2023/6/24 デュトワ×新日フィル 「牧神の午後への前奏曲」「火の鳥」「幻想交響曲」2023年06月24日 19:54



新日本フィルハーモニー管弦楽団
 #650〈トリフォニーホール・シリーズ〉

日時:2023年6月24日(土) 14:00開演
場所:すみだトリフォニーホール
指揮:シャルル・デュトワ
演目:ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
  ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」組曲
  ベルリオーズ/幻想交響曲 op14


 音の魔術師、デュトワ十八番の3曲。定期会員復帰の決め手となったプログラム。デュトワとはN響以来のご無沙汰、昨年も新日フィルを振ったようだが聴き逃した。

 デュトワは80歳半ばを超えているものの、背筋はシャキッと伸び、足腰はしっかりとしていて、舞台への出入り、指揮台への昇り降りに不安はない。柔らかで伸びやかな手の動き、身のこなしも以前と変わらない。小澤とほぼ同年代と思うが、元気さではインバルと並ぶ怪物。
 対して、新日フィルは崔文洙、西江辰郎、伝田正秀の3人のコンマスにアシスタント・コンマスの立上舞をそろえた。リハーサルは4日を費やしたという。

 「牧神の午後への前奏曲」。きわめて静謐で繊細な牧神、弱音の妙。柔らかく表情豊かで、オケの音がこれほどまでに変貌することにびっくり。夢幻の世界が目のまえに立ち現れた。

 「火の鳥」(1919年版組曲)。ここでもオケから普段聴きなれない音が聴こえてくる。楽器ひとつひとつの色合いが浮き出る。キャンバスに様々な絵具をぶちまけたよう。「牧神」もそうだが、特に弦楽器のクオリティーが何段階も上がった感じ。火の鳥が舞い、カスチェイたちが踊る。バレエの各場面の情景が見事に映し出される。

 後半は「幻想交響曲」。前半とガラリと様相が変わって、激しく狂気をはらんだ展開。低弦がゴリゴリ鳴り、管楽器が咆哮する。それでも決して下品にならない。融通無碍のテンポ、絶妙のアゴーギク。コーダへの追い込みと爆発ぶりは90歳近い老人とは思えない。

 デュトワは、とうぜんのごとく3曲とも暗譜。指揮のさなか、時々唸り声も聴こえた。この頭脳と身体能力なら来年も間違いなく振ってくれるだろう。