日フィルの来期プログラム2024年11月06日 14:12



 東京・神奈川をホームグラウンドとするプロオケは10団体あるが、シーズンの開始月は次のようになっている。

 1月=東フィル
 4月=都響、読響、東響、新日フィル、シティフィル、
   パシフィル、神奈川フィル
 9月=N響、日フィル

 このうち9月開幕の日本フィルハーモニー交響楽団は、2026/27シーズンから4月スタートに変更する。日フィルは2026年に創立70周年を迎えることから、これを契機に開始月を見直すとのこと。
 したがって、2025年9月から2026年3月までは移行期間とし、サントリーホールの東京定期演奏会(金曜19時と土曜14時の2回同一プログラム)と、みなとみらいホールの横浜定期演奏会(土曜15時)においてそれぞれ6回の公演が開催される。

https://japanphil.or.jp/news/26386

 首席指揮者のカーチュン・ウォンは3プログラムを指揮し、得意とするマーラーの「悲劇的」、ショスタコーヴィチの「交響曲第11番」、「新世界より」などを振る。ドヴォルジャークと組み合わせた伊福部昭の「SF交響ファンタジー第1番」にも注目だ。
 桂冠名誉指揮者の小林研一郎はシベリウスの「交響曲第2番」と「エロイカ」を中心とした2プログラム、新シリーズの「オペラの旅」で話題となっているフレンド・オブ・JPO(芸術顧問)の広上淳一はショスタコーヴィチの「交響曲第15番」とサイの「チェロ協奏曲」というちょっと捻ったプログラム。
 そのほか客演勢として山田和樹、下野竜也、藤岡幸夫、太田弦、出口大地といった指揮者を揃え、フランス、北欧、ロシアものなどを披露する予定となっている。海外からはウイーンフィルのヴァイオリニストであるヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクを招き、J.シュトラウスやモーツァルトを弾き振りする。

2024/7/13 広上淳一×日フィル リゲティとシューベルト2024年07月13日 21:15



日本フィルハーモニー交響楽団
   第762回 東京定期演奏会

日時:2024年7月13日(土) 14:00開演
会場:サントリーホール
指揮:広上 淳一
共演:ヴァイオリン/米元 響子
演目:リゲティ/ヴァイオリン協奏曲
   シューベルト/交響曲第8番 ハ長調 D.944
        「グレイト」


 先ずは、難曲中の難曲、リゲティの「ヴァイオリン協奏曲」から。
 リゲティを初めて聴いたのは、『2001年 宇宙の旅』の中でのことだったと思う。クラシックの音盤を集め出した頃で、R・シュトラウスやJ・シュトラウスの音楽に感激しながら、リゲティについてはその音響が耳に残ったものの、作家にも音楽にも関心が持てなかった。当たり前だろう、旋律も和音も茫漠として音響操作のみでつくられているようなゲンダイ音楽など理解できるわけがない。
 その後、ほとんど絶縁状態のまま何の支障もなかったのだけど、ノットが東響の監督になってからしきりとリゲティを取り上げる。「ハンガリアン・ロック」「ポエム・サンフォニック」「ルクス・エテルナ」「レクイエム」など嫌でも聴かされる。ノットはベルリン・フィルを指揮して「リゲティの全管弦楽作品全集」を録音しているくらいだから、好みの音楽のひとつなのだろう。東響定期における「ルクス・エテルナ」や「レクイエム」では強い印象を受けた。そして、これらが『2001年 宇宙の旅』でも使われていた楽曲だと半世紀ぶりに確認することなる。

