パソコン2022年04月02日 08:23



 愛用のラップトップが壊れた。画面が真っ白になり、操作できなくなった。
 どうやら本体は生きているようだが、ディスプレイが重体で、スタートボタンもマウスポインターも消えてしまうから、シャットダウンさえできない。仕方ないので電源ボタンを長押しして終了させる。再び電源を入れれば立ち上がるものの、しばらくすると画面がフェードアウトして白くなる。この繰り返しである。
 機械ものは叩くと直るという。たしかにフェードアウト中に叩くと元に戻ることがある。多分、本体からデイスプレイへの接続に故障があるのだろう。しかし、このままでは危なっかしくて、いつまでも放置しておくことはできない。
 現下の生活、新聞やTVは観ないし、音盤もほとんど聴かない。Webでニュースを読み、Prime Videoとnetflixで映画を観て、YouTubeとBlue Sky Labelで音楽を聴く。日常の時間の中心がこのラップトップだから不便極まりない。

 新しいパソコンを買うことにした。データを外付けのハードディスクに複写してから機種を選定した。過去使ってきたパソコンは最初だけディスクトップで、そのあとはずっとラップトップ、現在のメーカーはhpである。今度もhpの直販を利用した。
 機種はhpのエントリーシリーズである15s-eq2に決定。CPUはAMD Ryzen5、メモリは8GB、ストレージは512GBのSSD、OSはWindows11。光学ドライブは付属していない。まぁ、CDやDVDは埃を被っているぐらいだし、音も画もNetでほとんど用は足りるから問題はなかろう。
 現行およびその前の機種はPavilionシリーズだったから今回は格落ち、格安機で少し慎ましく。購入時には受注生産のため納期不明でちょっと不安だったが、一週間ほどで無事到着した。

 データを移行し、初期設定で2,3日忙しい思いをしたけど、ようやく支障ない状態になった。初めてのAMD Ryzenはなかなか強力、SSDのストレージも今更ながらに異次元、起動するにHDDで数分かかっていたのが僅か10数秒、モバイルより早い。マルチタスクも全くストレスない。updateも気がつかないうちに終わる。ディスプレイは15.6型IPS液晶で落ち着いた色調。付属スピーカーの音質も想定以上。今のところ快適である。

2022/4/9 秋山和慶×東響 映画音楽2022年04月09日 20:16



オーケストラで楽しむ映画音楽ⅩⅢ

日時:2022年4月9日(土) 15:00 開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:秋山 和慶
共演:ナビゲーター/中井 美穂
   指揮・ピアノ/久石 譲
   ヴァイオリン/三浦 文彰
演目:ジョン・ウィリアムズ生誕90年
   『インディー・ジョーンズ』 レイダース・マーチ
   『シンドラーのリスト』
   『ハリー・ポッターと賢者の石』
         ヘドウィグのテーマ
   『E.T.』 フライング・テーマ
   久石譲 作品集
   『おくりびと』 チェロとオーケストラのための
   『私は貝になりたい』
   『天空の城ラピュタ』交響組曲


 ふだんはオーケストラなどを聴かない2人が、久石譲の映画音楽をナマで体験したい、できれば作曲家本人にも会いたいと。
 それが3カ月ぐらい前のこと。で、このプログラムを見つけ、早速3人分のチケットを入手した。ミューザのホールアドバイザー秋山和慶の人気企画で、知らぬ間に完売公演になっていた。早めにチケットを手配しておいてよかった。

 前半はジョン・ウイリアムズ特集、生誕90年という。ここ数年はウィーンフィルやベルリンフィルを指揮して録音をしている。健在である。
 後半は久石譲の作品集、『おくりびと』と『私は貝になりたい』は秋山さんが指揮、『天空の城ラピュタ』は久石さん本人が振って、ピアノも弾いた。久石さんの指揮は端正で、師匠の秋山さん譲り。図らずも師弟競演となった。
 久石さんは70歳を過ぎ、秋山さんは80歳を超え、ジョン・ウイリアムズは90歳。近頃の老人はみな矍鑠としている。一方、『シンドラーのリスト』と『私は貝になりたい』でヴァイオリンソロを受け持った三浦文彰さんは20代、『おくりびと』でチェロソロを担当した東響の伊藤文嗣さんは30代、ここでは老若共演である。
 ジョン・ウイリアムズも久石譲もメロディー・メーカーであるし、オーケストレーションもこれぞ映画音楽といった両雄だから、親しみやすく楽しい演奏会となった。

