『イエスタデイ』と『はじまりのうた』2021年02月06日 08:03



『イエスタデイ』
原題:YESTERDAY
公開:2019年
監督:ダニー・ボイル
脚本:リチャード・カーティス
出演:ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、エド・シーラン

『はじまりのうた』
原題:Begin Again
公開:2015年
監督:ジョン・カーニー
脚本:ジョン・カーニー
出演:マーク・ラファロ、キーラ・ナイトレイ、アダム・レヴィーン


 二つの音楽映画。
 突然、主人公以外に誰もザ・ビートルズを知らない世界になってしまったら、というパラレルワールドにおける顛末を描いた『イエスタデイ』。
 中年の落ちぶれた音楽プロデューサーが、名もなきシンガーソングライターを売り込むため、街中でライブレコーディングを敢行する『はじまりのうた』。
 どちらもビジネス重視の音楽業界との対決、というか決別が基底にあるものの、音楽を通しての友情や愛情がじわりと溢れ出てくる作品。商業主義にまみれた音楽業界の面々が敵役ではあっても、かれらはカリカチュアライズされ、ドラマにおけるスパイス。登場人物の多くは皆善い人たちばかり、気のいい連中ばかりでほっこりする。

 『イエスタデイ』は、ザ・ビートルズの名曲とともに『ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!』のシーンや、『レット・イット・ビー』の屋上でのパフォーマンスなど、よく知っている人であれば、ザ・ビートルズに関する様々なネタが仕込んであって面白いらしい。でも、それを知らなくても奇想天外な設定のもと、ロマンチックコメディとして難なく楽しめる。ジョン・レノンのそっくりさんが出てきたり、歌手エド・シーランが本人役で出演したりと、別の興味も尽きない。エンドロールもお見逃しなく、一段と幸せな気分になれる。監督は『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル、脚本は『ノッティングヒルの恋人』のリチャード・カーティス。

 『はじまりのうた』は、監督・脚本が『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー。アイルランドはダブリンの街を背景に、売れないシンガーソングライターと移民女性の悲恋を描いた映画も素晴らしかったが、今回は舞台がニューヨーク。ニューヨークの路地裏や地下鉄のホーム、ビルの屋上、公園などを、ライブレコーディングの場とするためにミュージシャンたちが駆け抜ける。このニューヨークの映像がとても素敵だ。音楽プロデューサーである主人公の娘がギターを引っ提げ、レコーディングに加わることをキッカケにして、父と子の関係を修復して行くシーンや、中年男とヒロインがお互いのプレイリストを二股イヤホンで聴きながら、夜の街をさ迷い歩くシーンなど、名場面もたくさん。

 『イエスタデイ』では、冴えない主人公(ジャック)と、ヒロイン(エリー)の恋は成就し、『はじまりのうた』では、そもそも失恋したヒロイン(グレタ)と、草臥れた中年男(ダン)とは、それ以上の関係になりようがない。しかし、どちらも音楽によって、音楽があってこそ、それぞれが人生の新しい一歩を踏み出して行く。
 善良そうで内気なジャック役のヒメーシュ・パテル、落ちぶれても音楽への情熱を失わないダン役のマーク・ラファロの好演はいうまでもなく、両作品のヒロイン、リリー・ジェームズ(エリー)と、キーラ・ナイトレイ(グレタ)が、何ともいえず可愛くて、映画の魅力を倍加させている。
 リリー・ジェームズは『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でチャーチルの秘書を、キーラ・ナイトレイはお馴染み『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでエリザベス・スワン役を演じていた。

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