 そのリゲティ晩年の傑作といわれる「ヴァイオリン協奏曲」はいつか生で聴いてみたいと思っていた。昨年のコパチンスカヤと大野和士×都響との公演は聴き逃した。さいわい当日の模様はYouTubeで公開されているので一応予習をかねて視聴した。
 今日、ようやく米元響子と広上×日フィルによるライブを聴く。米元響子は広上が可愛がっているようだ。何度か協演するのを目にする。米元はベルキンに師事しており、広上とベルキンは友人同士だからその関係もあるのかも知れない。どちらにせよソロと指揮者とは気心の知れた間柄だろう。米元のモーツァルトやベートーヴェンの協奏曲は良かった。果たしてリゲティはどうか。

 リゲティの「ヴァイオリン協奏曲」の伴奏は小さな編成である。弦はヴァイオリンが3+2、ヴィオラ3、チェロ2、コントラバス1。うちヴァイオリンとヴィオラの各1は変則調弦する。木管楽器はリコーダーやオカリナに持ち替える。金管楽器はホルン2とトランペット、トロンボーン。打楽器は現代音楽らしく10種類以上を用意し、極めて多様な音を生み出す。
 楽曲は、第1楽章:前奏曲、第2楽章:アリア・ホケトゥス・コラール、第3楽章:間奏曲、第4楽章:パッサカリア、第5楽章:アパッショナート、の5楽章で構成されている。1990年の初演時には3楽章形式だったがその後改訂された。

 演奏が始まる。協奏曲といってもソロとアンサンブルはアンバランスに並走する。広上はいとも簡単に巨大なスコアを繰っていく。米元もさすが譜面台を置いている。
 聴き手は無調で不協和なリゲティの音楽を解明しようなどと大それたことは考えない。ただその音響にゆだねる。
 第1楽章から擦過音が飛び交い、混沌としたリズムが膨れ上がる、鍵盤打楽器は独奏者とのユニゾンが多くあって合わせるだけでも大変そうだ。第2楽章は意外にもアダージョのような詩情がある。途中、木管奏者が本来の楽器をリコーダーやオカリナに持ち替え、調子はずれな音を吹き鳴らす。第3楽章は激烈、カオスの一歩手前の雰囲気。第4楽章は遠くからバロック音楽が聴こえてくる。最終楽章にはカデンツァがあり、何をどう弾くかは奏者に任されている。YouTubeでのコパチンスカヤは、自らのヴァイオリンに合わせて歌い、楽員や会場を巻き込んで叫んだ。米元は歌ったり叫んだりはしない。プログラムノートによれば初演者ガヴリロフのカデンツァに基づいて弾いたようだ。太く豊かな音、多彩な音色で堅苦しさや無愛想さはなく、まさしくヴィルトゥオーゾの至芸としてうならせた。
 いつのまにか感情の波が寄せてきて、知らず知らずのうちに身体が反応していた。ソロもオケも見事な演奏だった。いわゆるゲンダイ音楽でこんなに興奮したのは初めてかもしれない。もう一度聴きたいと思ったほどだ。

 後半はシューベルトの「グレイト」、最近はこの「グレイト」を通し番号では「第8番」とすることが多いようだ。レコードの時代は「第9番」とされていたはず。
 調べてみると、戦後シューベルトの作品目録を作成したドイチェが、それまで未完のものを除いて「第7番」と呼ばれていたこの作品を、演奏される未完の2曲を含め「第9番」とし、それが定着し親しまれていた。ところが、20世紀の終わりころドイチェ番号の改定が行われ、自筆譜のままで演奏できる交響曲は8曲ということで「第8番」とされ、現在はこの「第8番」に統一されつつあるという。つまり「グレイト」は「第7番」→「第9番」→「第8番」と変遷して来たわけだ。
 紛らわしい。新しい研究成果に基づき通し番号を付け替えれば混乱するのは無理ない。モーツァルトの場合は最初のケッヘル番号を大事にし、交響曲の通し番号も実際何曲あるのか知らないが「第41番」まで不動である。ブルックナーだって9曲以外に「0番」「00番」とあって当初の番号は変更していない。通し番号も作曲年順だったり、出版年順だったり、そもそも全体数と番号とが対応しないこともある。通し番号といってみても馴染んだ記号、愛称に近いわけで、最新の研究結果でもってそれを屡々変更するのはどうかと思う。
 それに交響曲でいう「第9番」は、“第9の呪い”などと面白おかしくいわれ、ベートーヴェンから始まり、シューベルト、ブルックナー、ドヴォルザーク、マーラー、ヴォーン・ウイリアムズなど「第9番」以降の交響曲をつくることができなかった作曲家を列挙して遊ぶことがある、そこからシューベルトを外す必要はないだろうに。
 もっとも“第9の呪い”などというのは与太話に過ぎない。ブルックナーやマーラーは9曲以上の交響曲を作曲しているし、ドヴォルザークの「新世界から」は最初「第5番」と呼ばれていたのだから“第9の呪い”などは作り話の類である。でも、人は事実であろうとなかろうと物語さえあれば余分に楽しめるわけで、その楽しみはそっとしておいたほうがいいのではないか、というだけの余談である。
        
