楽の匠2021年09月23日 08:35



書 名:『楽の匠 クラシックの仕事人たち』
著 者:大山 真人
刊行年:2005年
出版社:音楽之友社

 ここでいう“楽”とは、作曲家であるとか演奏家であるとか、いわゆる音楽家のことではない。舞台に上がる音楽家のために、様々な技術を提供する人たちの話である。

 登場人物は13名。まずは作曲家や演奏家が使う楽器(ギター、チェンバロ&クラヴィコード、弦楽器、金管楽器)の製作者たち。作曲家と演奏家の橋渡しをする写譜屋。歌手に練習をつけるコレペティトゥア。オペラや演劇の衣装家と舞台に立つ演奏家たちへのレンタル衣装サービス。オペラなどの字幕製作者と字幕指揮者。ホールの音響設計者や音楽放送のプロデューサー。そして、聴衆に一番密接しているというチラシ・リーフレット配布業である。

 もともとは『音楽の友』誌上に「クラシックのお仕事!」と題して連載された。毎年、かなりの数の音大生が世に出るが、作曲家とか演奏家になれるのは、音大卒業生のうちのほんの一握り。大半は音楽とは無縁な職業に就く。音楽ではメシは食えぬ、たとえ好きなことであっても、というわけだ。それがもったいない、音大で得た技術や知識を活かせる職場を紹介したいという意図があったという。

 本書は、雑誌連載時の“就職のため”という内容を薄め、“匠の技”に絞り、13人を改めてピックアップし、再取材してまとめられた。ステージ裏でアーティストたちを支える職人たちの技術や生きざまが紹介されている。
 人は音楽を必要とする。奏でることではなく、音楽の周辺で、その音楽のために尽くす人たちの、これは物語である。

 今日は「秋分の日」、秋彼岸の中日、「秋季皇霊祭」。此岸と彼岸が最短になるから、先祖を供養する日。
 今年は墓参りに行けないので「おはぎ」だけでもお供えしようと思っている。いや、殊勝なことをのたまっても、たんに自分が「おはぎ」を食べたいということだけど。

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