2024/2/17 沼尻竜典×神奈川フィル マーラー「夜の歌」2024年02月17日 20:35



神奈川フィルハーモニー管弦楽団
 みなとみらいシリーズ定期演奏会 第392回

日時:2024年2月17日(土) 14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール
指揮:沼尻 竜典
共演:ピアノ/ニュウニュウ
演目:グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調Op.16
   マーラー/交響曲第7番ホ短調「夜の歌」


 神奈川フィル2023/24シーズンにおける個人的な注目公演は、今月の「夜の歌」と最終3月の広上が振る「わが祖国」。
 沼尻が指揮をする「夜の歌」は大昔に聴いている。そのときが「交響曲第7番」との最初の出会いで音盤もまだ持っていなかった。実演に驚き慌ててレコードを買いに行った記憶がある。

 「交響曲第7番」は演奏に1時間半くらいかかるから、演奏会ではこれ1曲のみが普通だけど、今日はグリーグの「ピアノ協奏曲」を組み合わせてくれた。
 ソリストはニュウニュウ。チャイナ出身の27歳、6歳でコンサートデビューし、10歳でEMIと契約したという元神童。沼尻はニュウニュウが12歳の時に上海万博で共演しており、今回はそれ以来の再会だとHPに記されていた。ニュウニュウは幼い顔立ち、長い手足、スラッとした体躯。音はキレがよく豪快に鳴る。いい意味で外連味があって華やか、舞台映えもなかなかのものだ。神奈川フィル(コンマスは大江馨)の開放的で明るい音と相まってグリーグのちょっとほの暗いくすんだイメージが覆された。

 「交響曲第7番」について沼尻は”マーラーの病んだ本性がむき出しになった音楽だ”とプレトークで語っていたが、マーラーの中期における器楽交響曲の集大成。第3楽章のスケルツォを中心にして、第2、4楽章の夜曲、両端に行進曲風の楽章が置かれている。第1楽章ではテノールホルンが我が物顔で活躍し、第5楽章では打楽器と金管楽器が入り乱れおもちゃ箱をひっくり返したような騒動になる。
 曲の構成はシンメトリーなのに、全体が一貫した世界観で統一されておらず、異質な楽章がオムニバス的に並んでいる。これが交響曲なのか。分裂症的で、パロディかメタミュージックではないか、と散々に貶される。だけど、アルマが言った“内容を理解する必要など本当はなくて、感じ取るだけで良い。それが分かればマーラーの作品はずっと身近なものになってくる”との言葉に共感する。
 沼尻の「夜の歌」は整理整頓され、節度があり過ぎた。もっとハチャメチャを期待していたのだけど。いや、出会いから数十年が経っている。さまざまな演奏を聴いた。それに、何よりも聴き手が歳をとった。驚きが薄まるのは仕方ないことだろう。

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