 さて、広上の「グレイト」は、近年流行りの速めのテンポによるエキセントリックな演奏ではなく、恰幅が良くまろやかでコクのある落ち着いた演奏である。古風といってもよい。冒頭のホルンの導入部も刺激的ではなく、それに導かれる弦楽器の響きも神秘的だ。推進力に富んでいながらリズムは柔らかくノスタルジックな雰囲気さえある。鄙びた辻音楽を連想させるスケルツォのトリオはこの曲の中で一番好きな箇所だけど、理想的なテンポと節回しで感情を大きく揺さぶる。広上は最終楽章のコーダに向けてスコアを閉じた。両手を広げ、身体を左右に振ってオケを駆り立てる。音楽が集中力を高めながらスケールを増し大団円をつくりあげた。円熟の指揮者の為せる業である。
 コンマスは扇谷泰朋。木管のトップは真鍋恵子、杉原由希子、伊藤寛隆、田吉佑久子。金管はホルンが信末碩才、トランペットがオッタビアーノ・クリストーフォリ、トロンボーンのトップは不明だが、トロンボーン隊として最上の仕事をした。ティンパニはエリック・パケラ。これはベストメンバーだろう。弦管打楽器とも至福の音を出していた。

2024/4/4 周防亮介の協奏曲 パガニーニ、ブルッフ、シベリウス2024年04月05日 10:27



周防亮介+渡邊一正×日フィルによるVn協奏曲集

日時:2024年4月4日(木) 19:00開演
会場:サントリーホール
出演:ヴァイオリン/周防 亮介
   指揮/渡邊 一正
   管弦楽/日本フィルハーモニー交響楽団
演目:パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調Op.6
   ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調Op.26
   シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調Op.47


 1年ほど前に周防亮介のパガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第1番」をみなとみらいの小ホールで聴いた。伴奏はオケではなく弦楽五重奏で、メンバーは田野倉雅秋をはじめとする日フィルの楽員。ソロの技巧と美音に感心し、機会があれば周防を改めて聴きたいと思っていた。
 協奏曲3曲を一晩で弾ききるのは無謀な挑戦だが、周防はすでに昨年、ブラームス、メンデルスゾーン、チャイコフスキーの3曲をまとめて披露している。このときはスケジュールが合わなかったので、今回は待っていましたとばかりチケットを確保した。

 サントリーの大ホールにあっても周防の魅力的な音色と豊かな音量は変わらない。繊細さと大胆さ、柔らかさと強靭さが同居して、叙情と劇性をものの見事に表現する。歌い回しが上手で、オケに埋もれてしまう音が1音たりともない。パガニーニは軽やかに楽々と、ブルッフでは甘美な熱狂をまとい、シベリウスは堅忍不抜の情念を弾き分けた。

