2023/9/16 佐久間聡一+安斎拓志×ユーゲント・フィル ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」2023年09月16日 21:41



ユーゲント・フィルハーモニカー 第4回特別演奏会

日時:2023年9月16日(土) 13:30開演
場所:神奈川県立音楽堂
指揮:安斎 拓志
共演:ヴァイオリン/佐久間 聡一
演目:ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲
   ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調Op.61
   メンデルスゾーン/交響曲第3番 イ短調
          「スコットランド」Op.56


 目当てはヴァイオリンの佐久間聡一。桐朋学園在学中より新日本フィルの契約団員を務め、その後、大阪フィルの首席奏者。大阪フィル退団後はドイツで研鑽を積み、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンに客演。帰国後、広島交響楽団第1コンサートマスターとして昨年まで在籍し、現在はソリスト、室内楽奏者(「弦楽トリオAXIS」「石田組」メンバー)、客演コンマスなど活躍の幅を広げている。また、新設のジャパン・ジェネラル・オーケストラの立ち上げでは、中核として若手奏者を牽引していた。
 弦楽トリオAXISの「ゴルトベルク変奏曲」は感動的な演奏だった。神奈川フィルのゲストコンマスも2.3度聴いている。公開中のYouTubeでは真面目なのかふざけているのか、ヴァイオリンの巨匠たちのモノマネを披露していて頗る面白い。飄々としてどこか憎めない脱力系のアーティストだ。

 ユーゲント・フィルは財団法人「日本青年館」の音楽イベントに参加したメンバーが中心となり2006年3月に創設されたアマオケ。指揮の安斎拓志はユーゲント・フィルの創設者にて音楽監督。ただし、過去十数回を数える定期演奏会で安斎が振ることはなく、演奏会ごとに客演指揮者を招聘している。安斎は特別演奏会において指揮をしているようだ。安斎と佐久間は高校時代からの友人だという。

 ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲からスタート。「夜明け」「嵐」「静けさ」「スイス軍の行進曲」の4場面から構成される。安斎の指揮は歯切れがよく、オケも元気一杯で若々しい。各楽器がバランスよく鳴る。音楽堂の響きに改めて感心する。演奏会の開幕に相応しい一曲だった。

 佐久間聡一が登場してベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」。佐久間はヴィルトゥオーソ然としてガンガン弾くのでなくて、一音一音慈しむように穏やかに進めて行く(最終楽章のカデンツァだけは強烈なスピードと熱量だったけど)。とりわけ第2楽章を細やかに表情豊かにじっくり聴かせた。第1楽章の再現部の手前、哀愁を帯びたヴァイオリンソロにファゴットが絡むところなども極めて印象的な音楽となっていた。
 ソリストアンコールは弦楽合奏と一緒に「弦楽四重奏曲第13番」第5楽章(カヴァティーナ)。

 後半はメンデルスゾーンの「スコットランド」。これは期待以上の仕上がり。佐久間もコンマスの隣のトップサイドに座り、オケをリードしていた。たしかに弦は一段と集中力が高くなった。安斎の音楽は物語を読み聴かせるようでなかなか見事。荒れ果てた古城、寒々しい波のうねりが目に見え、スコットランドの舞曲が流れ、民謡風のメロデイも聴こえる。最後は壮大な讃歌で全曲が結ばれた。

 拍手が止まずもう一曲。アンコールは「交響曲第5番」<運命>の最終楽章。創設者にて音楽監督とオケとの長年の関係だもの息はぴったし。「スコットランド」を上回るほどの盛り上がりだった。2時間半に及ぶ演奏会が御開きとなった。

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