ゲルギエフとマツーエフ、そしてネトレプコ2022年03月14日 17:14



 ウクライナ問題でロシアへの非難の声が大きくなっている。批判の矛先は政治と直接関係ない音楽の世界にも向けられ、欧米ではロシア人というだけで、明らかな差別が公然と横行しているようだ。

 ゲルギエフがミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者の職を解かれ、スイスの音楽祭の音楽監督も解任された。ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団も関係を停止するという。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニューヨーク公演は降板させられ、ソリストのマツーエフも交代した。ミラノ・スカラ座にも出演できなくなった。フィルハーモニー・ド・パリはマリインスキー劇場管弦楽団の公演中止を発表した。ゲルギエフはプーチン大統領と親しい関係にあるからだという。
 ソプラノのアンナ・ネトレプコも、メトロポリタン・オペラで今シーズン及び来シーズンの公演を拒否された。プーチン大統領と公に距離を置くのを拒んだ結果だという。

 敵対国の指導者の非道に腹を立てるのは当然としても、その国の人間というだけで政治的立場を無理やり表明させ、そうでなければ迫害して構わないと考えるなど異常というしかない。かの国は悪だと決めたら、その国の国民を不当に扱っていいという精神こそがおかしい。いかにも自分らは正義に満ちた国々であるという態度を誇示するために、ロシアの音楽家たちを虐待しているようなものだ。

 幸いわが国では、この10日~13日、ミハイル・プレトニョフが来日し、東フィルの定期公演を振ったという。予定通り無事開催されて良かった。