2024/6/8 スダーン×東響 ベートーヴェンの交響曲「第6番」「第4番」2024年06月08日 19:17



東京交響楽団 名曲全集 第198回

日時:2024年6月8日(土) 14:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ユベール・スダーン
演目:ベートーヴェン/交響曲第6番 ヘ長調op.68
          「田園」
   ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調op.60


 ベートーヴェンの偶数番号の交響曲を2曲並べるというのは珍しい。そして、普通は作品の大きさ、知名度からいって前半に「交響曲第4番」、メインは「田園」となるところ。が、スダーンはあえて「交響曲第4番」を後半に置いた。2曲とも弦は14型(コンマスは小林壱成)だったと思うけど、スダーンは指揮台もタクトも用いなかった。

 「田園」は再演である。前回の名演からいってもスダーンの得意の曲だろう。悪かろうはずはない。今回は明暗が一層鮮やかで、表情も濃厚になっていた。ビブラートは少なめながら、弦が厚い響きで支え、木管楽器が美しい。じっくり熟成したような楽曲の味わいが醸し出されていた。
 後半が勝負曲として位置づけた「交響曲第4番」、これがもう圧巻。先ずもってテンポが素晴らしい。全体を通してはもちろん、各楽章のバランスを含めて、その設計の巧みなこと。「第4番」は木管が大活躍する。福井蔵のファゴットを筆頭に、エマニュエル・ヌヴーのクラリネット、相澤政宏のフルート、荒木良太のオーボエなど、東響の名手たちがそれぞれの特性を活かしきった。神秘的な第2楽章のアダージョなどは身体が震えるほどの感銘を受けた。

 ベートーヴェンといえば後期のピアノソナタや弦楽四重奏曲といった深く重い曲にも魅かれるけど、昔から音盤で良く聴いていたのは「ヴァイオリン協奏曲」と「ピアノ協奏曲4番」、それにこの「交響曲第4番」だった。作曲はいずれも同時期、ダイム伯爵夫人ヨゼフィーネとの恋の真っ只中、これらの作品に何ともいえない魅力を感じる。
 実演でもこの3曲は機会があればよく聴いて来た。「ヴァイオリン協奏曲」はギドン・クレメールやイザベル・ファウスト、「ピアノ協奏曲4番」はアリシア・デ・ラローチャや野島稔の名演がすぐに思い浮かぶが、「交響曲第4番」だけは何故かライブに恵まれなかった。今日ようやく希望がかなった気分だ。
 スダーンが東響の監督をノットに譲って10年以上経つけど、いまだにスダーン×東響は最強のコンビであり続けている。