2023/5/14 ノット×東響 オペラ「エレクトラ」2023年05月14日 20:40



東京交響楽団 特別演奏会 
 R.シュトラウス/オペラ「エレクトラ」
        (演奏会形式、全1幕)

日時:2023年5月14日(日) 14:00開演
場所:サントリーホール 大ホール
指揮:ジョナサン・ノット
演出監修:サー・トーマス・アレン
出演:エレクトラ/クリスティーン・ガーキー 
   クリソテミス/シネイド・キャンベル=ウォレス
   クリテムネストラ/ハンナ・シュヴァルツ
   エギスト/フランク・ファン・アーケン
   オレスト/ジェームス・アトキンソン
   オレストの養育者/山下浩司
   若い召使/伊藤達人
   老いた召使/鹿野由之
   監視の女/増田のり子
   第1の侍女/金子美香
   第2の侍女/谷口睦美
   第3の侍女/池田香織
   第4の侍女・クリテムネストラの
    裾持ちの女/髙橋絵理
   第5の侍女・クリテムネストラの
    側仕えの女/田崎尚美
   合唱/二期会合唱団


 去年の衝撃の「サロメ」から半年、R.シュトラウスのオペラ特別公演第二弾「エレクトラ」である。
 狂気と憎悪の物語にして、これを演奏するのも歌うのも狂気の沙汰と思えるほどだが、オケも歌手陣もパワー全開、今回も圧倒的な名演というほか言葉がない。
 終演後の会場は熱狂の嵐だった。

 タイトルロールのクリスティーン・ガーキーは最初から最後まで出ずっぱりで、歌唱力も演技も桁違い。強靭な声で歌い続け、復讐のあとの舞踏、所作などは鳥肌がたつほど。妹のシネイド・キャンベル=ウォレスの声も強い、ガーキーとがっぷり4つに組んで負けていない。母のハンナ・シュヴァルツは久しぶりに名前を聞いた。味わい深い低音と演技はいまもって健在。弟のジェームス・アトキンソンは意思の強さというには美声が上回っていて、ガーキーとの甘美な二重奏で涙が止まらなくなってしまった。母の愛人であるフランク・ファン・アーケンの出番はわずかながら、その声と演技はしっかりとした印象を残した。端役の召使、侍女といった歌手たちも、普段なら主役を演じる人たちばかりだから、その水準は推して知るべし。何という豪華な。よくもまあ、これだけの歌手を集めたものだと感心する。
 演出は「サロメ」の時と同じサー・トーマス・アレン。舞台前面の狭いスペースを使って「サロメ」以上に細かな演技をつけていた。

 オケは120人の大編成というからピットには入らないだろう。事前の情報によるとヴァイオリンとヴィオラが各3パート、チェロ2パートにコントラバス。管楽器は4管編成という具合。
 コンマスは小林壱成、コンマスの隣はゲストの小川響子だった。Vnの第2パートのトップにはグレブ・ニキティン。チェロのトップは伊藤文嗣、横に笹沼樹が並んでいた。
 東響の演奏の精度は高く、集中度も気合も半端ない。R.シュトラウスが完成させた複雑で困難な管弦楽法を解きほぐし、場面場面の情景を映し出すように演奏しきった。

 そして、もちろん今回の最大の主役は指揮者のノット。その才能にあらためて感服した。演奏会を聴いた、歌劇を観た、というよりは、とてつもない体験をした、といったほうが正確かも知れない。今日の全1幕を言葉で語るのは難しい。