世界で一番美しい少年2022年02月03日 16:20



『世界で一番美しい少年』
原題:Varldens vackraste pojke
製作:2021年 スウェーデン
監督:クリスティーナ・リンドストロム
   クリスティアン・ペトリ
出演:ビョルン・アンドレセン


 昔々、ルキノ・ヴィスコンティの映画をすべて観よう、と思い立って、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『夏の嵐』『山猫』『異邦人』『地獄に堕ちた勇者ども』などのビデオを借りまくった。そのきっかけは『ベニスに死す』だった。その後も『ルートヴィヒ』『家族の肖像』『イノセント』を追いかけた。しかし、目標は成就しなかった。初期の作品の2,3本が見つからないまま、しばらくして熱意が失せた。
 今では『夏の嵐』と『愛の嵐』(監督:リリアーナ・カヴァーニ)の題名がごっちゃになり、『地獄に堕ちた勇者ども』と『愛の嵐』の内容が混濁して、わけが分からくなっている。耄碌だけが原因ではない。題名のほうは一字違い、内容のほうは同じナチス時代、ダーク・ボガードとシャーロット・ランプリングが共通、混乱は致し方ないではないか。
 いずれにせよ当時は、ヴィスコンティの貴族的で耽美的で退廃的な作風に夢中になっていた。

 『ベニスに死す』は、トーマス・マンの同名小説(『ヴェニスに死す』岩波文庫)を映画化したもの。原作の主人公アッシェンバッハは作家であるが、映画では作曲家に変えている。モデルはグスタフ・マーラー、「交響曲第5番」のアダージェットがひっきりなしに流れ、「交響曲第3番」のアルト独唱も使われた。
 ヴィスコンティはオペラ演出家でも有名で、音楽の使い方は心憎いほど。『夏の嵐』ではブルックナーの「交響曲第7番」のアダージョが、「第8番」の第1楽章は『地獄に堕ちた勇者ども』だったか。『ルートヴィヒ』はワーグナーのパトロンであった王の話だから、ワーグナーの音楽は言わずもがな。

 ルキノ・ヴィスコンティは『ベニスに死す』の映画化にあたって、主人公の作曲家アッシェンバッハを虜にし破滅させる少年タジオ役を求め、ヨーロッパ中を探しまわっていた。そして、ヴィスコンティが言う「世界で一番美しい少年」を見つける。それがビョルン・アンドレセンであった。
 映画『世界で一番美しい少年』は、そのビョルンのドキュメンタリーである。
 ミニシアターには、ヴィスコンティもビョルン・アンドレセンも知らないような若い観客が何人かいた。「美しさ」は人を引き寄せる。

 少年タジオ役のオーディションの模様が映し出される。ヴィスコンティは絶対者として君臨している。映画の中のタジオは挑発するような目つきで観る者を狼狽えさせるが、オーディションでの、上半身裸でオドオドした、はにかんだ目のビョルンは痛々しい。
 ビョルンは婚外子だった。母親は彼が幼いころ自死した。父親は不明。母親が誰にも頑なに口を割らなかった。祖母に育てられる。個人撮影用の8㎜と思うが、母親や本人の幼児期の動画などが紹介される、半世紀前の電話での会話録音もある。
 15歳になってタジオ役で一躍世に出る。撮影後、ヴィスコンティはパリのゲイ・コミュニティへ彼を連れていく。少年に対する性的虐待である。祖母はさしずめステージママで、孫を搾取し続ける。ビョルンがヴィスコンティから見放されたあとは、彼を遠く日本で稼がせた。これも一種の虐待だろう。
 来日の際の熱狂的な歓迎フィルムが挿入される。TV出演や明治製菓のチョコレート「エクセル」のCM撮影、歌謡ソングのレコーディングなどに翻弄される。歌は日本語で、きれいな発音である。音楽がずっと好きだったという。耳がいいのだろう。
 その後のビョルンは、子供を授かるものの、幼い長男を亡くしてしまう。自堕落な生活が続き、精神を病む。破滅寸前まで行くが、踏みとどまる。2019年には『ミッドサマー』の老人役となって復活する。『ベニスに死す』の撮影現場と対比するように、『ミッドサマー』の撮影風景も記録されている。
 このドキュメンタリーのため、ビョルンはもう一度日本を訪れる。思い出の土地をめぐる。少年のときの来日は、祖母に強いられエージェントに食い物にされた辛い記憶ばかりであろうが、日本そのものを嫌いになってはいなかったようだ。漫画家・池田理代子や音楽プロデューサー・酒井政利などとの会話も挟まれる。

