フォールガイ2024年09月04日 15:26



『フォールガイ』
原題:The Fall Guy
製作:2024年 アメリカ
監督:デビッド・リーチ
脚本:ドリュー・ピアース
音楽:ドミニク・ルイス
出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント、
   アーロン・テイラー=ジョンソン


 スタントマン出身の監督デビッド・リーチによるスタントマンを主人公とする作品。ハチャメチャに楽しい。1980年代の米人気テレビシリーズのリメイクというが、日本で公開したのかどうか、オリジナルは記憶にない。

 怪我で引退していたスタントマンのコルト(ライアン・ゴズリング)は、気が乗らないままハリウッドに舞い戻る。ところが、復帰作の監督は元彼女のジョディ(エミリー・ブラント)だった。再会を機にコルトはジョディと縒りを戻そうと必死のスタントを請け負う。そんななか、復帰作の主演であるトム(アーロン・テイラー=ジョンソン)が失踪してしまう。コルトは昔からトム専属のスタントマンで、その因縁のトムの行方を追うが、思いもかけぬ騒動に巻き込まれて行く…

 アクション映画に欠かせないヒーローといえばスタントマンだろう。そのスタントマンをはじめとする映画の裏方をリスペクトした熱い作品だ。台詞も洒落ている。『ノッティングヒルの恋人』や『プリティ・ウーマン』『ダンボ』など他の映画の話題もあって微笑ましい。終始小気味よい会話が飛び交う。劇中の音楽にはテイラー・スウィフトやフィル・コリンズ、キッスらの曲が使われ、その音楽がポップ調の切れ味鋭い映像を大いに盛り上げる。

 ライアン・ゴズリングは『きみに読む物語』『ラ・ラ・ランド』『ブレードランナー 2049』『ファースト・マン』など、どんな役柄でもこなすけど、アクションスターとしても一級である。エミリー・ブラントも『プラダを着た悪魔』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ボーダーライン』など、幅広い女優だが時に知性が勝って素が見えてしまうところが魅力かも知れない。アーロン・テイラー=ジョンソンは、次のジェームス・ボンド役との噂があり、『GODZILLA』や『テネット』『ブレット・トレイン』にも出演していたようだがあまり覚えていない。今後はマークしなければならない。
 
 同じスタントマンを主人公にした映画といえば、タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』があった。タランティーノの“懐かしき時代”への徹底的なこだわりと、その画像をバックにした、滅びゆく美しさ、郷愁と怒り、といった複雑な感情を呼び起こす作品と比べると、『フォールガイ』はポップコーン・ムービーといってよい。しかし、『フォールガイ』も映画としての仕掛けがてんこ盛りで、遊び心満載のアクション映画好きには堪らない逸品だった。