2023/12/2 ポール・メイエ×東響 モーツァルト「クラリネット協奏曲」2023年12月02日 15:57



東京交響楽団 モーツァルト・マチネ第55回

日時:2023年12月2日(土) 11:00開演
場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ポール・メイエ(兼クラリネット)
演目:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」K.588 序曲
   クラリネット協奏曲イ長調 K.622
   交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」


 クラリネットソロと指揮のポール・メイエは、日本風にいえば還暦間近だけど、相変わらずカッコいい。見かけは若い時とほとんど変わっていない。以前から指揮にも手を出しているようだが、彼の指揮は初めて。

 最初は「コジ・ファン・トゥッテ」の序曲、オケの弦は8-6-4-3-2の小さな編成、コンマスは小林壱成。メリハリのある劇的な表現で、8型にもかかわらず豊潤な音だった。

 合奏からオーボエ、クラリネット、トランペット、ティンパニが抜け、管楽器はフルートとファゴット、ホルンのみが残って「クラリネット協奏曲」。中間楽章以外の両端楽章は明るく爽やかに駆け抜ける。クラリネットの音域は広く、低音から高音まで柔らかく滑らか。とりわけ緩徐楽章の弱音は心に沁みた。メイエは吹き振りだが、最初にテンポを指示したあとはオーケストラ任せ。室内楽曲を聴いているような心地よさだった。やはりメイエはクラリネットの人。

 今日はモーツァルトの最後の協奏曲と最後の交響曲を並べるという粋なプログラム。その最後の交響曲「ジュピター」、第3楽章までは通常のテンポだったが、最終楽章は極端に速く、緩急の切り替えもちょっと癖があった。「ジュピター」といえば、東響のモーツァルト・マチネの歴史のなかでは、スダーン、ノットの息をもつかせぬ名演があった。両巨嶺を越えるのは、なかなかに難しい。

 来期のモーツァルト・マチネのプログラムが発表になっている。
 モーツァルトの後期交響曲と小品との組み合わせが中心の全4回。小品はモーツァルト以外の作品も含む。主要演目は再演が多く新鮮味がない。
 交響曲や協奏曲などは、膨大な作品群のなかから普段あまりプログラムされない曲を紹介してくれると有難いが、どうしても有名曲偏重となってしまう。管楽器だけのセレナードや珍しい編成の室内楽などを紹介するのも面白いと思うけど、残念ながらそういった企画が実現しない。来期のセット券は見送ることになりそう。

https://www.kawasaki-sym-hall.jp/events/series/detail/2024/140.php