東京フィルの来期プログラム ― 2022年10月17日 08:03
先週末、東京フィルハーモニー交響楽団の来期(2023/1~2024/12)ラインナップが発表になった。
会場は、例年通りBunkamura オーチャードホール、東京オペラシティ コンサートホール、サントリーホールの3カ所、同一プログラムで各8回ずつ公演する。
https://www.tpo.or.jp/concert/2023season-01.php
名誉音楽監督のチョン・ミョンフは、1月にブルックナーの「7番」、7月に演奏会形式の「オテロ」を指揮する。首席指揮者のアンドレア・バッティストーニは、3月のサン=サーンス「オルガン付き」と11月のチャイコフスキー特集に登場。
特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフは、2月に「マンフレッド交響曲」、5月にラフマニノフの管弦楽作品を演奏する。プレトニョフは、自ら創設したロシア・ナショナル管弦楽団を追われ、活動の機会を奪われている。昨年スイスへ出国し、この9月、スロヴァキアの首都ブラティスラヴァを拠点にした「ラフマニノフ国際オーケストラ」という新たなオケの創設を明らかにしている。
ラフマニノフの作品は6月にも尾高忠明が取り上げる。そのほか若手女性指揮者のクロエ・デュフレーヌが10月に「幻想交響曲」を披露する。ブザンソン国際指揮者コンクールの覇者である。
2022/9/9 東京二期会 蝶々夫人 ― 2022年09月09日 21:25
二期会創立70周年記念公演
東京二期会オペラ劇場 「蝶々夫人」
日時:2022年9月9日(金) 14:00 開演
会場:新国立劇場 オペラパレス
指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:栗山 昌良
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演:蝶々夫人/木下 美穂子
スズキ/藤井 麻美
ケート/角南 有紀
ピンカートン/城 宏憲
シャープレス/成田 博之
ゴロー/大川 信之
ヤマドリ/杉浦 隆大
ボンゾ/三戸 大久
神官/的場 正剛
合唱/二期会合唱団、新国立劇場合唱団、
藤原歌劇団合唱部
演目:ジャコモ・プッチーニ/蝶々夫人 全3幕
バッティストーニのオペラは、数年前に「リゴレット」と「トゥーランドット」を観て以来、今日で3度目。この「蝶々夫人」は、二期会創立70周年の記念公演のひとつ。演出が栗山昌良というのも魅力。
「蝶々夫人」は、もちろん歌劇だからずっと音楽が鳴り響き、「ある晴れた日に」などの有名なアリアも含むのだが、筋書きが荒唐無稽でなく、現実味があって、どうしても舞台や演技のほうに目が向く。
そういう面で栗山演出は見ごたえがあった。障子と屏風で大きく空間を切り取り、枝垂桜の樹が何本か配置してある。そして障子にあたる光が時間の経過をあらわして行く。美術、衣装、照明が一体となって、日本的なリアリティある美しい舞台をつくっていた。登場人物の所作も熟考されている。二期会の定番プロダクションと言っていいのだろう。
歌手陣は演技ともども全員安定しており、役による好不調がなく、安心して観ることができたし、聴くことができた(ゴローは升島唯博が体調不良で大川信之に変更)。バッティストーニも劇的な要素を強調し、緩急・強弱を使いこなした歯切れのいい音楽で支えた。
それにしても、ピンカートンは、劇中の人物とはいえ下衆野郎で腹立たしい。
蝶々さんとピンカートンの物語は、いまだに日本と米国との関係を象徴しているようで、苦笑いを押し隠すほかない。
2022/8/7 エッティンガー×東フィル シェヘラザード ― 2022年08月07日 19:46
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2022
東京フィルハーモニー交響楽団
日時:2022年8月7日(日) 15:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ダン・エッティンガー
共演:ヴァイオリン/服部 百音
演目:ロッシーニ/歌劇「セビリアの理髪師」序曲
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
リムスキー=コルサコフ/「シェヘラザード」
日曜日の午後、ポピュラーなプログラムということもあって、ミューザはほぼ満席。
「セビリアの理髪師」序曲からスタート。オープニングとして、こんなにふさわしい曲はないと思うが、軽快なワクワク感がない、どちらかというと重々しい。なのに、ロッシーニクレッシェンドはびっくりするほど急加速。あざといな、エッティンガーらしい。
メンデルスゾーンから1曲選ぶとするなら、この「ヴァイオリン協奏曲」だろう。もちろん「イタリア」や「スコットランド」あるいは「エリヤ」を挙げるひねくれ者もいるかも。いわゆるメン・コン、最初の旋律だけでもメンデルスゾーンの名は後世まで残るに違いない。
