映画『ゴジラ』と伊福部昭の音楽2021年04月14日 07:41



 迂闊にも伊福部昭が『ゴジラ』の作曲家と知ったのは、映画を観てから随分あとのことだった。映画も1954年の第1作は封切りではなく、のちのTV放映で知ったはずだけど、その前に昭和ゴジラシリーズの幾つかは映画館で観ている。子供時代であったのは間違いないから、両者が結びついたのは何十年も経ってからということになる。
 もちろん映画音楽としての『ゴジラ』の旋律は耳に馴染んでいた。ただ、誰が書いたのか知ろうとしなかっただけだ。その機会がやって来たのは、現在では東京フィルと一緒になってしまった新星日響交響楽団のコンサートを聴いたときだった。

 新星日響を調べてみると、1969年設立、2001年に東京フィル合併とある。活動期間は30年ほど。ヤマカズ(山田一雄)やオンドレイ・レナルトが振っていた。とても元気のいいオーケストラで、ときどき聴きに行っていた。ここで伊福部の『シンフォニア・タプカーラ』がプログラムにのった。
 さらに迂闊なのは、事前にプログラムノートを読まないまま、音楽を聴きはじめたことだ。『シンフォニア・タプカーラ』が終わったとき、懐かしさを感じつつ、どこかで耳にしたと、プログラムノートに目を通して納得した。音楽と映画が結びついた。『ゴジラ』音楽の作者が、その伊福部昭だった。
 不思議なことに、その時の指揮者が思い出せない。『シンフォニア・タプカーラ』の興奮はまざまざと身体が覚えているのに、指揮者は茫漠としている。佐藤功太郎だったような気もするが、別人だったかもしれない。

 ともあれ、それから意識して伊福部音楽を聴くようになった。『日本狂詩曲』『リトミカ・オスティナータ』『ラウダ・コンチェルタータ』など、郷愁とともに血沸き肉躍る曲たち。名作揃いである。ゴジラ音楽を含む『SF交響ファンタジー』も3番まである。これらはプロ、アマ問わずオーケストラのレパートリーとなっているから、時々演奏会でも取り上げられる。
 伊福部の音楽は、高揚するリズム、打楽器の打ち込み、テンポの設定、メロディの歌わせ方など、汐澤安彦の指揮が一等と思うが、山田一雄も芥川也寸志も良かった。
 そういえば汐澤の演奏会で、当の伊福部昭が斜め前の席に座っていたのもいい思い出だ。汐澤安彦も80歳を越えた。この先、彼の伊福部を聴くことはもう難しいかもしれない。

 ところで、日本ではなくハリウッド産の『ゴジラ』映画は、過去3作製作された。監督でいうとローランド・エメリッヒとギャレス・エドワーズとマイケル・ドハティである。 
 3作目、ドハティの『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、映画のクライマックスで伊福部のゴジラ音楽が流れた。そのとき、たしかにワーナー・ブラザーズ映画のなかで、日本のゴジラが一層巨大になって蘇った。
 この5月の中旬には、さらに新作『ゴジラVsコング』(監督アダム・ウィンガード)が本邦公開される。伊福部の音楽は聴けないとしても、また、子供時代に戻ってみようかと思案している。

<付記>
 昨年、最初の緊急事態宣言が明けて、在京の楽団が手探りで演奏会を再開しつつあった9月27日、東京ニューシティ管弦楽団が「第133回定期演奏会」において、『シンフォニア・タプカーラ』を演奏した。指揮は曽我大介。
 公演には行けなかったが、当日のライブ動画がYouTube に掲載されている。この演奏は素晴らしい。画質も音質も良くて楽しめる。

https://www.youtube.com/watch?v=btK9KK6xvqE

 なお、この動画、東京ニューシティ管弦楽団の公式チャンネルのようだから、ここで紹介しても著作権上の問題はないと思う。

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