2022/8/4 藤岡幸夫×シティフィル ローマの松 ― 2022年08月05日 10:57
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2022
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
日時:2022年8月4日(木) 19:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:藤岡 幸夫
共演:クラリネット/リチャード・ストルツマン
マリンバ/ミカ・ストルツマン
ジャズ六重奏/宮本貴奈(ピアノ)
井上陽介(ベース)
高橋信之介(ドラムス)
中川英二郎(トロンボーン)
本田雅人(サックス)
小池修(サックス)
演目:コープランド/クラリネット協奏曲
チック・コリア/スペイン
~六重奏とオーケストラのための
リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
コープランド、チック・コリア、リムスキー=コルサコフ、レスピーギをずらり並べた楽しいプログラム。
コープランドの「クラリネット協奏曲」も、ソリストのリチャード・ストルツマンも初めて聴く。指揮台の前にピアノとハープを据え、両翼に弦という配置。管楽器、打楽器はない。コンマスは戸澤哲夫。
ゆっくりした楽章と速い楽章がカデンツァを挟んで切れ目なく演奏される。第1楽章はハープが、第2楽章はピアノがクラリネットに絡んでいく。もともとベニー・グッドマンの依頼で書かれたものらしい。20世紀半ばの作品だが前衛的過ぎず聴きやすい。ジャズテイストにあふれた小粋な曲。
ストルツマンは、硬く乾いた音でクラリネットの柔らかさはあまり感じないが、どこか懐かしさを覚える。自在な表現力で、カデンツァなどはとても御年80歳とは思えない。演奏中は椅子に座って吹いたが、カーテンコールでは小走りで舞台に出入りする。お茶目で若々しい。
この演奏会の副題が「チック・コリア トリビュートVol.1 ジャズとスペインを巡る音の饗宴」という。昨年亡くなったチック・コリアの「スペイン」がジャズ六重奏とオーケストラのためのバージョンで演奏されるからだ。今回はさらにマリンバ奏者であるリチャード・ストルツマンの奥様(日本人のミカさん)が加わって、七重奏とオケとの協演である。
「スペイン」は10分足らずの曲だと思っていたら大違い。30分近くかかった。ジャズはよく分からないけど、アドリブと揺らぎ、楽器同士の掛け合いなど自然身体がスウィングしてくる。しかし、これに合わせるオケは大変だ。ジャズ奏者ではベースの井上さんとドラムの高橋さんがオケとの架け橋となっていたようだが、苦労したのは指揮の藤岡さんだろう。プレトークでも凄く緊張している、と言っていた。聴いている側はスリル満点、手に汗握った。
後半は「スペイン奇想曲」でスタート。リムスキー=コルサコフは北国の人なのに「スペイン奇想曲」とか「シェヘラザード」とか南の異国の音楽をそれらしく書いてしまう。管弦楽法の先生でもあったから、たしか、レスピーギも彼に学んでいる。
「スペイン奇想曲」は、オケコンのようなものだから各奏者の妙技がつぎつぎと繰り出され、それを聴いて見ているだけで楽しい。音楽もキレキレで乗りがいい。
「ローマの松」は、昨年のバッティストーニ×東フィルでも聴いたが、勝負は藤岡×シティフィルのほうに軍配をあげたい。
最初の「ボルゲーゼ荘」の出だしで一瞬音がバラけたように感じたが、賑やかな雰囲気はよく表現されていた。一転「カタコンべ」の沈鬱な暗い響きが印象的。舞台裏のトランペットは阿部一樹だと思うが好演。「ジャニコロ」の静謐な音楽。須東裕基のクラリネットが美しさに輪をかけた。ナイチンゲールの鳴き声は録音ではなく水笛だったかも知れないが、緊張感を高め、クライマックスの「アッピア街道」へ。舞台裏の阿部さんもオルガン横のバンダにいたのではなかったか。フルートの竹山愛、イングリッシュホルンの高橋舞など木管群も絶好調。そして、何より藤岡さんの全体設計が見事。テンポ設定、音響効果のみに頼らない明確なフレージングとアーティキュレーションが名演を生んだ。
客席はやはり6割くらいの入りで、この前の都響と同じ程度。
前半のジャズがらみの選曲は好き嫌いが別れるものの、「ローマの松」を聴き逃したとするなら、ちょっと悔しい思いがする、かな。