2022/3/23 川瀬賢太郎×OEK ショパンとメンデルスゾーン2022年03月24日 10:07



オーケストラ・アンサンブル金沢 第38回東京定期公演

日時:2022年3月23日(水) 19:00 開演
会場:サントリーホール
指揮:川瀬 賢太郎
共演:ピアノ/亀井 聖矢
演目:杉山洋一/揺籃歌(自画像II)
   ショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
   メンデルスゾーン/交響曲 第3番 ホ短調 作品56
           「スコットランド」

 
 この3月で神奈川フィルの常任指揮者を退任する川瀬賢太郎は、次年度、札響の正指揮者に就任する。すでに名古屋フィルの正指揮者、OEKの常任客演指揮者のポストにあり、今回、そのOEKを率いて東京公演を行った。

 OEKの東京公演は、過去に2度か3度聴いたことがあるが、いずれも指揮者と演目を全く思い出せない。物忘れがひどくなっている。しかし、考えてみると記憶に残っている演奏会など数えるほどしかない。指揮者を忘れるか、演目を忘れるか、OEKのように両方とも忘れてしまうか、演奏会へ行った記憶さえ飛んでしまっていることもあるかも知れない。記憶などその程度のものだと慰めても、ショックではある。

 気を取り直して川瀬×OEKを聴く。このたびは生年・没年がほぼ同じショパンとメンデルスゾーンの作品を演奏した。
 「ピアノ協奏曲 第1番」のソロは、桐朋の3年在学中という亀井聖矢、粒立ちのはっきりした輝かしい音。ピアノ、オケともショパンらしく旋律は甘いけど、音楽は引き締まって若々しい。
 「スコットランド」は、全体に重く暗く沈鬱なイメージがある曲だが、川瀬×OEKはメリハリのきいた躍動的な音楽をつくった。熱く激しい音が飛び交うさまは、先日聴いた高関×シティフィルとは随分受ける印象が違った。
 作曲家の杉山洋一は、OEKのコンポーザー・オブ・イヤーに就いている。OEKの委嘱作品である「揺籃歌」は、あえて美しい音を封じ込めたような歌。二度目を聴きたくなるような曲ではない。

 弦5部の編成は8-6-4-4-3で対向配置。コンマスはアビゲイル・ヤング、何もかも忘れていたOEKではあっても、彼女の記憶だけは蘇ってきた。木管も金管も取り立てて特徴はない。東響の大野さんがホルンの3番に客演していた。
 今回、何度目かのOEKを聴いて、首都圏のオケの中に置いたとき、どうしてもOEKでなければというものを見出すのがなかなか難しい。特別な魅力が見えにくいと感じた。それが記憶に留まらない理由のひとつであるのかも知れない。