2025/8/17 征矢健之介×EMQ ブルックナー「交響曲第8番」 ― 2025年08月17日 21:49
EMQ(Ensemble Musikquellchen)
第30回記念演奏会
日時:2025年8月17日(日) 14:00開演
会場:杉並公会堂
指揮:征矢 健之介
演目:ブルックナー/交響曲第8番
征矢健之介は長くシティフィルの第一ヴァイオリン奏者を務め、アマオケの指導にも積極的に取り組んできた。音楽評論家でもある。
EMQは早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団のOBが中心となり、設立当時は室内アンサンブルとしてスタートし、3年目から征矢さんの指導を仰いで現在に至っている。
このEMQが第30回記念演奏会の演目に選んだのはブルックナーの「交響曲第8番」、畢竟の大作である。四半世紀にわたってシティフィルに在籍した征矢さんのブルックナーなら飯守泰次郎直伝と言っていいだろう。
定刻の14時にオケのメンバーが舞台に勢ぞろいし指揮者が登場すると、プレトークが始まった。各楽章の聴かせどころをオケが演奏するというおまけつきで。
征矢さんは古希を迎えたばかりだが、左の手足が少し不自由。歩くときには杖の力を借りなければならないし、指揮するときの左手はほとんど折りたたんだまま。右手は大きく動かすことができるが、スコアも捲らなくてはならないから指揮棒は持たない。指揮台には椅子が置かれていた。
15分くらいの演奏付きのプレトークが終わると、指揮者、オケとも一旦舞台から降り、20分ほどの休憩のあと本番となった。演奏がスタートしたのは14時半をまわっていた。
征矢×EMQによる「交響曲第8番」はブルックナーを聴く喜びや楽しみを与えてくれる充実した演奏だった。実に豪快で真っ直ぐで、ひと昔前のブルックナー演奏を思い出させる懐かしさに満ちたものだった。ハース版ということもある。
征矢さんの歩みは堂々としたもので、呼吸には僅かな隙もない。各楽章のテンポ感が申し分のないほど決まっている。ブルックナー休止は自然で音楽が滔々と流れていく。曲想に応じて強調すべき楽器に齟齬はなく、どの場面でも楽器のバランスが整っている。
指揮者の要求に応えるEMQの熱量も高い。破裂音を活かした金管の咆哮、侘し気な木管、管楽器に埋もれることのない力強い弦など、少々荒々しさはあるが、失敗を恐れることなく思い切った演奏を繰り広げる。オケから立ち上がる覇気は清々しいほどだった。
アマオケで聴くブルックナーの「第8番」は、古くは朝比奈×名大響や飯守×新響、最近では太田×ユニコーンSOなどが記憶に残っているけど、今日の征矢×EMQもそれらに並ぶ。忘れられない演奏になりそうだ。