2022/4/19 石田泰尚 春、そしてクライスラーとピアソラ2022年04月19日 14:15



神奈川フィル “ブランチ”ハーモニー in かなっく

日時:2022年4月19日(火) 11:00 開演
会場:かなっくホール
出演:ヴァイオリン/石田 泰尚
   ピアノ/中島 剛
演目:ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ 第5番
                へ長調「春」op.24
   クライスラー/美しきロスマリン
   クライスラー/愛の悲しみ
   クライスラー/テンポ・ディ・メヌエット
   ピアソラ/オブリビオン(忘却)
   ピアソラ/フラカナーパ
   ピアソラ/リベルタンゴ


 神奈川フィルハーモニー管弦楽団主催のランチタイムコンサートが、かなっくホールにて偶数月に開催されることになった。
 従来から、かなっくホールでは昼の1時間を使って、ほぼ毎月ランチタイムコンサートが企画されていた。今年度はここに神奈川フィルメンバーのコンサートが相乗りするのだろう。
 第1回は神奈川フィルの“顔”である首席ソロコンサートマスター石田泰尚の登場。石田組を率いてではなく、ヴァイオリン・リサイタル。ピアノは長年コンビを組んでいる中島剛さん。さすが石田さんの人気は高く、チケットは早々に完売となった。
 かなっくホールは定員300席の味も素っ気もない空間だが、JR東神奈川駅、京急東神奈川駅(旧 仲木戸駅)直結で便利が良い。

 さて、石田さんのリサイタル。
 おなじみの髪型、眼鏡、太めのパンツ…ちょい悪の容姿と素振り、ときにシャイな立ち居振る舞い。ぱっと見にはその筋の人にも見えなくはないが、出てくる音の美しさといったら唖然とするほど。その落差の大きさが魅力。
 「春」の最初の一音で石田ワールドに引き込まれる。落ち着いた息遣いと確かな技巧に惚れ惚れする。「スプリング・ソナタ」はアレグロ、アダージョ、スケルツォ、ロンドというまるで交響曲のような構成。さわやかで、抒情ゆたかに、弾むように、駆け抜ける、それぞれの楽章を描き分けていく。第2楽章などこんなにしみじみとした曲だったのか、と見直すくらい。
 次いで、クライスラーの馴染みの3曲、洒落たウィーンの舞曲という雰囲気を醸し出し、ほっこり。この春の季節に不思議とお似合いだ。
 終わりは、得意のピアソラのタンゴ。「オブリビオン」のけだるさ、「フラカナーパ」の激情、「リベルタンゴ」の鮮烈。特殊奏法を駆使して会場を熱狂の坩堝に放り込んだ。 
 たしかに、満員の300人の聴衆は、いまにも大声をあげそうで、しばらくどよめいていた。もちろん盛大な拍手が続き、アンコールは「追憶」と「ジェラシー」。
 2曲のアンコールのあとも猛烈な拍手は止みそうになく、司会者が収めてお開き。充実の1時間だった。
 まさしく石田泰尚は、神奈川フィルの至宝だな。