 パガニーニは室内版よりもさらにオペラ的で、超絶技巧のソロのアリアをオケが支えるといった趣。緩徐楽章のファゴット・鈴木一志さんとの絡みなどは室内版では味わえない楽しみだった。パガニーニを汗一つかかず易々と弾いたあと20分の休憩。
 ブルッフでは一転身体を大きく前後に振り、分厚い響きでもって情熱的に演奏する。第2楽章では泣かせどころが何か所あるが、そこをきっちりと泣かせてくれる。ブラームスに先行する第3楽章も胸躍る。もっと評価されてしかるべきヴァイオリン協奏曲の名曲。熱量のこもったブルッフを終え、休憩なしでシベリウスへ。
 シベリウスの協奏曲は厄介な曲だ。民俗音楽を背景にしながらも実験音楽を試みているような難解なところがあって、実演では聴き手の集中力が切れることママある。ところが周防のテクニックと音作りは、聴き手を最後まで飽きさせない。これがパガニーニ、ブルッフを弾いたあとのシベリウスだとはとても信じることができない。

 終演後大きなブラボーが飛び交い、多くの人がスタンディングオベーションで讃えた。熱狂的なファンも押しかけていたようだ。アンコールはオケ伴奏による「ツィゴイネルワイゼン」。
 周防亮介はたしか30歳になるかならないかのはず、末恐ろしい逸材。日フィルは弦12型、コンマスは木野雅之。渡邊一正の指揮は粘り強く周防の挑戦をよくサポートした。

日本フィルの来期プログラム2023年11月06日 09:16



 日本フィルハーモニー交響楽団のシーズン開始は9月から。その来期(2024/9-2025/8)の定期演奏会プログラムが速報された。
 サントリーホールで開催される東京定期演奏会(金曜19時・土曜14時の2日間)と横浜みなとみらいホールで開催される横浜定期演奏会(土曜17時)で、それぞれ10回のコンサートが予定されている。横浜定期は指揮者、曲目とも調整中が目立つ。

https://japanphil.or.jp/sites/default/files/2023-11/2024%EF%BC%8F2025%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E9%80%9F%E5%A0%B11102.pdf

 首席指揮者のカーチュン・ウォンは、東京定期において生誕200年を迎えるブルックナーの「交響曲第9番」と、得意とするマーラーの交響曲第2番「復活」などを取り上げる。桂冠名誉指揮者の小林研一郎はブラームスの「交響曲第1番」を、フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)の広上淳一はホルストの「惑星」を振る。海外からはフランソワ・ルルーとアレクサンダー・リープライヒ、ガボール・タカーチ=ナジが来日し指揮する。

2023/4/12 周防亮介×Jpo弦楽五重奏 パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番2023年04月12日 20:21



みなとみらいランチタイムコンサート
周防亮介×日本フィルハーモニー交響楽団メンバー

日時:2023年4月12日(水) 15:00開演
会場:横浜みなとみらいホール 小ホール
出演:ヴァイオリン/周防 亮介
   日フィルメンバーによる弦楽五重奏
    ヴァイオリン/田野倉 雅秋、末廣 紗弓
    ヴィオラ/小中澤 基道
    チェロ/大澤 哲弥
    コントラバス/宮坂 典幸
演目:シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調
          Op.163より 第1楽章
   パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調
          Op.6(ヴァイオリンと弦楽五重奏)


 以前、「18区コンサート」において、“オケをバックに演奏される協奏曲を、弦楽五重奏用に編曲された伴奏で聴く”というシリーズが企画された。今回は「みなとみらいホールランチタイムコンサート」のなかで、同じコンセプトでもってパガニーニを取り上げることになった。
 パガニーニの「ヴァイオリン協奏曲第1番」は、オペラチックで素敵な曲なのに聴く機会を逃している。後にも先にもサルヴァトーレ・アッカルドの演奏一度のみ。
 伴奏は基本ズンチャ・ズンチャで複雑なことはやっていない。室内楽編曲のバックであれば超絶技巧の独奏ヴァイオリンが一層楽しめるだろう、との目論見でチケットを手配した。

