2021/11/14 ウルバンスキ×東響 カルミナ・ブラーナ2021年11月14日 21:07



東京交響楽団 川崎定期演奏会 第83回

日時:2021年11月14日(日)14:00
場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ
共演:ヴァイオリン/弓 新
   ソプラノ/盛田 麻央
   テノール/彌勒 忠史
   バリトン/町 英和
   コーラス/新国立劇場合唱団
   児童合唱/東京少年少女合唱隊
演目:シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番 op.35
   オルフ/カルミナ・ブラーナ

 
 ほぼ3年ぶりのウルバンスキ。当時のプログラムは、ショスタコーヴィチの「交響曲4番」とエーベルレがソロを弾いたモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲3番」だった。
 今回の来日では、ブラームスの「交響曲4番」を中心とするドイツ・オーストリア音楽集と、大曲「カルミナ・ブラーナ」を核にした二つのプログラム。
 一つ目のドイツ・オーストリア音楽集は、生では聴けなかったがネット放映で確認した。

 今日は、最初にシマノフスキの「ヴァイオリン協奏曲1番」が演奏された。ウルバンスキの母国ポーランドの作曲家である。
 ヴァイオリン協奏曲というよりはソロヴァイオリン付の管弦楽曲というくらいソロとオケとが融合しながら進んでいく。鳥が鳴きかわすようにして始まり、途中、ストラヴィンスキー的な調べや印象派風の音楽などが聴きとれるが、それ以上に、様々なざわめきによって曲全体が組み立てられ、創られているような感じがする。
 弓新は、この難曲を暗譜で聴きこなした。普段、暗譜のウルバンスキは、さすがにスコアを置いていたけど。後半のカデンツァのとき、ウルバンスキは指揮台から降りて、弓新のヴァイオリンにスポットを当てていた。
 20世紀の初頭に書かれたこの協奏曲はなかなか難物、筋書きをたどるのに苦労する。とはいえ、ウルバンスキ×東響とボムソリの代役弓新は、官能的でありながら気品のある響を聴かせてくれた。

 次いで、3人のソリスト、混声合唱、児童合唱を伴う「カルミナ・ブラーナ」。
 ウルバンスキにとって、シマノフスキはお国ものだから得意としているだろうが、オルフの「カルミナ・ブラーナ」は、スタイリッシュで貴公子然としたウルバンスキのイメージに何となく合わない。そのアンバランスがどんな化学反応を起こすのか。
 いやいや、どうしてどうして、非常に面白かった。
 「カルミナ・ブラーナ」は、19世紀初めにドイツ南部、バイエルン選帝侯領にあるベネディクト会のボイエルン(ブラーナ)修道院で発見された300編にものぼる中世の詩歌集(カルミナ)。オルフがその中から20数編を選び、世俗カンタータとして1936年に作曲した。単純明快な形式と和音、単旋律的な合唱、強烈なリズム、執拗なオスティナートが特徴で、原初的なエネルギーに満ち溢れている。
 それが、ウルバンスキにかかると、野卑なところが全くない。エグ味が捨象され、スマートでモダンな音楽として聴こえてくる。しかし、音づくりとしては技巧的というか変態的で、同じオスティナートでもさかんにテンポを伸縮させ、音色もオケでは使っていない電子楽器のような音を出させたり、オルガンのように響かせたりもする。
 コーラスは、ぎりぎり絞り込んで50人ほどの少人数。でも新国立劇場合唱団の迫力は並みじゃない。児童合唱団も10数人だったが粒揃いの歌唱、不足はない。ソリストはテノールが彌勒さん、海外勢の代役でソプラノが盛田さん、バリトンが町さん。いずれも大健闘。
 「第二部 酒場」でのテノールの独唱の場面では、彌勒さんが白鳥の縫いぐるみを持って登場。「第三部 求愛」でのソプラノ独唱は、まるでオペラの一場面のよう。コーラスも曲によっては、身体を左右に揺り動かして視覚的な演出も加えていた。
 「カルミナ・ブラーナ」は、音楽的には素朴で深みはないかもしれないが、勢ぞろいした打楽器、滑稽な木管楽器、鋭く咆哮する金管楽器など聴き処は一杯ある。野趣あふれるエネルギッシュな演奏もいいが、今日のような新しいスタイルの演奏も曲が近代化された按配でまた楽しい。