アバター2 ― 2023年01月13日 18:55
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
原題:Avatar: The Way of Water
製作:2022年 アメリカ
監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン、リック・ジャッファほか
音楽:サイモン・フラングレン
出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、
シガニー・ウィーバー
驚異の映像美と造形力でみせる3時間、ハリウッドが大金をつぎ込んで本気を出せばこうなります、という典型的な一作。製作費は500億円だという。前作の興行成績が映画史上第1位(約4000億円)だし、ヒットメーカーのジェームズ・キャメロン監督だから、間違いなくモトがとれるということなのだろう。最近のニュースによると、すでに興行収入は2000億円を突破した。
前作は、映画のコンセプトや撮影技術、採算見込みなどに懸念があって、実現まで紆余曲折があった。今回は前作から10年以上経っているが、大ヒット作の続編ということで、コロナ禍の影響を受けつつも企画は円滑に進んでいたようだ。
シリーズは全5部作の構想、それにしても前作からは随分間があいた。キャメロン監督は「人々は、このプロセスの広大さと複雑さをあまり理解していない。アバターは2本半分の大作アニメ映画を作るようなもの。一般的な大作アニメ映画の製作には大体4年ほどかかるので、それを計算すればスケジュールにほぼ沿っている」「すでに続編4本の脚本を書き終えている。キャスティングを行い、2作目と3作目、そして4作目の冒頭部分の演技をキャプチャーした。俳優の演技はほぼ終了している」などと、数年前のインタビュー(Variety参照)で発言していた。
https://variety.com/2019/film/features/avatar-oral-history-james-cameron-zoe-saldana-sigourney-weaver-10-anniversary-1203439501/
たしかに、この映画は実写といえるのかどうか。俳優たちの演技を取り込むモーションキャプチャー方式の全編CG作品で、CGによる惑星パンドラの自然とパンドラの住人ナヴィや動植物が主人公。そのCGのなかを凶悪な機械とともに人間たちが動く。CGアニメと実写の融合みたいなものだ。ちょうど、アバターがナヴィと人間の融合生命体として存在しているように。
そして、映画においてスカイ・ピープルと呼ばれる人間たちは、皆、容赦のない狂暴な破壊者であり、楽園の侵略者として現れる。実際、人間の歴史は戦争と植民地化に明け暮れ、このガイア地球にとっても人間は病原菌並みだから納得せざるをえないが、何の躊躇も葛藤もなく暴れまくるのは救いようがない。人間たちの軋轢や懊悩などは、前作のほうが上手く表現されていたと思う。
それに、アバターである主役のジェイク・サリーの考え方や行動が、今回は身勝手すぎてどうにも共感できない。物語も前作を知っていたほうが分かりやすいものの、とりたてて目新しい筋書きではない。斬新な画像、構想力、物量で観る者を飽きさせないにせよ、やはり3時間はちょっと長すぎる。
今後のCGや3Dの進歩に興味があって、どっぷり映像の美しさに浸かりながら、映画製作の先端技術や最新技法を確かめるには、一連のアバター作品は格好の材料かも知れない。しかし、まぁ、“アバター”の世界観は前作だけでも十分に伝わって来るだろう。続編については、あえて必見と言わず、強くお勧めもしない。