2026/3/26 ヴァンスカ×都響 シベリウスの交響曲「第1番」「第4番」 ― 2026年03月26日 19:47
東京都交響楽団 第1040回定期演奏会Cシリーズ
日時:2026年3月26日(木) 14:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール
指揮:オスモ・ヴァンスカ
演目:シベリウス/交響曲第1番 ホ短調 op.39
シベリウス/交響曲第4番 イ短調 op.63
ヴァンスカ×都響のシベリウスは後期作品をまとめて聴いたことがある。このときは聴き手が極度の体調不良で残念ながら3曲ともほとんど記憶に残っていない。そのあとのヴァンスカ×東響のほうが鮮明に刻印されている。ニールセン「ヘリオス」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」、プロコフィエフ「交響曲第5番」というプログラム、とくにバルナタンがソロを務めた協奏曲は忘れられない。
今回、ヴァンスカが都響と再びシベリウスを披露してくれる。最初にこの演奏会の案内をみたとき、同じ作曲家の一番分かりやすい曲と最も分かりにくい曲を並べたな、という印象だった。体調を整えてリベンジである。東京芸術劇場は平日の昼公演だけど客が良く入っていた。
前半は「第1番」。シベリウスの交響曲といえば「第2番」が有名だが、「第1番」も北欧の自然や民族を描写しているようで、その時代の空気を映し出すような情熱と抒情が好ましい。ヴァンスカは少し痩せたふうに見えたが動きはエネルギッシュ、冷気ただようシベリウスの作品をテンポも快速にスケール大きく豪快に描いた。
第1楽章はティンパニのトレモロのうえをサトーミチヨのクラリネットが序奏を奏でる。ヴァイオリンの清冽な響きと力強い主題、金管の咆哮が続く。ロマンティックで交響詩的な表現がこの時期のシベリウスらしい。第2楽章はハープに導かれ、ヴァイオリンとチェロが悲しげな旋律を歌う。テーマは変奏され、途中、無窮動的なパッセージが挿入される。情感に満ちた美しい音楽である。第3楽章は低弦のピッツィカートに乗り、ティンパニ、ヴァイオリンによる鋭いリズムと素朴な旋律のスケルツォとなる。動機は管楽器へと引き継がれ、中間部では安らぎが訪れる。第4楽章は第1楽章冒頭の序奏の旋律が回帰する。すぐに激しく劇的な展開となり、終盤に向かって雄大なクライマックスを築いたあと、最後はピッツィカートによって消えゆくように終わる。前回の後期作品と比べることは無意味だけど、今日は確かに十分な満足感をもってシベリウスの音楽を聴くことができた。
後半は「第4番」。地味で内省的で非常に晦渋な音楽。
第1楽章は緩徐楽章。コントラバスなどの憂鬱な響きからチェロの伊東裕のソロへ受け渡される。低音域の弦から開始される交響曲はロマン派以降ママあるがこの重苦しさは尋常ではない。細かいモチーフが目立ち、ときどき金管が短く鳴る。旋律の流れは予測できず調性は曖昧で安定しない。恐れや不安のなかを彷徨っているようで、コーダは不気味な余韻を残して終わる。第2楽章の前半はスケルツォ風、後半はオスティナートのように主題が繰り返される。不協和音が頻りに出現し皮肉っぽい。第3楽章は再び緩徐楽章、切れ切れのモチーフが絡み合い、瞑想するような音楽が続き、なかなか主題が形にならない。長い時間をかけて息の長い旋律の全体が現れる。ヴァンスカはこの主題を厳しくも歌のごとく感動的に盛り上げる。ここが今日の演奏会最大のクライマックスだった。第4楽章は無窮動風で一応は活気もあり、鉄琴が鳴って明るく透明感のある響きを聴かせる。が、やがて音楽は陰影を深めてゆき、最後は暗い雰囲気となって突然崩壊するように終結する。
「第4番」は半音階的な進行や不協和音が頻出し協和音との抗争もあって音楽の流れが掴み辛い。弦5部は16型と分厚いが、管の構成はシンプル、打楽器もティンパニとグロッケンシュピールのみ。抑制されたオーケストレーションながら響きは深く独特の余韻や間が緊張を高める。シベリウスの交響曲のなかでは最も先鋭的な作品だろう。ヴァンスカはこの難解な楽曲を丁寧に精密、かつ情熱をもって構築した。コンマスは矢部達哉、横に山本友重が座ったダブルトップ、都響はほぼベストメンバーで臨んだ。
ヴァンスカ×都響の「第4番」は決定版といっていいほどの演奏会となった。明日もサントリーホールで同一プログラムの公演がある。