 「世界で一番美しい少年」という重荷を背負ったまま、年齢を重ねていくのは想像を遥かに越えている。ペトリ監督は「美を求める普遍的な気持ちや憧れを持ってはいても、そこには同時に破壊的な側面があることをつねに意識していなければならない」と語るが、その通りだろう。仮に、芸術のためだけであったとしても、彼を弄んだヴィスコンティは許されるのか。美しく生れて来たが故の不幸、と言うには過酷すぎる。
 エンドロールで、再び日本語で歌う歌謡ソングが流れる。衝撃を確かめるように映画は終わる。
 

 今日は節分。立春の前日、すなわち年越しの日、邪気払いの日でもある。恵方巻を食するは関西の風習だろうが、恵方巻を買ってきた。昨夜の豚汁に合わせれば立派な夕食が整う。ご馳走である。

春分の日 はじめてのLED照明2021年03月20日 19:08



 今まで住処にLED照明が一つもなかった。
 入居時に用意した蛍光灯照明が現役を務めているから。玄関とか風呂の電球は時々切れたものの、電球の値段が比較にならないほど安いので、LED電球を買うほどの勇気が湧かなかった。
 しかし、部屋のシーリングライトがどうにも暗くなってきた。時々チカチカもする。生来の引きこもりは、とうぜん屋内での滞在時間が異常に長い。夜の照明に欠陥があるのは極めてマズイ。そこで、はじめてLEDのシーリングライトを贖うことにした。

 もちろん最安値を探す。ただし、照明は必需品で長時間使うもの。Maid in China(Maid in PRC表示にも気をつける)など海外生産品は除外し、国内物から選ぶことにした。実質6畳間ながら明るいほうが良い。ワンランク大きい8畳用と定めた。
 候補はすぐに絞り込むことができた。ホタルクス(NEC)のLIFELED'S HLDZ08203、適用畳数:~8畳、 定格光束:4299lm、消費電力:35W、機能:防虫、調光(調色なし)。何より日本製の5年保証である。各電気店のネット価格を比較してノジマに決めた。

 見かけは小ぶりでシンプル。取付は極めて簡単、10分程度で完了した。昼光色で調光は100%,70%,50%,30%,10%の多段切り替え、普段は70%で固定する。顔色が少し青味かかるのが難点だが、文字はクッキリ見え、チラツキも全くない。常夜灯も5段階に増減可。リモコンを枕元に設置すると、ドア脇の主スイッチとリモコンとを使い分け、動線を短くすることができる。これでますます引きこもりに拍車がかかるだろう。

 今日は春分の日、昼と夜の長さがほぼ同じになる春のお彼岸。宮城県沖を震源とする震度5強の地震がまた発生、大きな被害がないことを祈りたい。

プリンター2021年01月30日 08:55



 年末の年賀状を刷るという、プリンターにとっては最大の役目を果たしたあと、年明けにまた働いてもらおうとしたら、「インク吸収体が満杯に近づきました」と表示された。何これ!
 調べてみると「インク吸収体」とは、印刷時やクリーニング時に使用したインクカスを吸い取るためプリンター内に用意されているスポンジのようなものらしい。その交換が必要となり、自分で取り替えることはできず、メーカーの修理窓口に依頼しなければならない。このあと「インク吸収体が満杯になりました」となると、プリンターは完全に使えなくなる。
 ようは寿命ということだろう。Canonのip2200という10年以上も前の機種、よくぞ頑張った。部品も多分もう無い。何より本体そのものが最下位機種で安かった、仮に修理できたとしても修理費のほうが高くつく。
 で、急遽、新しいプリンターを探すことにした。買い物は信条として安物買い。安かろう悪かろう、であっても安いものを買う。
 プリンターは、過去EPSONを2、3台使った後、このCanonに替えている。ip2200を気に入っていたから、今回もCanonから選ぶことにした。
 価格.Comで物色する。当初、最下位機種のTS203が5,000円を切っていたので、これに決めかかっていたのだが、納入待ちで即納が難しい。とにかく早く手に入れる必要があったから、いったん最安値から宗旨替えをし、TS3330にランクアップした。これでも6,000円、充分安い。大容量サイズの替えインク代並みだ。
 インク代が高いのはプリンター販売のビジネスモデルだから仕方ない。プリンターは、無いと困るが、有っても使うのは年賀状以外に年数回の手紙くらい、使用頻度は微々たるもの。インク代は必要経費の範囲内と考えるべきだろう。
 購入してから知ったのだが、このTS3330はプリンターであるばかりでなく、コピー機にもスキャナーにもなる。複合機である。スキャンはともかく、コピーはわざわざコンビニまで行っていたことを思えば助かる。
 パソコンやスマホとはwi-fi接続が可能、印刷品質にも印刷速度にも不満はない。印刷音も小さくなった、快適である。
 安価でも時々はいい買い物ができる。