2021/8/9 原田慶太楼×東響 フィナーレコンサート2021年08月09日 21:04



フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021
 東京交響楽団 

日時:2021年8月9日(月)15:00
場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:原田慶太楼
共演:カルテット・アマービレ
演目:ヴェルディ/歌劇「アイーダ」
     凱旋行進曲とバレエ音楽
   かわさき=ドレイク・ミュージック アンサンブル/ 
     かわさき組曲~アイーダによる(世界初演)
   ジョン・アダムズ/アブソルート・ジェスト
   吉松 隆/交響曲 第2番「地球(テラ)にて」

 8月7日は立秋。暦の上では秋、実際は一年で最も暑い時期。しかし、もうひと山越えれば、すぐに秋の気配を感じることができるようになるだろう。
 そして、きのう8日、ウーハンコロナによる戦時下、東京オリンピックが無事閉幕した。颱風も期間中3つ4つ、危うかったが直撃は避けられた。
 選手たちの頑張りと獲得したメダルは賞賛に値する。元気を与えてもらった。それ以上に、大事なく平穏に終えることができたことに感謝しよう。あとは、24日からのパラリンピックを安全に、と祈りたい。

 コンサートもウーハンコロナのせいで、来日できない演奏家が頻発し混乱している。代役の指揮者が大活躍しているのは周知のことだけど、その中で最も目立っているのは、日本人では原田慶太楼、海外組ではカーチュン・ウォンではなかろうか。二人ともそれまでは余り知られていなかったから尚更そう感じる。
 二人はほぼ同い年で30代半ば。首都圏のほとんどのオーケストを席巻し、演奏会後の評判もとても良かった。原田慶太楼は、17歳で渡米したあと凱旋してこの獅子奮迅ぶり。東響の事務局は目利き(耳利き?)がいる、手早く正指揮者に据えた。カーチュン・ウォンは、奥様が日本の方で居住の不自由もないので、往来も可能であったようだ。
 両者のtwitterが失礼ながら暇つぶしに丁度いい。原田慶太楼のtweetは豊富な情報、カーチュン・ウォンはほとんどが食べ物に関する呟きで微笑ましい。

 https://twitter.com/KHConductor
 https://twitter.com/kahchun_music

 さて、「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021」もオリンピックの閉幕を追いかけるように、今日9日が最終日。原田慶太楼×東響のフィナーレコンサートである。
 原田慶太楼は初めて聴く(カーチュン・ウォンとは2度出会ったが相性が悪い、しばらく時間を置いてから聴き直そうかと)。

 プログラムの最初は、ヴェルディの歌劇「アイーダ」から凱旋行進曲とバレエ音楽。
 さすがホームグラウンドのオケ、ホールの響きを知悉している。各楽器が明瞭に分離しながら、バランスよく響き合う。原田の指揮もスマート、観ているだけで気持ちよい。

 次いで“凱旋行進曲”にインスパイアされて作曲された「かわさき組曲」。
 英国のアート団体ドレイク・ミュージックと日本の音楽家が連携しながら、川崎市内の特別支援学校の障害を持つ生徒たちとワークショップを重ね、オリジナルの音楽を創造するというプロジェクトから生れた曲という。制作過程が映像で紹介された。東響のメンバーも参加している。優しく色彩一杯な音楽で、愛情のこもった演奏だった。

 休憩後、ジョン・アダムズの「アブソルート・ジェスト」。
 “絶対的冗談”…“まったくのシャレ”と題されたベートーヴェン音楽をネタにした作品。交響曲や弦楽四重奏曲の断片が絡み合うミニマム・ミュージック。ベートーヴェンの魅力のひとつであるリズムを抜き出し強調し興奮を高めていく。聴いたことのあるフレーズが通り過ぎ、打楽器やピアノが現代音楽らしく叩き続ける。小集団と集団との音響の対比が恰好いい。カルテット協奏曲と呼ぶべきか、こういう組合せは珍しい。カルテット・アマービレは今後注目すべき四重奏団だ。

 フィナーレは吉松作品「地球(テラ)にて」。
 交響曲2番にあたるから、30年ほど前の作品。初演当初は演奏時間の関係で東・西・南の3楽章構成だったが、その後、21世紀に入ってカットされていた北を復活させ、東・北・西・南の4楽章からなるレクイエムが完成した。これはアジア、北の大陸、ヨーロッパ、アフリカ、それぞれの地における鎮魂歌だという。このうち南が東京オリンピック開会式、聖火の点火シーンで使われた。
 第1楽章のアジアに日本的節回しが現れるのは当然だが、第2楽章以降の北の大陸、ヨーロッパ、アフリカの各楽章にも和のテイストを感じて懐かしさを覚えるのは何故なのか。演奏は緊張をはらみ哀愁を帯びつつも痛快。チェロのソロと二重奏、弦の四重奏と八重奏、コントラバスの合いの手、絶え間なく鳴らされる打楽器など聴き処が満載。原田は吉松の全交響曲を演奏したいと言っている、今後が楽しみだ。

 「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021」、とりわけ、このフィナーレ演奏会は、もちろん意図したものではなく偶然だとしても、結果的には「かわさき組曲」によってパラリンピックにエールをおくり、「地球(テラ)にて」によって東京オリンピックを顧みることになった。
 今年も夏祭りが終わった。

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