 いまでこそクラシック音楽は、超絶技巧などといって一寸取り澄ましている。が、娯楽の少ない時代には、そんな綺麗ごとではなくて見世物や曲芸に人が集まるのと同じで、オペラにおけるカストラートや、器楽における特殊技法がもてはやされたのは物珍しさのためだった。カストラ―トのファリネッリや幼少のモーツァルト、ヴァイオリニストのパガニーニやピアニストのリストなどの人気も、今でいうアイドルを見聞きしたいという群衆心理の類だろう。現在だってそういった興味がまったく消え失せたわけではない。
 パガニーニはその典型で、熱狂した観客は涙を流しながら喚き、集団ヒステリーを起こした女性たちの失神騒ぎは度々だった。このあたりの話は映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』にも描かれている。筋書きはありきたりで、映像も目新しいところがなかったけど、パガニーニを演じた実際のヴァイオリニストであるデビッド・ギャレットの演奏ぶりはさすが。音楽が流れる場面はなかなか迫力があった。

 横道にそれた。今日の演奏会である。
 先ずはJpoメンバーで構成された弦楽五重奏によるシューベルトのハ長調、彼の最期の年に書かれた格別な曲。この五重奏曲はSQにヴィオラを追加するのではなくチェロを追加してチェロが2という特殊なもの。今回はチェロを追加する代わりにコントラバスという編成。全曲となると1時間近くが必要となる。
 オケメンバーで編成する四重奏や五重奏は、無難にまとまってしまう傾向にあるが、コンマスの求心力のせいか、普段からオケのなかで聴き合っているせいか、各楽器のバランスが良好で感心する。この第1楽章は、ミステリアスでありながら清澄、独特の浮遊感を感じる。adagio、scherzo、allegrettoと第2楽章以降も実演で聴いてみたくなる。

 田野倉さんのお喋りを挟んでから、メインのパガニーニ。
 周防亮介は初めて聴く。ここの小ホールの響きは素晴らしいし、楽器の1678年製ニコロ・アマティも名器だろう。でも、周防亮介の音がなにより魅力的。まさしくソリストの音、一聴して音色、音量が抜きん出ていることがわかる。高音は空気に吸い込まれ、低音は芯が太い。E線からG線までどこをとっても非常に滑らか。甘美な音に酔うほどだが、音離れがいいのか決してベタベタしない。
 開始楽章のフラジオレットの繊細さ安定度にびっくり、重音も濁らない。鮮やかすぎるカデンツァに唖然とする。中間楽章はヴァイオリンの音で身体がとろけそうな錯覚に陥った。最終楽章のスピッカートも活き活きとしている。跳弓とはいうが何種類あるのだろう。ダブル・ハーモニクスも軽々と難なくこなしていく。ヴァイオリンは魔性の楽器だ。とにかく美しい。
 目論見通り超絶技巧に圧倒されただけでなく、出来のいいオペラを楽しむかのように音楽を堪能した。

 そういえば、シューベルトも家具を売って金を工面し、パガニーニを聴いている。しかし、シューベルトはパガニーニの超絶技巧に影響はされなかったようだ。自らの感情表現にはほど遠いと感じたのだろう。では、パガニーニは技巧だけの刹那の音楽なのか。いや、超絶した技巧そのものにパガニーニの情念が乗り移っている。だからこそ、数百年後まで生き延び、こうやって聴く者に快感だけではない、言い知れぬ感情を呼び起こす。

 周防亮介のアンコールは、シュニトケの「ア・パガニーニ」、現代音楽というより未来から来た音楽のよう。これがまた端倪すべからざるもの、この先、周防亮介から目が離せない。
 ランチタイムコンサートといいながら15時開演、実は先に11時半開演の同一プログラムがあった。本来のランチタイムコンサートは大ホールで11時半に開催される。今日だけ会場が小ホールのため、2回開催となった由。