2024/10/13 ウルバンスキ×東響 ショスタコーヴィチ「交響曲第6番」 ― 2024年10月13日 20:25
東京交響楽団 川崎定期演奏会 第97回
日時:2024年10月13日(日) 14:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
共演:ピアノ/デヤン・ラツィック
演目:ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 ハ短調op.18
ショスタコーヴィチ/交響曲第6番 ロ短調op.54
ウルバンスキの名曲全集に続く定期公演は、ラフマニノフの協奏曲とショスタコーヴィチの交響曲を組み合わせたロシア・プログラム。前回は完売公演で今回もミューザ2000席がほぼ満杯、人気者である。
ラフマニノフのソロはデヤン・ラツィック。幼少からピアノとクラリネットを演奏し、10歳になるかならないかで作曲を始めたという。10代半ばにはモーツァルト・イヤー(1991年)で「クラリネット協奏曲」と「ピアノ協奏曲」を演奏して話題となったらしい。幾度か来日しているようだが初聴き。
「ピアノ協奏曲第2番」はラフマニノフの出世作にして有名曲。親しみやすい和声進行と哀愁の旋律ゆえだろう。第1楽章の開始でピアノを鐘の音のように鳴らす。主に弦楽器がロマンチックな旋律を奏で、ピアノは分散和音をひたすら弾き続ける。ラツィックの音は硬質でありながらタッチはまろやか。管弦楽は地の底から湧き上がるような重々しさ。でも、どこか軽やかに思えるのが不思議。ウルバンスキは暗譜で自在にオケをコントロールして行く。
第2楽章に入るとピアノが弦や木管と一緒になって抒情的に歌う。終楽章ではピアノは技巧的な和音や装飾音を散りばめ曲を盛り上げる。ラツィックは卓越した技術で複雑なパッセージも滑らかに演奏する。感情的な深みを情熱的かつ繊細に表現した。伴奏のウルバンスキは各楽章をアタッカでつないだ。
ショスタコーヴィチの「交響曲第6番」は「第5番(革命)」と「第7番(レニングラード)」に挟まれて目立たない。ショスタコーヴィチにしては小ぶりで、演奏機会もかなり少ない。しかし、「第4番」から始まり「第8番」「第10番」と続く一連の偶数番号交響曲と同様、ショスタコーヴィチの本音や秘密めいた心情が塗りこめられているように思う。緩-急-急の特異な3楽章形式で第1楽章が欠けた交響曲と言われるが、最終楽章が落ちているとも言える。いずれにせよアンバランスで未完成的な構造が聴き手を不安定にさせる。
第1楽章はラルゴ、低音楽器のユニゾンで始まる。弦楽器による主題は「第5番」に似ている。そして音楽は時間を追って高揚するのではなく、逆に音量がどんどん小さくなる。曲調は冷ややかに独り言のようになって静かに終わる。ウルバンスキは緊張感と静寂さのバランスが絶妙で、各楽器の音色を際立たせることでショスタコーヴィチの複雑な感情を顕わにしようとしたのかも知れない。
第2楽章はショスタコ得意のアレグロ、スケルツォ楽章。木管楽器が先行し、金管楽器が加わって頂点を築く。喧噪はだんだん遠ざかり、最後はふんわりと着地する。第3楽章はプレスト、ドンチャン騒ぎ。軽快に弦楽器で始まるが、やがてカーニバルの開始のように金管楽器が爆発し、打楽器が打ち鳴らされる。木管楽器の変拍子を伴ったアンサンブルがそのまま加速し最後まで一気に駆け抜ける。ウルバンスキはここでも重量感を失わないまま浮揚感のある音楽をつくった。ダイナミックなテンポとリズム感に工夫があって、ショスタコーヴィチの恐怖や皮肉が浮かび上がる。
コンマスは小林壱成。ピッコロ、イングリッシュホルン、バスクラリネットなどさまざまな木管が大活躍、東響の名手たちに改めて感心した。
ウルバンスキのショスタコーヴィチは随分前に「第4番」を聴いた。そのときは音楽が整理整頓されすぎていて不本意な結果だったけど、今回の「第6番」は静と動、明と暗の対比も鮮明な完成度の高いもの。
ウルバンスキは来シーズン東響との共演がなくがっかりしていたが、なんと都響に登場し「第5番」を指揮するという。東響以外のオケからどんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみに待ちたい。