2023/3/12 和田一樹×ASO マーラー交響曲第6番2023年03月12日 21:20



アマデウス・ソサイエティー管弦楽団 第58回演奏会

日時:2023年3月12日(日) 13:30開演
場所:東京芸術劇場コンサートホール
指揮:和田 一樹
共演:ヴァイオリン/﨑谷 直人
演目:ブリテン/4つの海の間奏曲
   モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番
   マーラー/交響曲第6番「悲劇的」


 アマデウス・ソサイエティー管弦楽団は、30年ほど前に慶應義塾大学ワグネル・ソサィエティー・オーケストラの卒業生を中心に結成されたアマオケで、近年はワグネル以外のメンバーが集い、大きな編成の曲にも挑戦しているという。で、今回のメインはマーラーの大曲「交響曲第6番」。
 和田一樹は、プロオケを振ることも多い指揮者だが初聴き。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の共演は﨑谷直人、最近まで神奈川フィルのコンマスを10年近く務めていた。今はソロ活動とウェールズSQでの仕事が中心のようだ。

 プログラムの最初は、ブリテンの「4つの海の間奏曲」。昨年はじめにも高関×シティフィルで聴いている。歌劇「ピーター・グライムズ」の幕間音楽。「夜明け」からはじまり、「日曜の朝」や「月光」といったスケルツォやアダージョに相当するような間奏曲が含まれている。それぞれを明確に描き分けないと面白くない。それに最後の「嵐」などはもっと興奮させてくれてもいい。全体に平板で起伏に乏しく熱量も物足りなかった。

 次いで、編成を小型にしてモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲第4番」。
 モーツァルト20歳直前の時期、ヴァイオリン協奏曲が集中的につくられている。このあと、父およびザルツブルクとの決別の端緒となったパリ旅行を経て、アマデウスは心身ともに独立する。以後、ヴァイオリン協奏曲を書くことはなかった。理由は分からない。
 﨑谷さんは、もともと音の線が細く音量もそれほどでもない。繊細なモーツァルトを期待したが、楽想の変わり目がちょっとギクシャクして不自然。バックのオケも終始ボソボソと呟いているようで鈍く弾まない。モーツァルトの音楽が疾走することなく愉悦もないとなれば苦痛が残るだけ。どうにも具合が悪い音楽だった。

 休憩後、マーラーの「交響曲第6番」。
 「悲劇的」とも呼ばれる。もっとも本人が名づけたものではない。「運命」と同じで、あまり標題に捉われる必要はない。5管編成プラス巨大な打楽器軍団、マーラーの中期の頂点に位置する作品だろう。
 今日の演奏順は、国際マーラー協会の最終決定に従い、アダージョ、スケルツォの順、3楽章と4楽章はアタッカだった。演奏順に好みはないし、どちらでも楽しめるけど、この順で演奏すると佇まいとしてはいかにも古典的。編成は巨大で響きは近代的であっても、マーラーの曲の中では一番ベートーヴェンを意識させる。「悲劇」というよりは「闘争」、純然たる器楽曲によって言い知れない激情が喚起される。
 和田さんの音楽は、俄然表情が濃厚になったが、マーラーの交響曲を美しく聴かせることは難しい。どうしても物量頼みの虚仮威しのようになってしまう。魁偉ながら美しい姿が隠されているマーラーへの登攀は、アマオケにとってなかなか困難な道である。

 途中20分間の休憩を含めて演奏会は3時間に及んだ。マーラー1曲のみでオケの真価を問えばよかったと思う。少々疲れた。

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