2022/8/30 河村尚子×読響(弦楽五重奏) シューマンのピアノ協奏曲 ― 2022年08月30日 19:32
横浜18区コンサート 第Ⅱ期
室内楽で聴く協奏曲の愉しみ
日時:2022年8月30日(火) 15:00開演
会場:神奈川県民ホール 小ホール
出演:ピアノ/河村 尚子
読売日本交響楽団メンバー(弦楽五重奏)
ヴァイオリン/長原 幸太、川口 尭史
ヴィオラ/鈴木 康浩
チェロ/室野 良史
コントラバス/瀬 泰幸
演目:モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク
K. 525より 第1楽章(弦楽五重奏)
ドヴォルザーク/弦楽五重奏曲 第2番 ト長調
Op. 77より 第3楽章、第4楽章
シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 Op. 54
(ピアノと弦楽五重奏)
横浜みなとみらいホールは、この10月にリニューアルオープンとなる。ホール休館期間中に、横浜市内各所で開催されてきたのが「横浜18区コンサート」。
今回は河村尚子が出演、一緒するのは長原幸太をリーダーとする読響メンバーの弦楽五重奏団である。
会場の神奈川県民ホール・小ホールは定員400名強、完売公演となった。館内の装飾は質素ながらパイプオルガンが設置されていた。
河村尚子が登場する前に、弦楽五重奏団だけでモーツァルトとドヴォルザークから1曲ずつ、といっても全曲ではなく一部楽章のみ。肩慣らしのようなものだ。
次いで、シューマンのピアノ協奏曲。
弦楽五重奏が伴奏だから、シューマン独特の管楽器の音を塗り重ねたような響きはなく、ピアノがより強く訴えかけてきて、意外な驚きがもたらされる。親密な第2楽章からはじけるような第3楽章へ入るころには、同じシューマンの「ピアノ五重奏曲」に匹敵する室内楽の名曲ではないか、と錯覚するほど。河村尚子のピアノは勁く雄弁、読響メンバーは真剣な中にも笑みがこぼれ、この機会を楽しんでいるよう。
それにしても弦楽器は、いまさらながらアンサンブルの基盤だと再認識する。ピアノにしても管にしても色彩感豊かな楽器だけど、多声部の弦の織物のうえでこそ一層際立つ。
オーケストラ相手の協奏曲を室内楽編成にすることで、新鮮な凝縮された音楽が聴こえてくる。「横浜18区コンサート」は10月には終わるが、こういった名曲に新たなスポットを当てる企画を、今後とも続けてほしいものだ。