアノとの絡みが絶品だった。最終楽章は活気に満ちたリズムでパレードでも始まりそうだった。ピアノとオーケストラの掛け合いが見事で、無理を感じさせないウルバンスキの指揮姿に自然見惚れてしまう。もちろん、まろやかで美しさと切なさが交錯する小林愛実のピアノには感心しきり、いいピアニストである。

 休憩後、ラヴェル編曲によるムソルグスキーの「展覧会の絵」。
 「プロムナード」はローリー・ディランのトランペットが素晴らしい。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」におけるミュートを付けた音も抜けがよく歯切れがいい。首席奏者であるがまだ研究員である。全曲にわたって大活躍だった。
 ウルバンスキの指揮はとにかくカッコいい。音楽も泥臭さがなくてスッキリしている。「展覧会の絵」はラヴェルによって華やかさと色彩感を与えられたのだけど、ロシアのムソルグスキーよりフランスのラヴェルの顔ばかりが思い浮ぶのには少々閉口した。「チュイルリー」や「卵の殻をつけた雛の踊り」「リモージュの市場」などは活気あふれるリズムと華やかな音響のなかから普段気づかない音が聴こえてきて大いに得をした気分だ。
 「カタコンベ」から「バーバ・ヤーガの小屋」を経て「キエフの大門」にかけては背筋が凍り付くような恐怖を感じる演奏もあるのだけれど、ウルバンスキはスタイリッシュで洗練されグロテスクになり過ぎない。コーダを目前にして、クラリネットやファゴットによる聖歌風コラールや鐘の音も加わるあたりからのテンポ加減はウルバンスキの真骨頂、大伽藍が現出したかのような壮大なクライマックスを築いた。
 東響のコンマスはニキティン。チェロのトップは木越さんがゲストだったのでは? だいぶお歳を召された。ホルンの注目は研究員の白井有琳、「展覧会の絵」ではトップに座って安定した演奏を披露した。

 ウルバンスキは、10年くらい前に3年間ほど東響の首席客演指揮者を務めていた。その後しばらくご無沙汰だったが、ここ数年はまた毎年のように客演している。当初はその指揮姿と暗譜能力の方が話題になっていて、演奏は出来不出来まちまちだったように記憶するけど最近は当たり外れがない。忘れがたい演奏を聴かせてくれる。2023/24シーズンからボレイコの後任で母国ワルシャワ国立フィルの音楽監督となり、2024/25シーズンからはベルン交響楽団の首席指揮者を兼ね多忙なようだ。来期は東響を振らないが、手兵とともに来日するかも知れない。東響のノット監督の後任はロレンツォ・ヴィオッティで決着したが、これからも東響との共演を継続してほしい指揮者の一人だ。

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