鏑木清方 展「さしえ、華やかなりし頃」2021年04月08日 13:55



 鎌倉駅から小町通りを10分くらい歩いて左に折れると、鏑木清方の旧居跡に記念美術館が建っている。閑静な住宅地の中にある和風造りの建物で、住所は雪の下一丁目にある。
 ここで「さしえ、華やかなりし頃」という企画展が開催されている。
 清方は、「口絵でも、挿絵でも、共に華やかな時代だった」と、随筆『こしかたの記』で振り返っているらしい。明治から大正にかけて、雑誌や書籍には、今でいう写真の代わりなのか、口絵や挿絵が盛んに取り入れられた。
 清方も若いころ口絵や挿絵をたくさん描いており、その作品数十点が展示されている。雑誌『文藝倶楽部』や小栗風葉『麗子夫人』の木版口絵、樋口一葉『にごりえ』の挿絵などである。
 清方は“華やかな時代”といっているが、清方の絵そのものは、線も色彩も淡く、しっとりとして柔らかい。構図は、特に挿絵は、物語の一場面を切り取るように動きがあって、風俗画のようにも見えるが、登場人物の心象まで想像されて、その描写力に驚く。
 企画展は11日の日曜日まで。