2024/5/11 ノット×東響 マーラー「大地の歌」 ― 2024年05月11日 18:41
東京交響楽団 川崎定期演奏会 第96回
日時:2024年5月11日(土) 14:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ジョナサン・ノット
共演:ソプラノ/髙橋 絵理
メゾソプラノ/ドロティア・ラング
テノール/ベンヤミン・ブルンス
演目:武満 徹/鳥は星形の庭に降りる
ベルク/演奏会用アリア「ぶどう酒」
マーラー/大地の歌
2024/25シーズン最初のノット監督のプログラムである。
「大地の歌」は6つの楽章をテノールが1,3,5楽章、アルトが2,4,6楽章と交互に歌う。連作歌曲の性格を持つ交響曲といわれる。古典的な交響曲と比べる異形だけど、その堅牢な構成感と作家のこめた強い思いから交響曲とされているのだろう。歌詞は李白、孟浩然、王維などの詩の翻案を使っている。現在では原詩がほぼ特定されている。
この「大地の歌」はノットのマーラー演奏における最良のひとつとなった。彫が深く表情が豊かで濃い。各楽章の描き分けが見事で、長編ドラマを堪能した感じだ。
メゾのドロティア・ラング、テノールのベンヤミン・ブルンスはパーフェクトな歌唱。オケの弦、木管、金管、打楽器も完全無欠な演奏だった。
天地と人の世、「Dunkel ist das Leben, ist der Tod」、孤独と諦念、厭世と悲観、青春と美と酒、そして、「ewig」で別れを告げる。途中、何度が落涙した。
交響曲が世界観、死生観を表現するものであるならば、「大地の歌」はたしかに交響曲であると、ノットが教えてくれた。
前半は「鳥は星形の庭に降りる」と「ぶどう酒」の2曲、マーラーからベルク、武満への繋がりを意識したプログラムなのだろう。「ぶどう酒」はボードレールの歌詞に曲をつけた演奏会用アリアで、ソプラノの髙橋絵理が独唱をつとめた。
ノットは夏に向かうせいなのか髪を極端に短くして登場した。東響のコンマスはニキティン、隣に小林壱成のダブルトップ、いや、ニキティンの後ろにはこの4月にコンマスとなった田尻順が座っていたから、コンマス3人の揃い組だった。
なお、2014/15シーズンより監督に就任したノットは、12年を経て2025/26シーズンを最後に退任する、と先日発表があった。残りあと2年である。