2022/10/13 広上淳一×東京音大 第九2022年10月14日 11:01



東京音楽大学 創立115周年特別演奏会
    オーケストラと合唱 歓喜の歌

日時:2022年10月13日(木) 19:00 開演
会場:サントリーホール
指揮:広上 淳一
演奏:創立記念特別第九オーケストラ
   東京音楽大学合唱団
共演:ソプラノ/金澤 実李、アルト/森河 和音、
   テノール/大石 優希、バリトン/長谷川 陽向
演目:ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調
          作品125「合唱付き」


 雨のなか、それもかなり降っていた昨日の夕方、サントリーホールへ出かけた。
 東京音楽大学の創立115周年記念演奏会である。大小ホールにおいて2日間にわたり9つのプログラムで開催するその一つ、ベートーヴェンの「第九」を聴いた。
 指揮は東京音大教授でもある広上淳一。オケは創立記念の特別編成、付属の高校生も数人参加している。制服姿だからすぐ分かる。ソリスト、合唱団も全員音大生。
 そうそう、2階の客席には14日にショスタコーヴィチを振る予定の尾高忠明が来ていた。

 ホルンの持続音を背景に弦のトレモロではじまる。雨のせいか弦の音に少し潤いが欠けていると感じたが、すぐに気にならなくなった。オケはほぼ14型。
 広上はいつものように、背伸びをしたり、半身に構えたり、万歳をしたり。挙動は派手で、蛸踊りと揶揄する人もいるが、その姿に翻弄されてはいけない。
 リズムは明確でテンポはほとんど動かさない。細心の注意をはらって各パートの音量をコントロールし、音の配分を調整することで色彩を変化させる。そのうえで強調すべき楽器を点描する。
 アダージョなど弦5部がそれぞれの表情を持って驚くほど豊かに聴こえてきた。その響きの上で、木管が思う存分歌う。後半のホルン音階は楽譜の指定通り4番奏者が吹き、ちょっと慎重ながら立派な出来だった。弦・管・打とも、東京音大の実力を示したといってよい。

 広上を聴くと、音楽自体の歩みに毅然としたものがあって、テンポの揺らぎによる一時的な熱狂よりは、構造物がだんだんに組みあがっていくのを目にしているような感動がある。それは、曲全体を通してはもちろんのこと、各楽章ごとにも。若者たちを相手にしたこの「第九」は、記念日にふさわしい好演奏だった。