東京フィルの来期プログラム ― 2022年10月17日 08:03
先週末、東京フィルハーモニー交響楽団の来期(2023/1~2024/12)ラインナップが発表になった。
会場は、例年通りBunkamura オーチャードホール、東京オペラシティ コンサートホール、サントリーホールの3カ所、同一プログラムで各8回ずつ公演する。
https://www.tpo.or.jp/concert/2023season-01.php
名誉音楽監督のチョン・ミョンフは、1月にブルックナーの「7番」、7月に演奏会形式の「オテロ」を指揮する。首席指揮者のアンドレア・バッティストーニは、3月のサン=サーンス「オルガン付き」と11月のチャイコフスキー特集に登場。
特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフは、2月に「マンフレッド交響曲」、5月にラフマニノフの管弦楽作品を演奏する。プレトニョフは、自ら創設したロシア・ナショナル管弦楽団を追われ、活動の機会を奪われている。昨年スイスへ出国し、この9月、スロヴァキアの首都ブラティスラヴァを拠点にした「ラフマニノフ国際オーケストラ」という新たなオケの創設を明らかにしている。
ラフマニノフの作品は6月にも尾高忠明が取り上げる。そのほか若手女性指揮者のクロエ・デュフレーヌが10月に「幻想交響曲」を披露する。ブザンソン国際指揮者コンクールの覇者である。
金木犀の花 ― 2022年10月18日 12:25
金木犀の花が初めて咲いた。
三年ほど前、庭らしきものを造り始めたとき、一番最初に植えたものだ。
もともと樹高1m足らずの幼い木で、数年は花を見ることができないと覚悟して、しっかり育てるつもりでいた。
しかし、贖った幼木は極めてひ弱で病気がち。背は少し伸びても小指ほどの太さの幹は全然生長しない。一時は葉がほとんど無くなってしまった。
今年は、春先に新芽が多く吹き、快復の兆しだと安堵したが、すぐにその葉は黄変し、夏前にはやはり上部を残して、大部分が落葉してしまった。
素人判断で薬剤を散布したり、活性剤を与えたり、土を漉き込んだり、手入れはしたものの、肝心の原因がよく分からない。
このまま枯れてしまうのではないかと心配した。昨年は、剪定が良くなかったのか、モミジを枯らしてしまった。それに続くような嫌な予感もあった。
ところが、先週、気が付いたら残った上部の葉の周辺に花芽がついていた。思いもかけないことだった。
時期的には少し遅いようだが、いま開花を迎え少ない花数ながら強い芳香を放っている。 姿形はあいかわらず頼りないし、樹勢が衰えると花が咲くともいう。それでも束の間の香りを楽しんでいる。
この先、持ち直して順調に育ってくれると嬉しい。期待と不安とが半々である。
2022/10/22 ノット×東響 ブルックナーの「交響曲第2番」 ― 2022年10月22日 18:50
東京交響楽団 川崎定期演奏会 第88回
日時:2022年10月22日(日) 14:00 開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:ジョナサン・ノット
演目:シェーンベルク/5つの管弦楽曲 op.16
ウェーベルン/パッサカリア
ブルックナー/交響曲 第2番 ハ短調
16日に引き続いてノット×東響。
客の入りは芳しくない。3、4階席はガラガラで1割も埋まっていない、全体でも3割程度、せいぜい4割ほどだろうか。
新ウィーン学派の2曲とブルックナーの初期交響曲では集客は難しかろう。明日のサントリーホールでの東京公演は、もう少しお客が集まるかも知れないが。
シェーンベルクとウェーベルンは決して聴きやすい曲ではないが、特異な響きが面白く、精緻な演奏と相まって最後まで飽きることがなかった。こういった曲を聴かせるときのノットの手際の良さにはいつも感心する。
ブルックナーの「交響曲第2番」は、基本ノーヴァク版第2稿によるものの、第1稿に準じて第2楽章と第3楽章の順序を入れ替えて演奏された。ノットの強い要望によるものとのことだが、楽章の入れ替えだけでなく、各稿の捨てがたいところもノットが取捨選択して演奏したようだ。
もっともブルックナーの複雑な版問題など素人には理解不能、まして、演奏される機会の少ない初期作品の楽譜に、どう手を入れようと聴いただけでは分かりはしない。
ただ、ノットの指揮はマーラーやショスタコーヴィチより、ブルックナーのほうが断然合っている。細部へのこだわりが、ショスタコーヴィチには悪さを及ぼし、ブルックナーには上手く作用するのは、どうしてなのか理由はよく分からない。いずれゆっくり考えてみたい。
東響の演奏は献身的で、16型の弦はそれぞれがよく歌い、木管群は相変わらず美しい。フルートの相澤さんが珍しく2番に座っていた。トップはゲストだったかも知れない。ホルンは難しいソロが幾つかあったけど上間さんが完璧に吹いた。ノットも終演後一番先に上間さんを讃えていた。
今日の演奏はニコニコ動画でライブ放送された。1週間ほどはタイムシフト(見逃し)配信で視聴できる。
https://live.nicovideo.jp/watch/lv336115839
