飯守泰次郎2023年08月18日 12:57



 朝比奈隆と山田一雄は、活躍の中心がそれぞれ大阪と東京であったため、両御大に心酔していた地方の好事家は、二人の数少ない機会をみつけて演奏会に通っていた。
 同じころ飯守泰次郎が名フィルの指揮者に就任し、その後常任となった。名前も顔もほとんど知らなかったが、ときどき定期公演を聴くことになる。
 ベートーヴェン、ブラームスの作品など、情熱的で重量があって腹に落ちる音楽だった。この人は特別な音楽家かも知れないと思った。ある日、演奏会形式のワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を聴いて、その思いは確信へと変わった。

 ワーグナーといえば、シティフィルの常任になってからの「ニーベルングの指環」。「オーケストラル・オペラ」と銘打ち上野の文化会館にて2000年から4年がかりで公演した。「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」は東京勤務のときだ。「神々の黄昏」は転勤をしていたから新幹線で駆け付けた。その演奏をいまだに細部まで思い出すことができる。
 ブルックナーも名演ばかりだった。アマチュアの新響を振った「交響曲第8番」。手兵シティフィルとの「交響曲第5番」。金管の大事故があったけど、それ以上の感銘を与えてくれた。
 そして、最後の舞台となった4月のサントリーホールにおける「交響曲第4番」、意表をつかれるほど若々しい音楽だったのに。このときのコンマス荒井英治をはじめとするシティフィル楽団員の献身ぶりも忘れられない。

 飯守泰次郎、享年82歳、2023年8月15日急性心不全のため逝去。ヤマカズや朝比奈を喪ったときのように悲しい。

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