山法師(ヤマボウシ)2022年04月12日 08:20



 植えて3年ほど経った小さな山法師をこの2月に移植した。植え替えの適期ではあったが、少々荒っぽく扱ったから上手くいったかどうか不安だった。
 今年の春は、どういうわけか樹々の花や新芽が旺盛で、沈丁花や海棠、満天星はよく花が開き、金木犀や月桂樹、五色南天はよく新芽をつけた。
 そのなかで山法師は沈黙したまま。
 もともと芽吹きの遅い樹ではあるものの随分心配した。ようやく今朝、2、3箇所の見るからに固い冬芽の殻が破れ、柔らかな緑の葉が顔を出した。よく見ると他の芽も灰褐色から薄く黄色に変化している。これから次々と緑葉になってくれるだろう。
 まずは一安心である。しかし、根が傷んでいることは確かで、この先とくに1年は十分用心しなくてはならない。
 花が咲くのは樹がもっと大きくなってからと思うが、名前通りの、僧侶の頭に白い頭巾をかぶったような山法師の花を見たいものだ。

<ヤマボウシ>
 ミズキ科の落葉高木、日本では山地において普通に自生する。アメリカ産の「ハナミズキ」は近縁種。最近では常緑の「ホンコンエンシス」や「ヒマラヤエンシス」なども庭木として流通している。
 落葉の「ヤマボウシ」は、日本の気候風土に合うので育てやすい。明るい新緑、清楚な花、果実、紅葉など四季折々の姿を見せてくれる。放任しても成長が遅く自然に樹形が整う。ただ、樹高は10mにもなるから一定の高さで芯止めする必要がある。

2022/4/17 鈴木雅明×BCJ マタイ受難曲2022年04月18日 11:01



バッハ・コレギウム・ジャパン 
 J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244

日時:2022年4月17日(日) 16:00 開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:鈴木 雅明
共演:ソプラノ/ハナ・ブラシコヴァ、中江 早希
   アルト/ベンノ・シャハトナー、青木 洋也
   エヴァンゲリスト/トマス・ホッブス
   テノール/櫻田 亮
   バス/加耒 徹、渡辺 祐介
   合唱・管弦楽/バッハ・コレギウム・ジャパン
演目:J.S.バッハ/マタイ受難曲 BWV244


 無人島へ1曲だけ持って行けるとするなら、バッハの「マタイ受難曲」を選ぶだろう、といったのは吉田秀和だった。リヒターだったかクレンペラーだったか、それとも演奏者については触れていなかったのか、思い出せないけど。
 海に投げ出され死を覚悟した刹那、バッハの「シャコンヌ」を幻聴した、と吉田満は『戦艦大和ノ最期』に書いた。
 神が好む音楽はバッハでなくモーツァルトだ、と誰かが言っていたが、人が究極の選択をするとき、生死の境を彷徨うとき、聴こえて来る音楽はバッハなのかも知れない。

 ふだん、バッハの音楽を生ではあまり聴くことがない。音盤でも「無伴奏チェロソナタ」か「平均律クラヴィーア曲集」くらい。でも、「マタイ受難曲」だけは選んで聴いてきた。
 むかしは、ライプツィヒの聖トーマス教会合唱団とゲヴァントハウス管弦楽団が定期的に来日し、ほとんど毎回「マタイ」を公演した。これに何度か足を運んだ。LGOといえばカール・ズズケの前にコンサートマスターを長く務めていたゲルハルト・ボッセが、晩年、奥様が日本の方ということもあったのだろう、日本に在住し後進を指導しつつ指揮者としても活躍していた。いつだったか鎌倉芸術館で新日フィルを振った「マタイ」が素晴らしかった。直近では2016年に管弦楽も合唱も少人数で演奏したクイケン&ラ・プティット・バンドを聴いた。
 6年ぶり、復活祭の、鈴木雅明×BCJによる「マタイ受難曲」である。

 鈴木雅明の「マタイ」は硬軟とりまぜ、厳しさと優しさを使い分け物語を紡ぐ。第1部の受難告知から捕縛までは淡々と語り、第2部の審問から磔刑、安息までは極めて劇的に描いた。
 弦は1群、2群ともヴァイオリン各3+3、ヴィオラ2、チェロとヴィオローネがそれぞれ1、コンマスは1群が若松夏美、2群が高田あずみ、第2部からは福沢宏のヴィオラ・ダ・ガンバが加わった。管はフラウト・トラヴェルソ系、オーボエ系が各2、1群、2群共用のファゴット1の編成。オルガンは大塚直哉と中田恵子、コンティヌオ・オルガンが多彩な音を出していた。プログラムノートのメンバー表には記載されていなかったが、鈴木優人もチェンバロで参加していた。帰国早々で急遽出演が決まったようだ。
 ソリストは合唱を兼務し、4声部は1、2群とも各3で12+12の24、リピエーノも合唱団のメンバーが担当した。
 エヴァンゲリストはトマス・ホッブス、大昔の哲学者と同姓同名だが、近寄りがたい雰囲気はなく、むしろ声は軽めで明晰。知的に冷静に語っていくのだけれど、ペテロ否認の場の「外に出て、激しく泣いた」と、十字架上のイエスの言葉を繰り返す「神よ、神よ、なぜわれを見捨てたか?」の2箇所ではやはり感情が迸る。ここはいつもながら涙が止まらない。
 加耒徹のイエスは若々しく鮮やかでありつつも、とくに「エリ、エリ、レマ、アザブタニ」の苦悩から、大詰め間際のアリア「私の心よ、おのれを清めよ」の癒しまで全くもって完璧、見事なイエスを聴かせてもらった。
 有名なアルトのアリア、ペテロ否認のあとの「憐れんでください」と、ピラトがバラバを釈放しイエスを引き渡した直後の「頬をつたう涙」は、2人のカウンター・テナーであるベンノ・シャハトナーと青木洋也が歌った。ここは固定観念のせいか女声の艶を求めてしまったのは、好みだから仕方あるまい。