神奈川フィルの来期プログラム ― 2022年10月27日 20:05
神奈川フィルハーモニー管弦楽団の来年4月から1年間(2023-2024)のプログラムが発表された。
みなとみらいホールに戻っての定期演奏会が9回、県民ホールでの名曲シリーズと県立音楽堂での音楽堂シリーズが各3回。それ以外に特別演奏会と東京公演がある。
https://www.kanaphil.or.jp/_app/wp-content/uploads/2022/10/78af346839f47eaec841182f9c478920.pdf
定期演奏会は、沼尻音楽監督のショスタコーヴィチ「レニングラード」でスタートする。沼尻は再来年の2月に再登場しマーラーの「夜の歌」を取り上げる。同月の東京公演でも「夜の歌」を聴くことができる。
特別客演指揮者の小泉和裕は、ブラームスをメインに据えた。7月には「4番」を、1月には金川真弓を迎えての「ヴァイオリン協奏曲」。
海外からの指揮者は3名、それぞれブラームス、バルトーク、ドヴォルザークの名曲を振る。
来期定期演奏会の締めは広上淳一で「我が祖国」、これも面白そう。
もうひとつ、6月の特別演奏会に注目。演奏会形式で「サロメ」、京響、九響との共同企画だという。「サロメ」は来月ノット×東響が公演する。聴き比べが楽しみ。
定期会員を継続することになろう。
2022/10/29 ドニゼッティの「ドン・パスクアーレ」 ― 2022年10月29日 18:58
あこがれ inかなっく
ドニゼッティ「ドン・パスクアーレ」(ハイライト)
日時:2022年10月29日(土) 14:00 開演
会場:かなっくホール
指揮:高橋 健介
出演:ソプラノ/嘉目 真木子(ノリーナ)
テノール/澤原 行正(エルネスト)
バリトン/大川 博(マラテスタ)
バスバリトン/田中 大揮(ドン・パスクアーレ)
ピアノ/寺本 佐和子
「あこがれプロジェクト」なるものがあるらしい。
広島県呉市出身のテノール澤原行正が、“呉市でオペラ”を目標に掲げ、2016年にスタートしたという。少し敷居の高いオペラを、子どもから大人まで楽しめるように、工夫を凝らした演出で届けようと奮闘中とのこと。で、この春、大好評であった呉市の「ドン・パスクアーレ」を、そのまま、かなっくホールへ持ってきた。
能書きはともかく、この公演は嘉目真木子を聴きたいがためにチケットを取った。嘉目真木子は、もう10年以上前になるか、デビュー早々だったと思う。「フィガロの結婚」のスザンナで、その美貌とともに刮目すべき歌と演技を披露してくれた。以来、嘉目を目当てに、「魔笛」のパミーナや「ドン・ジョバンニ」のツェルリーナ、「第九」などを聴いた。その後、ご無沙汰だったが、今回、嘉目真木子を間近で見聞きできるのであれば見逃す手はない。オペラや声楽にあまり関心はないものの、ちょっと気になるの歌手の一人である。
「ドン・パスクアーレ」は、ドニゼッティが晩年に作曲したオペラ・ブッファ。
ドニゼッティは、ロッシーニ、ベッリーニと並んで19世紀前半のイタリアオペラを代表する作曲家。「愛の妙薬」「連隊の娘」などの喜劇的なオペラを書く一方で、「アンナ・ボレーナ」「ランメルモールのルチア」などの悲劇的なオペラも遺した。
「ドン・パスクアーレ」のあらすじは――
資産家の老人ドン・パスクアーレは、甥のエルネストに遺産を譲るつもり。しかし、エルネストは伯父の勧める縁談には見向きもせず、未亡人ノリーナと恋仲になっている。ノリーナとの結婚に反対のパスクアーレは、自分が結婚して遺産を譲らないことを思い立ち、主治医マラテスタに結婚相手を紹介してくれるよう依頼する。マラテスタは、エルネストとノリーナの友人でもあり、パスクアーレを懲らしめようと計画を立てる。パスクワーレは、まんまとマラテスタの策略にはまり、エルネストとノリーナの結婚が認められたところでハッピーエンドとなる、という実に他愛もない話。
ブッファの筋は大方こんなもので、あとは音楽の力で観客を引き付けていく。
舞台上手にピアノ、下手に字幕を映し出すスクリーン。舞台装置としてはソファとテーブル、椅子が2脚という簡素なまま3幕を通す。が、出演者はそれなりの衣装を身に着け、演技は本格的で細かな表情を伴い舞台いっぱいに動きまわる。指揮の高橋健介は客席の最前列に座って振った。
ドン・パスクアーレ役の田中大揮は、夏に「コジ・ファン・トゥッテ」のドン・アルフォンソ役で聴いている。澤原行正、大川博ともども歌唱は見事で、ソロ、重唱を問わず安定して滑稽ななかにも重量感がある。もちろん、お目当ての嘉目真木子の素晴らしさはいうまでもない。「ルチア」の作曲家が書いたアリアは、そこら中に高音域の極限が散りばめられている。その声が塊となって飛んでくる。
容量300席の空間で聴く実力派の声楽家たちの声は、信じられないほどの迫力と表現力で圧倒される。贅沢な歌だけでなく演技も隅々まで神経が行き届き、2時間が瞬時の出来事だった。
終演後…「ドン・パスクアーレ」を心底楽しませてもらったが、出來得れば、モーツァルトのオペラをこういった形で視聴してみたい、とつくづく思った次第。