2025/1/19 ソヒエフ×N響 ショスタコーヴィチ「交響曲第7番」 ― 2025年01月19日 19:01
NHK交響楽団 第2028回 定期公演 Aプログラム
日時:2025年1月19日(日) 14:00 開演
会場:NHKホール
指揮:トゥガン・ソヒエフ
演目:ショスタコーヴィチ/交響曲第7番 ハ長調
作品60「レニングラード」
毎年のようにN響に客演しているソヒエフだけど聴くのは二度目。前回の演奏はまぁまぁ覚えている。5,6年前にサントリーホールで「シェヘラザード」と「シンプル・シンフォニー」、それともう1曲、これは思い出せない。
当日は優秀なN響が快適なホールで華麗な音楽を披露してくれた。演奏会後の評判も概ね良かったと思う。ただ事前の期待が大きすぎたせいか決定打というには物足りなくて、結局その後は聴かずじまいになっていた。
今回はショスタコーヴィチの一本勝負ということだから、久しぶりにソヒエフ×N響を聴いてみることにした。
ソヒエフの「レニングラード」は灰色に塗りこめられ狂気を孕んだ音楽ではない。様々な色彩を放ちながら正気を見失わない音楽のように思えた。重戦車が轟音をたてて進軍するとか砲弾や銃弾が飛び交う景色よりは、むしろ、悲しみを抱きつつ祈りを捧げる巡礼の歩みを想起させた。とりわけアダージョの風景はまさに祈りの行列そのものだった。
ソヒエフは全体に金管を抑え気味にし弦の美しさを際立たせていた。最終楽章の結びだけは勝利を確信させるような高揚をみせたけど、あえて戦争に絡めたメッセージ性を廃し、純粋に音楽に徹する潔さがあった。ソヒエフは自らの主義主張をことさら押し付けるのではなく、オケの美点を見い出し最良のものを引き出そうとする指揮者なのだろう。
N響はその機能性を十二分に発揮し、ソヒエフとの相性もあって見事な演奏を繰り広げた。ソリストではないコンマスの郷古廉は初めてみたが、弦16型の巨大なオーケストラのリーダーとしても絵になっていた。