2024/8/15 プラッソン×東フィル+二期会 フォーレ「レクイエム」2024年08月15日 20:41



ミシェル・プラッソン 日本ラストコンサート
  二期会と東京フィルハーモニー交響楽団

日時:2024年8月15日(木) 14:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール
指揮:ミシェル・プラッソン
共演:ソプラノ/大村 博美
   バリトン/小森 輝彦
   合唱/二期会合唱団
演目:ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」
   ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲
   フォーレ/レクイエム op.48


 二期会の企画によるミシェル・プラッソンの日本におけるラストコンサート。フォーレの「レクイエム」をメインにラヴェルの2曲を組み合わせた。プラッソン90歳、舞台に出てくるときの足取りは少々危なっかしい。でも指揮姿はしっかりしている。

 最初のラヴェル「マ・メール・ロワ」では高椅子を使わず立ったまま暗譜で指揮。手をヒラヒラさせるか指を曲げたり伸ばしたりして音楽をつくる。タクトを持たない音は柔らかく精緻、滑らかに音が溶け合う。「マ・メール・ロワ」は、ラヴェルが友人の子供のために書いたお伽噺に基づく5つの小品だが、いずれも絶妙のハーモニーと呼吸で楽しませてくれた。

 「ダフニスとクロエ」は合唱付き。ピッコロやフルート、クラリネットなど各楽器の音がとてつもなく美しい。色合いが深く艶があり、楽器というより自然界の音が共鳴しているよう。第2組曲はバレエ全曲のなかのクライマックスである第3場がほぼそのまま音楽になっている。「夜明け」では朝日が昇る中クロエとダフニスが再会し、二人は「無言劇」を演じて感謝を捧げ、「全員の踊り」で歓喜の大乱舞となる。プラッソンの繊細なニュアンスに満ちた音楽と大胆な音圧の迫力に唖然とする。

 フォーレの「レクイエム」には3つの稿がある。5曲構成でソプラノ独唱とコーラス、弦楽器やオルガンによる小編成の「第1稿」と、7曲構成でバリトンを加え、楽器編成に金管楽器などを増強した「第2稿」、そして、一般に演奏される弦5部2管編成に拡大した「第3稿」である。「第2稿」は自筆譜が失われており、ジョン・ラターなどによる校訂版が近年ときどき演奏される。
 今日は一般的な「第3稿」である。フォーレの「レクイエム」は近代音楽でありながら中世のグレゴリオ聖歌を彷彿とさせる静謐で天国的な響き。プラッソンの音楽は気高く慈愛に満ちていた。東フィルと二期会は実に献身的に演奏と歌声を捧げた。パイプオルガンの石丸由佳のパフォーマンスにも注目した。
 フォーレは劇的なヴェルディの「レクイエム」を知っていたはずだけど、フォーレの「レクイエム」は「怒りの日」を欠き、歌詞もレクイエム(安息)で始まりレクイエムで終わる。穏やかで過剰な感傷のない音楽が平安をもたらす。終戦の日と重なった。心のなかで死者の安息を祈っていた。

 アンコールはフォーレの「ラシーヌ讃歌」、これがまた美しさの極み、今日だからこその特別な音楽となった。
 プラッソンは胸に手をあて何度もカーテンコールに応えていた。

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