『レコード芸術』が復刊――Web版 ― 2024年07月25日 14:06
昨年7月に休刊した『レコード芸術』(音楽之友社)が、今年4月にクラウドファンディングを実施し、目標額の1,500万円を達成したことで、この9月からオンライン版で復刊するという。
クラシック音楽の録音・録画メディアのポータルサイト『レコード芸術ONLINE』として生まれ変わるわけだ。新譜月評、新譜一覧、執筆陣による講座、アーカイヴ連載などを月1,100円(予定価格)で提供、一部無料記事も掲載する。もちろんレコードアカデミー賞も装いを新たにして継続する。
ただ、『レコード芸術』休刊時には3,000人ほどの復活嘆願書が集まって話題になったけど、今のところオンライン版の購読予定者は800人程度らしい。これでWeb版の継続が可能かどうかについてはよくわからない。
しかも、この先どれほどの有料購読者の増加が見込めるのか。音楽の聴き方が音盤からストリーミングやインターネット経由のダウンロード再生などに変化しており、CDやDVDの売上げも随分減っているはずだ。
専門家による音盤評価や連載記事がクラシック音楽の普及に役立っているとは言っても、時代の趨勢とはズレがあるような気がしないでもない。
一方、演奏会情報としては、同じ音楽之友社の『音楽の友』がある。紙媒体で発刊し、音楽ニュースや演奏家インタビュー、演奏会日程、演奏会時評などを提供しているが、これも将来にわたって安泰かどうかは難しいところである。
正直、公演情報だけであれば『ぶらあぼ』で十分である。Netと紙媒体とを連携させ、最新の業界ニュースから注目公演の紹介、コンサート検索など知りたい情報が網羅されている。
『音楽の友』は戦前の創刊で80年以上の歴史があり、発行部数10万部、『ぶらあぼ』は創刊して30年、発行部数3万5000部である。『音楽の友』のほうが断然優勢のようだけど、『レコード芸術』だって公称10万部であったのにこの有様である。実売部数は公称する発行部数の何分の1かに過ぎない。それに『ぶらあぼ』は広告収入による運営だから無料コンテンツであることが何よりの強味だ。
出版業界の販売不振は深刻で、とりわけ雑誌の売上は1997年を頂点に四半世紀のあいだ連続してマイナスを記録し、販売額はピーク時の3分の1以下に落ち込んでいる(出版科学研究所)。
とうぜん音楽之友社についても雑誌衰退の影響をモロにかぶっている。老舗、音楽之友社といえども生き残るためにはデジタル化の充実を含め一層の工夫が必要だろう。