 遠い国のことではあっても戦争の時代に聴く「マタイ」である。
 人であるかぎり罪を犯すことは避けられない。ユダは裏切り、ペテロは嘘をつく。民は証拠のないまま善なる者を十字架につける。「死に値する」と叫び、唾を吐きかけ、こぶしで殴り、平手で打つ。バラバとイエスのどちらを釈放するか、というピラトの問いに、群衆は「バラバ!」と熱狂し、イエスを「十字架につけよ」と要求する。
 人間はどこまでいっても熱に浮かされ同じことを繰り返す。どうあっても罪を逃れることはできない。だからこその信仰なのだろう、祈るしかない。
 J.S.Bachの「Matthaus Passion」、稀有の音楽である。

2022/4/19 石田泰尚 春、そしてクライスラーとピアソラ2022年04月19日 14:15



神奈川フィル “ブランチ”ハーモニー in かなっく

日時:2022年4月19日(火) 11:00 開演
会場:かなっくホール
出演:ヴァイオリン/石田 泰尚
   ピアノ/中島 剛
演目:ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ 第5番
                へ長調「春」op.24
   クライスラー/美しきロスマリン
   クライスラー/愛の悲しみ
   クライスラー/テンポ・ディ・メヌエット
   ピアソラ/オブリビオン(忘却)
   ピアソラ/フラカナーパ
   ピアソラ/リベルタンゴ


 神奈川フィルハーモニー管弦楽団主催のランチタイムコンサートが、かなっくホールにて偶数月に開催されることになった。
 従来から、かなっくホールでは昼の1時間を使って、ほぼ毎月ランチタイムコンサートが企画されていた。今年度はここに神奈川フィルメンバーのコンサートが相乗りするのだろう。
 第1回は神奈川フィルの“顔”である首席ソロコンサートマスター石田泰尚の登場。石田組を率いてではなく、ヴァイオリン・リサイタル。ピアノは長年コンビを組んでいる中島剛さん。さすが石田さんの人気は高く、チケットは早々に完売となった。
 かなっくホールは定員300席の味も素っ気もない空間だが、JR東神奈川駅、京急東神奈川駅(旧 仲木戸駅)直結で便利が良い。

 さて、石田さんのリサイタル。
 おなじみの髪型、眼鏡、太めのパンツ…ちょい悪の容姿と素振り、ときにシャイな立ち居振る舞い。ぱっと見にはその筋の人にも見えなくはないが、出てくる音の美しさといったら唖然とするほど。その落差の大きさが魅力。
 「春」の最初の一音で石田ワールドに引き込まれる。落ち着いた息遣いと確かな技巧に惚れ惚れする。「スプリング・ソナタ」はアレグロ、アダージョ、スケルツォ、ロンドというまるで交響曲のような構成。さわやかで、抒情ゆたかに、弾むように、駆け抜ける、それぞれの楽章を描き分けていく。第2楽章などこんなにしみじみとした曲だったのか、と見直すくらい。
 次いで、クライスラーの馴染みの3曲、洒落たウィーンの舞曲という雰囲気を醸し出し、ほっこり。この春の季節に不思議とお似合いだ。
 終わりは、得意のピアソラのタンゴ。「オブリビオン」のけだるさ、「フラカナーパ」の激情、「リベルタンゴ」の鮮烈。特殊奏法を駆使して会場を熱狂の坩堝に放り込んだ。 
 たしかに、満員の300人の聴衆は、いまにも大声をあげそうで、しばらくどよめいていた。もちろん盛大な拍手が続き、アンコールは「追憶」と「ジェラシー」。
 2曲のアンコールのあとも猛烈な拍手は止みそうになく、司会者が収めてお開き。充実の1時間だった。
 まさしく石田泰尚は、神奈川フィルの至宝だな。