服部百音は、ソリストにしては線が細い。音程もいささか不安定。バックのオケは時として音量過多でソロとのバランスが悪い。アンサンブルもすこし粗い。エッティンガーは、プレトークでメン・コンを初めて振ると話していた。そのせいではないだろうけど、どうもしっくりこなかった。
前半、感心しなかったので、後半を心配したが、「シェヘラザード」はオケの精度も数段上がって見違えるよう。変態エッティンガーの面目躍如、こってりと濃厚。ときどきゲネラルパウゼを大きくとって、緩急自在。14型の弦でも音圧は申し分ない。コンマス三浦章宏の百戦錬磨のソロはもちろん、各奏者とも名人芸を披露してくれた。
この前の木曜日に、同じリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」を聴いたばかり。「シェヘラザード」もほぼ同時期に書かれた作品。御存じアラビアンナイト、説話集「千夜一夜物語」の語り手シェヘラザードがそのまま曲の題名となっている。「海とシンドバッドの船」「カランダール王子の物語」「若い王子と王女」「バグダッドの祭り、海、船は青銅の騎士のある岩で難破、終曲」の交響組曲、演奏時間約45分。
今日、エッティンガーの指揮で、“これは大曲だ”と知った。
東フィルの来期プログラム ― 2021年10月22日 11:49
東京フィルハーモニー交響楽団の来期プログラムが発表された。東フィルは、4月~3月の年度ではなく、1月~12月の年プログラム。
https://www.tpo.or.jp/concert/2022season01.php
オーチャードホール、オペラシティコンサートホール、サントリーホールの3会場で同一プログラムを公演する。8プログラムを3会場で開催するから年24公演となる。
1月、名誉音楽監督チョン・ミョンフンのマーラー「交響曲3番」から始まり、5月にはフランス曲集をはさみ、10月、ヴェルディの歌劇「ファルスタッフ」で終える。
特別客演指揮者プレトニョフは、3月にスメタナ「我が祖国」、6月にロシア物を、首席指揮者のバッティストーニは9月にマーラー「交響曲5番」を振る。バッティストーニは9月のみ。
あと、井上道義がショスタコーヴィチ「交響曲1番」を演奏し、出口太一が「交響曲2番<鐘>」などハチャトゥリアンの曲を集める。出口はハチャトゥリアン国際コンクールの覇者らしい。
2021/8/6 バッティストーニ×東フィル ローマの松 ― 2021年08月07日 09:26
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021
東京フィルハーモニー交響楽団
日時:2021年8月6日(金)19:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:アンドレア・バッティストーニ
共演:ハープ/吉野直子
演目:ヴェルディ/歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
レスピーギ/組曲「シバの女王ベルキス」
ニーノ・ロータ/ハープ協奏曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
久しぶりのバッティストーニ。一時に比べるとだいぶ身体が絞られ、より精悍になった。プレトークで作品解説をしてくれたが、ゴツイ顔に似合わない軽やかないい声。テナーとしても通用するのではないか。
結構な客の入りで、女性比率が高い。バッティの風貌はイカツイけど、確かに指揮姿はエネルギッシュで恰好いい。ご婦人方に人気があるのかな。
プログラムは、レスピーギの2作品を休憩を挟んで前後に分け、ヴェルディの序曲とニーノ・ロータの協奏曲をそれぞれの前に置いた。
ヴェルディの序曲は名刺がわり、相変わらず東フィルはよく鳴る。
「シバの女王ベルキス」は5、6年前、タケミツホールにて同じコンビで聴いている。もとは異国情緒あふれたバレー音楽。バンダ、合唱が入る大規模な編成で全曲版はほとんど演奏されない。組曲でさえそんなにプログラムに載る曲ではない。タケミツホールに比べミューザは爆演しても音は飽和しないし抜けがいいので、逆に作品や演奏のアラに気づくことがある。「シバの女王ベルキス」は、音楽的な感興よりも鳴り物が総動員された際物に近い作品、と感じた次第。
映画音楽で有名なニーノ・ロータの「ハープ協奏曲」は佳品。吉野さんのカデンツァには何時も感心する。アンコール曲はM.トゥルニエの演奏会用練習曲「朝に」とのこと、この小品もハープの魅力が一杯。
最後の「ローマの松」はバッティにとっては自家薬籠中の曲、もちろん暗譜。音楽的にも「シバの女王ベルキス」より数段中身が濃い。バッティの咆哮を堪能したことは間違いない。
実はこの公演、今年のフェスタサマーミューザのなかで、京都市交響楽団と並んで楽しみにしていた演奏会。期待が大きいとどうしても評価水準が上がってしまうので、結果は厳しいものになりがち。
両公演とも、やはり期待値との落差が生じてしまった。無心で聴かなくてはいけない、と反省しきり。