2024/2/23 高橋勇太×MM21響 「タプカーラ」と「オケコン」2024年02月23日 18:56



みなとみらい21交響楽団 第26回定期演奏会

日時:2024年2月23日(金祝) 14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール
指揮:高橋 勇太
演目:エネスク/ルーマニア狂詩曲第1番
   伊福部昭/シンフォニア・タプカーラ
   バルトーク/管弦楽のための協奏曲
   

 年2回の定期演奏会を開催しているMM21響は、アマオケとしては意欲的なプログラムで演奏も水準以上。で、ここ数年、毎回お邪魔している。欲を言えば指揮者にデビューして間もない若い人たちを望みたいところだが、これは今後に期待しよう。
 今日は先回、R.シュトラウスとサン=サーンスで快演を聴かせてくれた高橋勇太が振る。舞台に登場したオケの男性メンバーの衣装はいつもの通り黒の上下だけど、女性陣は色とりどりのフォーマルドレスを召して華やか。こういった色彩豊かな舞台もいいものだ。

 プログラムは3曲。演奏時間はいずれも短いが、オケにとってはハードな曲ばかり。
 最初はエネスクの作品。昔はエネスコと呼ぶのが一般的だったのではないか。エネスクはウィーン音楽院に進学の後、パリ音楽院に学んだ。同門にウィーンではツェムリンスキーが、パリではラヴェルがいた。演目は20世紀初頭に書かれた「ルーマニア狂詩曲」2曲のうちの有名な「第1番」。
 出だしのクラリネットとオーボエの掛け合いは、まるで即興曲のよう。ハープのトレモロの伴奏のなか多くの楽器が加わり厚みを増す。ジプシーの旋律が奏でられ、東洋や中近東風の曲調が織り交ぜられ、情熱的な舞曲が展開する。クライマックスに達すると突然音楽が止み、すぐに最強音が戻ってきて終わる。指揮者もオケも気合十分、たっぷり歌って熱狂を届けてくれた。

 2曲目は「シンフォニア・タプカーラ」。安定したホルン、ミュートを装着したトランペットの突き抜ける音色、トロンボーンのグリッサンドなど金管楽器が頑張る。木管も難しいパッセージよくこなしていた。もちろんオケの団長がいる打楽器は元気いっぱい。高橋勇太は絶妙のテンポ設定で、とくに第2楽章のアダージョをゆったりと流し、抑揚の加減に細心の注意を払い、楽章の美点をうまく引き出していた。
 最近、「シンフォニア・タプカーラ」が以前にも増して身近に感じるようになってきた。血沸き肉躍るリズム、どこか懐かしい郷愁を誘う旋律、感情が大きく揺さぶられる。アマオケでここまで演奏してくれれば言うことない。

 最後はバルトークの「管弦楽のための協奏曲」、通称「オケコン」。この曲はよく知られているように、米国に亡命したバルトークの困窮を救うべく、ボストン響のクーセヴィツキーが委嘱したもの。作曲から遠ざかっていたバルトークが久しぶりに書いた管弦楽作品。
 全5楽章。第1楽章「序奏」、変拍子で進んでいく。後半は教会音楽のような神秘的な響き。第2楽章「対の遊び」、小太鼓のリズムの上をファゴットが歌う。複数の管楽器が加わり、ペアになってそれぞれが独立した旋律を演奏する。第3楽章「悲歌」、不協和音に満ちた「夜の歌」、第1楽章の再現のようにも聴こえるが、深刻度は増加し悲劇的。第4楽章「中断された間奏曲」、ちょっと滑稽で皮肉たっぷりに始まる。通俗的な民謡風の音楽の途中にショスタコーヴィッチ「レニングラード」のテーマが騒々しく乱入してくる。第5楽章「終曲」、ホルンが強奏した後、ヴァイオリンの無窮動が続く。ティンパニのグリッサンド、弦によるフーガの大伽藍、全楽器がはせ参じ勝利宣言で終わる。
 最後まで面白く聴かせてもらったが、これは難曲。個々のプレーヤーおよびオケ総体の技量はもちろん、音色、音量、速度、バランス等々、全曲にわたって微妙なコントロールが必要だ。指揮者、オケともどもお疲れ様、大健闘でした。