確定申告のあと『ぶらあぼ』を読んで2021年02月19日 11:16



 確定申告の受付がはじまった。混雑を避けるため早めに申告書類を提出することにした。例年なら数十人、ひどい時には百人以上が税務署の5、6個所ある受付窓口並ぶのだが、今年は閑散としていた。納税まで済ませて15分程度で終わった。

 帰り道、近くの音楽ホールに寄って、『ぶらあぼ』を貰ってきた。日別の公演情報や演奏家へのインタビュー記事、オケ広告などが満載されているので、毎月愛読している。無料である。これがあるから演奏会当日にホール前で配られるチラシも必要ないし、時々買っていた『音楽の友』なんて雑誌もいらなくなってしまった。
 パラパラと頁を繰っていたら中ほどに「編集部からのお知らせ」という1頁を使った案内文が目に入った。“緊急事態宣言の発令に伴って、演奏会情報の変更修正が間に合わず、実際とは異なる情報を掲載して発刊することになってしまった、できるかぎり正確な情報を提供するため、4月号(3月18日発行)より「前売りチケット情報」「News&Topics」「TV&FM」「公演情報」の本誌掲載を取りやめ、ウエブサイトでの掲載のみに変更する”とのこと。紙媒体はWebと連携し、読み物記事と演奏団体の広告に特化するようである。
 即時的に正確な情報を提供するためにはやむを得ない措置であろうけど、紙媒体の一覧性を偏愛する者にとっては少しばかり寂しい。

 紙媒体の凋落が著しい。新聞は2020年10月現在の発行部数合計(朝夕刊セットは1部と数える)が、前年に比べ271万部あまり減少した。しかも、下げ止まる気配は全くない。2017年は前年比2.7%減、2018年同5.3%減、2019年同5.3%減、そして2020年は同7.2%と年々減少率は大きくなっている(日本新聞協会の調べ)。雑誌の推定販売額も1997年にピークを打ったあと右肩下がりで、2019年のそれは半分以下に激減している(全国出版協会「出版指標年報2020版」)。
 媒体価値を計る広告費の推移をみても、インターネット広告費は、2006年に雑誌広告費を抜き、2009年に新聞広告費を超えた。そして、2019年には、ついにTV広告費を上回った(電通「2019年 日本の広告費」)。

 紙媒体は、情報の迅速性の面でWebに太刀打ちできない。正確性といっても情報そのものに角度がついていれば、多少不正確なものが混じっていてもWebの多様な情報には敵わないだろう。双方向性のないまま情報の修正がなされないのなら尚更と思う。あとはどのくらい情報の深堀ができるかだが、今の新聞に(放送でさえ)その余地があるのかどうか。マスメディアの世界に不案内ながら、終わったといわれる雑誌のほうが、まだその可能性が残されているような気もする。