2024/4/4 周防亮介の協奏曲 パガニーニ、ブルッフ、シベリウス ― 2024年04月05日 10:27
周防亮介+渡邊一正×日フィルによるVn協奏曲集
日時:2024年4月4日(木) 19:00開演
会場:サントリーホール
出演:ヴァイオリン/周防 亮介
指揮/渡邊 一正
管弦楽/日本フィルハーモニー交響楽団
演目:パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調Op.6
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調Op.26
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調Op.47
1年ほど前に周防亮介のパガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第1番」をみなとみらいの小ホールで聴いた。伴奏はオケではなく弦楽五重奏で、メンバーは田野倉雅秋をはじめとする日フィルの楽員。ソロの技巧と美音に感心し、機会があれば周防を改めて聴きたいと思っていた。
協奏曲3曲を一晩で弾ききるのは無謀な挑戦だが、周防はすでに昨年、ブラームス、メンデルスゾーン、チャイコフスキーの3曲をまとめて披露している。このときはスケジュールが合わなかったので、今回は待っていましたとばかりチケットを確保した。
サントリーの大ホールにあっても周防の魅力的な音色と豊かな音量は変わらない。繊細さと大胆さ、柔らかさと強靭さが同居して、叙情と劇性をものの見事に表現する。歌い回しが上手で、オケに埋もれてしまう音が1音たりともない。パガニーニは軽やかに楽々と、ブルッフでは甘美な熱狂をまとい、シベリウスは堅忍不抜の情念を弾き分けた。
パガニーニは室内版よりもさらにオペラ的で、超絶技巧のソロのアリアをオケが支えるといった趣。緩徐楽章のファゴット・鈴木一志さんとの絡みなどは室内版では味わえない楽しみだった。パガニーニを汗一つかかず易々と弾いたあと20分の休憩。
ブルッフでは一転身体を大きく前後に振り、分厚い響きでもって情熱的に演奏する。第2楽章では泣かせどころが何か所あるが、そこをきっちりと泣かせてくれる。ブラームスに先行する第3楽章も胸躍る。もっと評価されてしかるべきヴァイオリン協奏曲の名曲。熱量のこもったブルッフを終え、休憩なしでシベリウスへ。
シベリウスの協奏曲は厄介な曲だ。民俗音楽を背景にしながらも実験音楽を試みているような難解なところがあって、実演では聴き手の集中力が切れることママある。ところが周防のテクニックと音作りは、聴き手を最後まで飽きさせない。これがパガニーニ、ブルッフを弾いたあとのシベリウスだとはとても信じることができない。
終演後大きなブラボーが飛び交い、多くの人がスタンディングオベーションで讃えた。熱狂的なファンも押しかけていたようだ。アンコールはオケ伴奏による「ツィゴイネルワイゼン」。
周防亮介はたしか30歳になるかならないかのはず、末恐ろしい逸材。日フィルは弦12型、コンマスは木野雅之。渡邊一正の指揮は粘り強く周防の挑戦をよくサポートした。