2024/7/15 垣内悠希×Ph・エテルナ コルンゴルトとマーラー「交響曲第6番」2024年07月15日 22:01



フィルハーモニア・エテルナ 第29回 定期演奏会

日時:2024年7月15日(月・祝) 14:00開演
会場:すみだトリフォニーホール
指揮:垣内 悠希
共演:ヴァイオリン/ヴィルフリート・和樹・
          ヘーデンボルク
演目:コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
   マーラー/交響曲第6番イ短調「悲劇的」


 指揮の垣内悠希は10年ほど前に「ブザンソン国際若手指揮者コンクール」で優勝した。ブザンソンの覇者といえば小澤征爾が有名だが、その後も邦人指揮者が度々優勝している。松尾葉子、佐渡裕、沼尻竜典、曽我大介、阪哲朗、下野竜也、山田和樹と続き、垣内悠希のあとが沖澤のどかである。沖澤は小澤から60年後、5年前のこと。時の経つのは早い。
 このなかで未聴は垣内悠希のみ。アマオケではあるがプログラムも重量級、一度聴いてみようと久しぶりに錦糸町まで足を運んだ。
 フィルハーモニア・エテルナは30年ほど前に在京の大学オーケストラの卒業生を中心に結成されたオーケストラだという。

 今日の演目はウィーン繋がり。コルンゴルトはマーラーに才能を見出されウィーンで活躍する。しかし、ナチスのオーストリア併合により、ユダヤ人ゆえにウィーンから追い出され、ハリウッドで映画音楽を手がけつつ生計を得る。戦後完成した「ヴァイオリン協奏曲」はマーラーの未亡人のアルマに献呈された。そして、20世紀初頭のマーラーはウィーン宮廷歌劇場の音楽監督、その時代に書かれた「交響曲第6番」である。
 
 コルンゴルトの「ヴァイオリン協奏曲」の独奏者は、ウィーフィルのヴァイオリニストであるヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク。
 第1楽章の粘るような主題を和樹・ヘーデンボルクは甘く柔らかい音色で奏でる、甘味料が多めのコルンゴルトの旋律にはお似合いである。第2楽章はロマンチックで映画音楽そのもの。第3楽章はいつ聴いても後世のジョン・ウィリアムズを連想する。ここでのオケはアマチュアとは思えないほど、弦はよく歌い管は音を外さない。技量が高く合奏能力も優れている。
 垣内悠希は派手なところが一切ないが、的確な指示を与え手堅い指揮ぶりだった。

 休憩後、マーラーの「交響曲第6番」。
 なんと、ソロを弾き終えたばかりの和樹・ヘーデンボルクがコンマスとして座った。オケとしては未経験の「悲劇的」らしいけど、和樹はウィーンフィルで何度となく弾いているはず。アマオケにとってこんなに心強いことはなかろう。Ph・エテルナの弦は比較的若い人が多いが、和樹はその中あって情熱的にリードをしていた。
 垣内悠希は堅実に音楽をつくりあげていく。第1楽章の付点リズムの行進曲が潮の干満のようなうねりを伴って進む。アルマの主題の歌わせ方が絶妙で心の襞にさざ波が生じる。第2楽章にアンダンテをおいたが、美しい旋律と牧歌的な響きのこの緩徐楽章が今日一番の感動的な音楽だった。第3楽章のスケルツォは大音量が連続し多少単調になった。最終楽章は救いようのない闘争に突入する。徹底的に戦い完膚なきまでに打ち砕かれる様をオケは大奮闘。弦の響きは厚くアンサンブルも素晴らしい。木管はバランスを崩すことなく、金管もアマとしては極めて強靭、最後までヘタれることなく吹ききった。打楽器の獅子奮迅の活躍も賞賛に価する。垣内については総じて好感を持ったけど、意表をつかれる場面が少ない。幾つかの意外性をみせてくれれば音楽はより奥行きが増すのではないか。
 客席はほぼ満席。演奏会終了後、すぐに立ち上がって帰る人はわずかで、あたたかい拍手が最後まで続いていた。