『ミッション:インポッシブル』最新作2023年08月16日 19:07



『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』
原題:Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One
製作:2023年 アメリカ
監督:クリストファー・マッカリー
脚本:クリストファー・マッカリー、
   エリック・ジェンドレセン
音楽:ローン・バルフ
出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、
   レベッカ・ファーガソン、ビング・レイムス


 遅ればせながら『ミッション:インポッシブル』の最新作を観てきた。シリーズの第7作目、2部作の前編、ゆえにパートワン。
 最初から最後まで一瞬たりとも目が離せない。緊張とユーモア、闘いと友情。敵と味方が入り乱れる。誰が敵で誰が味方なのか。IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)の親分でさえどちら側であるか分からない。登場人物はみな敵にみえる。一番巨大で手強いのは人工知能のようだけど。
 信頼できるのはイーサン・ハント(トム・クルーズ)のチームだけ。

 冒頭から一気に引き込まれる。ベーリング海の潜水艦、砂漠での銃撃戦、そこにはイルサ(レベッカ・ファーガソン)との再会が用意されている。空港でのAIの不気味な挙動と敵味方の追跡シーン、ローマの街中でのカーチェイス。
 カーチェイスは『007』シリーズや『フレンチ・コネクション』『マッドマックス』など語り継がれる名場面が多いが、その基本形をつくったのは1960年代のスティーブ・マックイーンの『ブリット』。坂道の多いサンフランシスコを舞台に臨場感あふれる追っかけっこ。マックイーンもマスタングを高速で飛ばしているものの、さらにフィルムの早送りなどでスピード感を高めていた。
 今ではそんな痕跡さえもない。バイクと車、車と車。イーサンとグレース(本作よりシリーズに参加したヘイリー・アトウェル)が、迫りくる敵から逃れるため手錠で繋がれたまま爆走する。このシーンは映画史上におけるカーチェイスの集大成といえそう。
 ヴェニスではドゥカーレ宮殿での心理戦と橋の上や小路での死闘、イーサンが駆ける駆ける。しかし、その甲斐もなくイルサを失うという衝撃が待っている。そして、メーキング映像でも話題となったバイクもろとも断崖絶壁からの跳躍しパラシュート飛行、列車の中と列車の屋根での壮絶な闘い、2時間45分ゆっくり息をつく場面がひとつとしてない。
 これぞハリウッドのアクション映画といわんばかりのてんこ盛り。ストーリーなどほとんど意味をなさない。ただ次から次へと繰り出されるアクションの凄まじさに唖然とするばかりだ。

 これが還暦を迎えた爺さまトム・クルーズのやること。アップになるとさすが歳を感じさせるところはあるけど、スクリーンのなかの出来事とはいえ、あのスタント、戦闘の身のこなし、疾走する姿はとても60歳の肉体とは思えない。想像を絶する日頃の鍛錬の賜物だろう。
 断崖からの跳躍も本編では数分の出来事、なれど、メーキング映像を見ると準備、訓練、試演に1年以上もかけている。撮影用の列車の製作だって数か月も費やしたという。ただただ観客を喜ばせたいというエンターテイメントの極地だ。
 脚本・監督は5作目からトム・クルーズとコンビを組んでいるクリストファー・マッカリー、二人の呼吸はぴったし。映像のキレ、テンポ、カメラワーク、光と影の調和、もう何もいうことはない。ひたすら感心した。
 音楽はローン・バルフ、ラロ・シフリンが作った「スパイ大作戦」のテーマをアレンジして用いるのはもちろん、ロック、ラテン、バラードなどの調べを取り揃え、活劇の面白さと喪失の悲しみ、光と闇の世界を音楽で支えている。

 夏休み、お盆休みせいもある。平日の昼上映にもかかわらず館内はほぼ満席。
 この『ミッション:インポッシブル』はまだしばらく公開されるようだ。アクション映画好きが見逃すはずはない。すでに国内興行成績は40億円を突破、今年公開の洋画実写の売上第1位を記録している。
 後編は前編と同時撮影されており、大部分が完成されていて、来年6月の上映予定。ただし、今夏の全米映画俳優組合の労働争議の影響で公開が遅れる可能性が高いようだ。
 『ミッション:インポッシブル』シリーズは第1作から数えて約30年、その前の1960年から70年代にかけてのTVの『スパイ大作戦』からみれば半世紀以上が経つ。「おはよう、フェルプス君」ではじまる『スパイ大作戦』の視聴は困難だが、『ミッション:インポッシブル』シリーズはPrime Videoで観れる。もう一度これらを見直しながら、後編を辛抱強く待ちたい。

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