オーケストラ解体新書 ― 2021年06月11日 07:58
書 名:『オーケストラ解体新書』
編 者:読売日本交響楽団
著 者:飯田 政之・松本 良一
刊行年:2017年
出版社:中央公論新社
『オーケストラ 知りたかったことのすべて』は、フランスで音楽批評を担当しているクリスチャン・メルランが、欧米のオーケストラの裏側を取材したものだけど、この本は読響の事務局がオケの舞台裏を案内したもの。とうぜん読響にスポットが当てられているが、日本のオーケストラの現状と抱えている問題がよく分かる。
著者の二人は、いずれも読売新聞社の出身者で読響事務局長と総務部長代行を務める。記者からオケの経営に携わるようになって「こんな面白いオーケストラの世界は格好の取材対象だ。もっと一般のファンにも知っていただきたい」という気持ちから本にしたものだという。
演奏会を実現するための切り盛り――ホールの確保、指揮者・ソリストとの出演交渉、楽譜の手配、広報、プログラム作成、チケットの販売、楽団員との調整、ステージの設営等々――と、それに伴うトラブルやハプニングなど、事務局の日常や苦労話がたっぷり紹介されている。
併せて、執筆当時の常任指揮者カンブルランや楽団員にもじっくりと話を聞いている。演奏会のドキュメントや「日本のオーケストラの課題を語る」といった鼎談もある。それと各章に幾つか挟み込まれるコラムや関係者へのインタビューがとても興味深い。
オーケストラの聴衆にとっては、ときどき気になる日本のオケの実情や課題、西欧オケとの相違などについても、改めていろいろと知ることができる。