2021/6/27 飯守×東響 ブルックナー「交響曲7番」 ― 2021年06月27日 19:43
東京交響楽団 川崎定期演奏会 第80回
日時:2021年6月27日(日)14:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:飯守 泰次郎
共演:ハープ/吉野 直子
演目:ライネッケ/ハープ協奏曲 ホ短調 op.182
ブルックナー/交響曲第7番 ホ長調
(ノーヴァク版・1954年版)
フランスの指揮者がブルックナーをどう演奏するのか注目していた。もっともド・ビリーは、長くウィーン放送交響楽団の監督を務め、ドイツものを含めてレパートリーは広い。10年ほど前N響を振ったときも、ドビュッシー「牧神」、ファウストとのプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲1番」、シューベルト「グレイト」という具合。その後は聴く機会がなく、久しぶりの再会予定だったが、このご時勢やはり来日中止。
代役は、なんと飯守泰次郎。プログラムは変更なし。飯守のブルックナーは、この先1回1回が貴重。朝比奈の晩年と同じだろう。来月も読響でマイスターに代わって「4番」を振る。
さて、今日の「7番」は一言でいえば“静”のブルックナー。音量が不足するとか、強弱の幅が狭いとかではない。逆にこれほどの音量、強弱の振幅がありながら、動くことのないブルックナー。
効果を狙ったり、表現をどうこうしようとしたり、そんな雑念には一切関係なし。静寂を極める音楽の中から巨大なものが立ち上がってくる。特に1楽章と最終楽章のコーダは頭の中が空白になるほど。たしかに宇宙の鳴動を感じた。
飯守のブルックナーは、シティフィルと組むと武骨で古武士のごとく、一歩一歩踏みしめて行くような音楽として聴こえてくるが、今回の相手は東響である。
以前、シティと東響とで飯守のシベリウス「2番」を聴き比べる機会があり、東響との相性は今ひとつと思ったが、今日の東響は、弦の強靭な響、木管の透明感が一段と冴えわたり、素晴らしいアンサンブルで応えた。
フルートの相澤さん、オーボエの荒木さん、クラリネットの吉野さん、バスーンの福井さん、いずれも名人芸。ブルックナーで要のホルンは、ハミルが復活したのが大きい。1番をハミル、3番を大野さん、ワグナーチューバのトップを上間さん、と鉄壁の布陣。コンマスの水谷さんは、合奏のかなりをリードしていた。何せ、飯守の指揮は分かりにくい。もちろん、音楽の設計、楽器間のバランス、テンポ、ディナーミク、アゴーギクなどは飯守あってこそだから、指揮者にオケが有機的に反応したといっていい。重厚でありながら洗練されたブルックナーとなった。
プログラム前半のライネッケは1824年生まれ、ブルックナーと同い年。長寿で20世紀のはじめまで生きた。1000曲以上を作曲したようだが、今では演奏家のレパートリーからほとんど消えている。
「ハープ協奏曲」の出だしは、ごく普通のロマン派風の進行。1楽章のカデンッアは聴きごたえがあり、カデンッアの終盤に絡むオーボエに意表をつかれる。2楽章は冒頭ホルンとの掛け合いをはじめ、管が沈黙するなかのヴィオラとのやりとりなど全編が美しい。はじめて聴く曲だが、来日できなかったメストレに代わった吉野さんのハープと、東響の緻密な演奏で楽しませてもらった。
なお、今回の演奏会は、ニコニコ動画でライブ配信され、ブルックナーの「交響曲7番」のみ28日よりタイムシフト視聴できる。
https://live.nicovideo.jp/watch/lv332263124