2023/10/4 直江智沙子 ヴァイオリン・リサイタル2023年10月04日 14:34



神奈川フィル “ブランチ”ハーモニー inかなっく

日時:2023年10月4日(水) 11:00 開演
会場:かなっくホール
出演:ヴァイオリン/直江 智沙子
   ピアノ/河野 紘子
   司会/榊原 徹
演目:エルガー/朝の歌 op.15-2
   クライスラー/Tenpo di Minuetto
   パラディス/シチリアーノ
   マスネ/タイスの瞑想曲
   フォスター/金髪のジェニー
   フランク/ヴァイオリンソナタ


 今年の神奈川フィル“ブランチ”ハーモニーは、この直江智沙子のリサイタルのみを聴くことにした。神奈川フィルの顔といえば断トツで石田泰尚だが、第2ヴァイオリン首席の直江智沙子やオーボエの古山真里江、ホルンの坂東裕香など若い女性奏者の活躍も目覚ましい。

 注目はフランクの「ヴァイオリンソナタ」。その前に小曲を披露。いずれも耳慣れた穏やかな曲で、平日昼の雨のコンサートにお似合い。直江さんのヴァイオリンは艶やかでしっとりとした音色、まったくガサガサしたところがなく滑らかで心地よい。

 途中、進行の榊原さんとセカンドヴァイオリン談義が交わされる。第2ヴァイオリンの役割は、第1ヴァイオリンが弾きやすいように支えること、そして、ヴィオラやチェロ、コントラバスに受け渡して行くこと、それが楽しくてやりがいがある、と直江さん。弦合奏におけるコミュニケーションの中心的存在ね、と榊原さん。

 最後にフランクの「ヴァイオリンソナタ」。フォルテや速いパッセージでもヒステリックにならない。温厚で美音を保って弾き続ける。それが面白くないかというとそうではない。効果を狙うような音づくりと違い、確かな技巧によって音楽がじわっと立ち上がってくる。第2楽章の終わりで拍手が起こるほどの演奏だった。

 以前、新日フィルのビルマン聡平のリサイタルでも感じたが、セカンドヴァイオリンにこれほどの名手がいてオケを支えている。オケメンバーそれぞれの力を引き出し、音楽家たちをまとめあげることのできる指揮者であれば、時としてオーケストラがとんでもない演奏を生み出すのは当たり前のことだ、と改めて納得した次第。

 直江さんもピアノの河野さんも同じくらいの背格好。2人とも淡く落ち着いた色調のドレスを纏い、登場したときから舞台が明るくなった。そのまま温かい雰囲気の1時間を過ごした。直江ファンも集まっていたようで会場はほぼ満席だった。